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大崎教授の海外駐在記「ナイロビ駐在記(6)」

 ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)の日本語クラスで最も優秀な学生は、Sada君とSadiq君の2人のナイジェリア人留学生です。彼らはJKUAT構内にある、汎アフリカ大学機構(Pan African University)の修士2年生で、ナイジェリアのAhmadu Bello Universityからやって来ました。二人はアジスアベバに本部を置くアフリカ連合の給費奨学生で、専攻は土木工学です。午後の日本語クラスに、ほぼ毎日やって来ます。

 日本語クラスは、時間の終わりに、2~3人でチームを作り、寸劇をしてもらっていますが、その際に、この二人が張り切って脚本を書きます。毎回、彼らの巧みな言葉遣いに驚かされます。日本語の勉強は、カナダ人やイギリス人の美少女たちが英語の字幕付きで日本語を語るユーチューブを録画し、それを何度も見て学習しているそうです。

 私も、イギリス人の女子学生が話すユーチューブを見てみました。ほぼ完璧な日本語で、独学だそうで、「インターネットを使って、日本人とおしゃべりをして、日本語力をつけた。30年前なら、とても不可能な勉強法ですよね」と言っていました。「自国語以外に2つの言語をしゃべれると、飛躍的に世界が広がりますよ」とも言っていました。

 ケニア人の学生は、学齢期前には部族語で育ち、小学校入学後に、公用語のスワヒリ語を習い、英語で教育を受けます。そして、外国語としてフランス語かドイツ語を履修します。ナイジェリアもケニア同様に英連邦なので、似た状況で、日本語は、彼らにとっては5番目の言語だそうです。日本語クラスで出会う学生は、各国のえり抜きの秀才のようです。

 今週、日本語クラスで、ユーチューブを用いて日本の童謡を紹介しようしたら、ハノイ農業大学のチャム・アインさんが、タイミングよく、スカイプで話しかけてきました。そこで、しばし、ケニアとベトナムの学生が日本語で挨拶を交わし、近況を話し合いました。自国語以外に2つの言語をしゃべれると、確かに世界は広がります。

 Sada君とSadiq君が通う、汎アフリカ大学機構は、アフリカ連合がアフリカ大陸を5つの地区に分けて設立した、理系大学院です。東アフリカ地区は、日本が引き受けてJKUATの構内に作ることになり、土木環境工学、電気、数学、分子生物学、の4専攻が、2012年9月に設立されました。前回、私がJKUATに滞在したときには、日本は教員派遣や留学生受け入れなどのソフト面の支援を予定しており、JKUATは校舎や寮などのハードの支援を求め、日本が躊躇しているうちに中国が支援を申し出た、という局面で帰国しました。

 今回、来てみると、汎アフリカ大学機構の大きな建物が建設中でした。JKUATの教員に聞くと、中国が建設しており、日本は建物内部の施設面で支援してくれることになった、と言います。しかし、日本の関係者に聞くと、まだ決まっていない、ということでした。

 中国は、JKUAT構内に大きな植物園をも建設中でした。どんな植物園になるのかと、農学部の教員に聞くと、当然、中国式の植物園だろう、と言います。私は、中国式東屋の存在を連想し、当地のサバンナを代表する、巨大なサボテンのようなトウダイグサ科の植物や、手の平状のアカシアの木の疎林を作り、キリンを放した方が良いのでは、と言ってみました。すると、その場合は、ライオンも放さなくてはならないね、と返されました。

ナイジェリア留学生のSadiq君(左)とSada君(右)の画像
ナイジェリア留学生のSadiq君(左)とSada君(右)

中国が建設中の汎アフリカ大学機構の校舎の画像
中国が建設中の汎アフリカ大学機構の校舎