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大崎教授の海外駐在記「ナイロビ駐在記(4)」

 現在、ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)で、日本が関与している、アフリカ支援の開発プロジェクトは3つあります。日清食品の、現地の素材で現地の人が作る、アフリカ向けインスタントラーメンの開発(Oishiiプロジェクト)。外務省と国際協力機構(JICA)が関わっている、汎アフリカ大学院大学の設立運営。そして、JICAの「ケニア国再生エネルギーによる地方電化推進のための人材育成プロジェクト(Bright Project)」です。

 Bright Project のチーフ・アドバイザーは、JICA専門家の大竹祐二さん。JICA東京国際センター長を最後に勇退され、現場に戻られた山形大学OBです。理学部生物学科を1979年に卒業され、大学院に2期生として進学と同時に休学され、JICA青年海外協力隊員としてアフリカ南東部のマラウイで2年間理数科教師をされました。院復帰後に、スイッチョンと鳴く昆虫ウマオイの、鳴く時間を制御する体内時計の研究をされました。研究生活は忍耐力を養っただけだと謙遜されましたが、言葉の端々に、優れた科学的な物の見方、考え方が窺えました。その後、青年海外協力隊員としてケニアに3年滞在されたそうです。

 その時の仕事の一部が、JKUAT設立支援プロジェクトのために派遣されて来た専門家や青年海外協力隊員に、JICAケニア事務所の調整員として協力することでした。当時、JKUATには学長と百数十人の学生しかいなかったそうです。その中から、日本で博士を取得した学生が現れ、現在、学生数3万人のJKUATの教員を構成しています。大竹さんは、その後、難関の試験を突破されJICAの正規の職員になられ、日本と、タイやインドネシアのJICA事務所を行き来して、2011年の退職とともに、現場に戻って来られたそうです。

 Bright Projectは、JICAと国連工業開発機構とケニア政府の共同プロジェクトで、足利工業大学と大阪市大が協力し、ケニアの未電化世帯に安価でエコな電気を供給しようとしています。現在のケニアの電化率は23%で、地方電化率は10%未満だそうです。これを、2020年までに40%まで引き上げる計画です。プロジェクトの趣旨は、経費の掛かる大型の発電所や大掛りな送電線を引かずに、地方で手に入る、風力、太陽光、バイオマス、水力などの再生可能エネルギーを用いた、安価で小型の自家発電を行なうことです。そのためには、地方電化に関する適正技術の開発活用と維持管理に関する人材の育成が重要です。

 特に力を入れているのは、足利工業大学の牛山泉学長が推進する風力発電だそうで、地方の学校や診療所で風力発電が出来るようになれば、パソコンやインターネットを用いて教材作成が容易になり、診療所では冷蔵庫にワクチンを保存できるようになります。

 途上国の大学は、実学志向が強いのですが、教員は講義や雑用に追われ、学生は実習や研究を通して技術を取得する機会がなかなか得られません。JICAは日本人研究者との共同プロジェクトを通して、JKUATの教員や学生の研究開発能力の向上を図っているそうです。

 大竹祐二さんに、先輩として、山形大学の後輩にエールをお願いしました。「好きなことができる学生時代に、価値観や生活様式の違う世界を経験してもらいたい。そして、人々が何を考えているのか、知る感性を高め、相手に共感できる能力を育てて欲しい。思いやりの心を育てて欲しい。友達を作って欲しい」(2014年2月4日)

山大OB、JICA専門家の大竹祐二さん。JKUAT構内のJICAオフィスでの画像
山大OB、JICA専門家の大竹祐二さん。JKUAT構内のJICAオフィスで

大竹さんを訪問した、矢萩義和さん(工)と小林五月さん(理)の画像
大竹さんを訪問した、矢萩義和さん(工)と小林五月さん(理)