ホーム > 国際交流・留学 > 海外拠点情報(駐在記) > ナイロビ海外拠点(ケニア) > 大崎教授の海外駐在記「ジョモ・ケニヤッタ農工大学駐在記5(2)」

大崎教授の海外駐在記「ジョモケニヤッタ農工大学駐在記5(2)」

 大学教員の賃上げストは3月12日に終わり、学生が大学に集まり次第授業が始まるそうです。約2ヵ月間のストで、賃上げは19%で妥結したそうです。先生方はにこやかでした。
 数年前から、ケニアのどこに行っても、中国への絶賛を聞かせられます。「この道路は中国が作ってくれた。」「この建物は中国の援助だ。」「この問題は中国が解決してくれるだろう。」今回も、ナイロビ空港で乗ったタクシーのドライバーから、大学までの約1時間、中国賛歌を聞かせられました。「中国のおかげで、強盗団が活動できない安全な空港までの高速道路ができた。」「中国が大学町のJujaを近代的な石造りの街にしてくれている。」
 ジョモケニヤッタ農工大学は、日本国際協力機構(JICA)の全面的支援で作られた国立大学で、建物は勿論、人材も日本の支援で育成されました。しかし、ここ数年、中国の影響が濃厚で、33億円したという中国アフリカ共同研究センターという大きな建物ができていました。分子生物学の分析施設などがあるそうです。農学部にコーディネーターのフンジャ先生を訪ねると、研究室に大きな麻袋が5袋ありました。先生は先年まで山形大学農学部との共同研究で、大学農場でコシヒカリを栽培していました。そこで、「コシヒカリの新米ですか。」と聞くと、「いや、中国米です。」と答えが返ってきました。
 ジョモケニヤッタ農工大学は、敷地面積が約300ヘクタールあります。農場の奥に「中国援助による植物園」という看板が立てられていました。これまでに見た、印象的な植物園は、その国の代表的な植物景観をコンパクトに集めたものでした。そこで、ケニアなら、サバンナ地帯のトウダイグサ科の巨大な植物群や、海岸地帯のバオバブやヤシの木、熱帯降雨林の巨木。そして、熱帯各地から集めた原色の花をつける草木を思い浮かべました。
 植物園の看板の周囲を見回しましたが、乾燥した畑地が続いているだけのように見えました。しかし、遠くに、小さく、中国風の東屋が見えました。東屋に近寄ってみると、近代的な幾何学模様の広場があり、コンクリートで縁取った睡蓮の池がありました。その周囲にはバラの小さな苗木が沢山植えられていました。イングリッシュガーデンが造られていたのです。ケニアには、イギリス植民地時代に造られた素晴らしいイングリッシュガーデンがいくらでもあります。そうなるまでには、かなりの時間がかかりそうでした。
 その日の午後、大学近くのレンガ教授のお宅に招待されました。高い塀に囲まれた敷地約800坪の豪邸です。彼女は農学部長を経て、教育省大学局次長として出向し、2年前にジョモケニヤッタ農工大学に戻って来た土壌学者です。2日前まで、汎アフリカ大学機構の会議でウガンダに出張していたそうです。彼女に植物園を見てきたと言うと、「植物園ができたことは知っている。大学の奥にあって、とても遠いので、見に行ったことがない。私はいろいろな植物が学習できる教育的な植物園を期待していたが、そうではないと聞いている。どうだった。」と尋ねられました。「植物園の完成には時間がかかると思う。」と答えました。
 レンガ教授邸の近くに、Juja City Mallというサムスンの大きな看板広告の目立つ商業施設ができていました。隣接して遊園地があり、遠目に中国延辺大学そばの遊園地とイメージが重なりました。近づくと、遊具類には大きく中国漢字が書かれてありました。

中国アフリカ協働研究センターの画像
中国アフリカ協働研究センター

中国提供学内植物園の画像
中国提供学内植物園