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ラトビア大学駐在記6(4)

  ラトビアでの宿泊先のカウンターに「システム障害のため,しばらくクレジットカードは使えません」との表示.なかなか解決しません.クレジットカードで宿代を支払うつもりでいた私は,必要な現地通貨ユーロを円で買う必要に迫られました.

  しかし,当初は全く慌てませんでした.以前駐在していたアメリカと韓国に加え,これまで訪れたほとんどの外国においては,有利な為替レートで現地通貨を買える両替所を容易に探せていたからです.ここで「有利」というのは,「日本の空港内両替所や銀行よりはよいレートで取り引きできる」という意味です.

  ところが,ここリーガでは,なかなかよい両替所や銀行が見つかりません.日本を発つ時点で,日本の銀行窓口で1ユーロを130円台前半で買えていたところ,世界遺産でもある観光地,首都リーガ旧市街の両替所は,いずれも160円(以下,等しく1ユーロ当たりの円価格)から180円台のとても不利なレートを表示しています.窓口の人と交渉はできますが,相手も手強く,自分がよく使う「帰るふり」の手を使っても,カウンターの向こうでニコっとされるだけで,レートを一定以上の割引に持ち込むには骨が折れます.このままでは滞在中の学生達も辛かろうと,少し調査してみることにしました.

  まず,リーガ国際空港内の両替所は154円と観光地の両替所より有利とは言え,まだ日本国内より高い水準でした.そこで銀行に向かいました.そして,リーガ市街中心部にある銀行でも,規模により外国通貨を扱わない銀行もあることに気づきました.また,円を取り扱う銀行であっても,レートはそこそこながら両替手数料(両替1回当たり6ユーロ)を取ることが分かりました.こちらが顔をしかめると,嫌ならば近くの両替所に行けばいいと,その場所を教えてくる始末です.

  これは本腰でかからねばと,滞在中,旅行者の動線となりそうな場所を歩くときは,虱つぶしに両替所を覗いてみるようにしました.そして,ようやく鉄道のリーガ駅構内において,日本の銀行よりやや有利な131円(2018年9月初旬現在)で扱っている両替所を発見しました.一般に外国の鉄道運賃はとてもリーズナブルですから,それを移動手段に使う人間の動線上では,大きな利幅をねらう取引など成立し得ないのかもしれません.自分にとっても新しい発見でした.

  このとき,よい両替所を探せたことは良しとしながらも,リーガは不思議な街だと感じました.先の旧市街と鉄道駅は,歩いて15分もかからない距離です.そこで旧市街の両替所の商売が成り立つのはどういうことなのでしょうか.理由として,①旧市街を訪れる観光客の動線と鉄道を利用する旅行者の動線が交わりにくいこと,②リーガを訪れる観光客間において情報交換がなされにくい理由があること,③何らかの制度的な特徴が存在すること,などが考えられます.

  銀行の対応については,山大日本語クラス受講生のラトビア人に「共産主義の大国から占領された時代の影響か」と質問してみたところ,「そうかもしれない」と応えました.

  最後に,他の通貨との比較です.旧市街と鉄道駅構内のそれぞれの両替所において,1ユーロをいくらで買えるかを,米ドルと円について比べてみました.2018年9月15日現在,旧市街(1.3106ドル,183.96円),鉄道駅(1.186ドル,133.24円)で差(0.1246ドル,50.72円)となります.この差の鉄道駅レートに占める割合は(米ドル:10.5%,円:38.1%)です.旧市街を「円」を持って訪れる観光客は,提示レートのままでは「よいお客さん」になるようです.

リーガ旧市街各所にある両替所の一つの画像
リーガ旧市街各所にある両替所の一つ

鉄道のリーガ駅の画像
鉄道のリーガ駅