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大崎教授の海外駐在記「ケニア駐在記(2)」

 「Why don’t you speak Japanese?」で始まる掲示が、10月末のJKUAT (Jomo-Kenyatta University of Agriculture and Technology) 構内に張り出されました。 山形大学サテライト・オフィスが提供する日本語クラスの案内です。月曜から木曜までの毎日、午前と午後の2回、1時間半のクラスを無料で提供します。 希望者は、誰でも何時でも何回でも参加できる、と告示しました。講師はJKUAT客員講師の大崎美貴子氏です。掲示に協力して下さった教務担当者は、 「日本は遠い国だから、学生は関心ないと思う。学生が来なくても気にしないで下さいね。」と、こちらの気を削ぐような事を言いました。結局、集まった学生は41人。内訳は、農学部21人、工学系学部9人、人文科学部7人、理学部4人、男性26人、女性15人でした。

 クラスは1月上旬までの2ヶ月半と断ってあるので、学生たちは少しでも多くクラスに参加したい、と熱心に通ってきます。指定された教室の割り振りがいい加減で、既に別の授業が始まっていたり、クラス半ばで他の授業が始まるからと立ち退きを迫られたりですが、学生達が携帯で連絡し合って、直ぐに空き教室を見つけては、最後までクラスをやり遂げてくれと要求します。開講4日間で多くの学生が「ひらがな」をマスターし、スワヒリ語をひらがなで書いては喜んでいます。例えば「さわさわ」オッケー、オッケー、と。すれ違う時、「こんにちは」「さようなら」という挨拶も受けるようになりました。

 ケニアは相互に言葉の通じない40数部族から構成されています。部族数には諸説あり、研究者によって別部族にしたり同じ部族の別亜族にしたりです。人口が最も多いのはナイロビを中心とした地域に住むキクユ族で国民の22%、有名なマサイ族は5%にしか過ぎません。公用語として、東アフリカ一帯の国々で公用語となっているスワヒリ語と、1964年の独立時までケニアを支配していた英国人の英語が指定されています。一般に家庭内では部族語が話され、部族の異なる人々の間ではスワヒリ語が話されますが、教育は小学校入学以来一貫して英語で行われています。そして、世の中で身を立てようとすると完璧な英語力が求められるので、都会の多くの家庭では、家族間でも英語が使われているそうです。中学以後に実施される外国語教育は、フランス語かドイツ語の選択です。したがって、日本語は学生たちにとっては第5番目の言語で、そのやる気には脱帽です。

 今週は院生に対する2つの講演を依頼されました。一つは私の専門の昆虫進化生態学の話で、私の研究を紹介しました。もう一つは「科学論文の書き方」という講演で、お門違いだと固辞したのですが、農学部の副学部長に「あなたなら出来るはずだ。学生たちに、国際的に通用する科学論文の書き方を教えてくれ」と押し切られ、国際交流促進のためには断りきれませんでした。いずれも2時間の持ち時間でしたが、熱心な質問が続き、時間をオーバーしてしまいました。院生達の前向きな姿勢には感嘆を覚えます。

日本語クラスの画像
日本語クラス

キャンパス風景の画像
キャンパス風景