ホーム > 国際交流・留学 > 海外拠点情報(駐在記) > ナイロビ海外拠点(ケニア) > 大崎教授の海外駐在記「ジョモ・ケニヤッタ農工大学駐在記2(1)」

大崎教授の海外駐在記「ナイロビ駐在記(1)」

 2014年1月13日~3月7日までの予定で、ケニアはナイロビにあるジョモ・ケニヤッタ農工大学(Jomo-Kenyatta University of Agriculture and Technology: JKUAT)に駐在しています。ジョモ・ケニヤッタ国際空港に降り立ったのは午前6時過ぎで、黒々としたサバンナの東の地平線に、濃く赤い光が広がっていくところでした。ジョモ・ケニヤッタとは、1964年にケニアがイギリスから独立した際の初代大統領の名前です。現在の第4代大統領はウフル・ケニヤッタといい、初代の息子です。

 JKUATは1981年に創設された国立大学で、学部は、建築工学、機械・製造・メカトロニクス工学、土木・空間情報工学、電気・電子・情報工学、人材育成学、法学、理学、農学、医学、等があります。205ヘクタールもあるキャンパスは、ナイロビ中心地から西に約37キロ離れたJuja地区にあり、東のナイロビ中心地と南の空港の二か所から、果てしなく広がるサバンナを突き切って、中国の建設した片道3車線の高速道路が伸びてきています。

 途中、10数キロ手前に、ケニヤッタ大学という1988年創設の国立大学があります。この大学には、国立7大学唯一の選択科目の日本語の授業があるそうで、2005年より日本人教師が国際交流基金で派遣されているそうです。塀越しに見える大学構内は、中国の有償援助だというモダンで大きな校舎の建設ラッシュ中で、途方もない借金抱えてどうするのだろう、と話題にする人がいました。なお、1970年創設のケニア最初の国立大学、ナイロビ大学には、2005年に中国が、中国語や中国文化を教える孔子学院を寄贈しています。

 ジョモ・ケニヤッタ農工大学、ケニヤッタ大学と、2つの国立大学が、同じケニヤッタ氏の名前を戴いている理由を聞いたところ、この2つの大学はケニヤッタ氏所有の広大な所有地内にあるからだ、と言う話でした。ケニアの権力者の土地は本当に広いです。前大統領のキバキ氏の所有地の片隅には、プライベート飛行場があります。

 ケニアが独立した際に、マウマウ団という武力組織が白人所有の農場を襲い続け、危機感を持った5万5000人の白人入植者は、婦女子を先頭に続々と帰国したそうです。その際に、農場をただ同然で、穏健で友好的だったケニア人に譲ったそうです。富を得た人々は政治権力をも握り、その権力を基盤にさらに広大な土地を獲得していったそうです。割を食ったのは独立運動の主体となったマウマウ団の人々で、今も貧しいと言います。なお、現在のケニア経済を牛耳っているのは、約5万人のインド人で、彼らは億万長者です。

 昼休みの昼食時になると、JKUATの緑のキャンパスの木陰に寝そべっている職員(作業員)を良く見かけます。ある教員が「ケニアはまだ貧しくて、彼らはああやって空腹をしのいでいるのだ」と言っていました。

 JKUATはサバンナの真っただ中にあると言っても、周辺部に広がるような農地を転用して建設されたのではなく、不毛の湿地に建設されたそうです。建設予定地の湿地に深さ1mほどの溝を幾筋も掘って水を落とし、溝以外の場所には盛り土をしたそうです。現在、キャンパスにある樹木は、すべては計画的に植栽されたのだと、造園学・景観生態学の教員が言っていました。キャンパスの裏側の縁辺部から外側は、今でも湿地帯です。

排水のためにキャンパス内に掘られた溝(1)の画像
排水のためにキャンパス内に掘られた溝(1)

排水のためにキャンパス内に掘られた溝(2)の画像
排水のためにキャンパス内に掘られた溝(2)