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大崎教授の海外駐在記「ケニア駐在記(7)」

 1981年に創設されたJKUATは、JICA (Japan International Cooperation Agency: 日本国際協力機構)が、校舎や施設を寄贈し、日本の大学から教員を送り込み、学生を日本へ受け入れて、現在の基礎を造り上げたそうです。したがって、JICAの支援成功のモデル・ケースということになっています。

 さらに2000年には、国連や国連開発計画などが参加する、国際アフリカ会議で、AICADプロジェクト(The African Institute for Capacity Development: アフリカ人造り拠点)が決まり、その支援をJICAが引受けて、本部施設をJKUATの構内の一部を割いて建て、ケニア、タンザニア、ウガンダ3カ国15の国立大学と協力して、アフリカの貧困と闘う人材育成事業を行って来ました。この事業は今年の6月に終わり、日本は撤収しました。

 2009年に、エチオピアのアジスアベバに本拠を置くアフリカ連合が、汎アフリカ大学機構(Pan African University)の設立を決め、アフリカを東、西、南、北、中央の5つに分けて、既存の大学の中から支部を選び、それぞれに異なる分野の理系の大学院大学を作ることになりました。東アフリカ地域の支援は日本が引受け、JKUATを支部としてInstitute of Basic Sciences, Technology and Innovationを設立し、教授交換、出張講義、交換留学、などの教育面の支援を行う計画です。その根底には、JKUATに日本との絆を意識しない若い教員が増えて来たので、日本を再認識してもらいたい、という思惑があるそうです。

 しかし、ここに来て中国が強烈に存在感を発揮し始めました。中国はナイロビ大学に2005年に中国語教育機関の孔子学院、今年は地震学研究センターを寄贈しましたが、JKUATに対して、この大学院大学の校舎諸施設や寄宿舎を寄贈したいと申し出たのです。そればかりではなく、JKUATの農学部にも新校舎を寄贈しようと持ちかけました。JKUATは日本大使館やJICAには曖昧に口を濁しつつ、今年の4月にケニア高等教育科学技術省とともに、中国政府の代表団を受け入れて調印式に臨みました。そして9月に東アフリカ地域から、修士80名、博士20名の学生を入学させました。

 中国は1月にナイロビに、中国中央電視台のアフリカ向けハブ放送センターを開設しました。北京以外では初めての放送センターだそうで、画面上にはアフリカ人スタッフだけが映り、アフリカのテレビ局という体裁ですが、番組編成部の中枢は中国人スタッフが占めています。2006年に中国国際放送局ナイロビFM放送局も開設しています。サハラ砂漠以南のアフリカには48カ国がありますが、中国国営新華社通信は、既に20局以上の支局を持っています。日本はというと、朝日新聞と共同通信がナイロビに、読売新聞と毎日新聞が南アフリカのヨハネスブルクに各1人の記者を常駐させているだけだそうです。

 JKUATの教員には、日本留学経験者が少なからずいて、日本との密な交流を望んでいます。ただ、それを可能とする経済的支援が日本からはありません。建物や施設の寄贈は一時的には感謝されますが、持続的関係を結ぶものではありません。その点、人と人の絆は持続的です。山形大学も、共同研究や学生間の密な相互交流を行い、ケニアの人々と持続的な人間関係を築き上げて行きたいです。

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