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大崎教授の海外駐在記「ラトビア大学駐在記(7)」

 日本語クラスで「手巻き寿司パーティー」をしました。各国で開く日本語クラスの大パーティーは、いつも私費で行っています。会場はラトビア大学本館ビルの屋上に増築された、コンピューター学部の院生部屋でした。日本語クラスに参加している同学部のアレキサンドラ先生が手配して下さいました。本館ビルはレンガ造りの古い建物で、天井が非常に高いのですが、屋上の院生部屋は天井が低く、天窓がついていました。

 ラトビア大学各学部周辺の建物の特徴は、ユーゲント・シュティールという建築が多い事です。19世紀末から20世紀初頭にドイツを中心に流行った建築様式で、外壁に動植物や女性のシルエットを装飾として、過剰なほど多くあしらっています。ラトビア大学の外壁にもその影響が及んでいるのですが、増築された院生部屋では内壁に、その装飾が残っていました。院生部屋は研究室以外に、しゃれた喫茶店のような台所付きのセミナー室と談話室がありました。「手巻き寿司パーティー」のために、その2室を借りました。部屋の増築までに7件のデザインが提案されて、拒否され、8件目で決まったそうです。

 寿司の具材は、本館から徒歩10分程のショッピング・センターで揃えました。数ある大型ショッピング・センターの中で、観光ガイド・マップに特筆してあるショッピング・センターは8か所で、買出しに行ったのは、その1つのスウェーデン資本のストックマンと言う、輸入品が豊富に揃っている店でした。2人の学生が同行しました。

 オリエンタル食品コーナーには、海苔、醤油、ワサビ、寿司酢、巻き簾、割り箸、が置いてあり、寿司用の短粒のヤポニカ米もありました。多くはイタリア米で、買ったのは、少し高いのですが、味が日本米に近いカリフォルニア米でした。山形米の進出を期待したいです。鮮魚コーナーにはマグロとサケの新鮮な切り身、イクラとエビもありました。日本語クラスにほぼ皆勤の、ウェブ・デザイナーであるソルビータ先生が、日本製の炊飯器を持って来ました。短期で2度日本に滞在されたそうです。

 パーティーの後半、ユーチューブでラトビアの民族舞踊が流されました。「長い植民地時代に民族服を着て民族舞踊を踊るのが、ラトビア人が民族のアイデンティティーを確認できる唯一の手段だった」とロシア系のアレクサンドラ先生が言うと、「民族舞踊曲を聞くと誰もが涙ぐむ」と、ラトビア系の人文学部1年のヤーニス君がしんみりと応じました。

 ラトビアの民族構成は、約62%がラトビア人で27%がロシア人です。しかし、リーガ市に限ると、双方の人口比はほぼ等しくなるそうです。オフィスを共用している生物学部のニルス学部長に、大学内での両者の比率を聞いたことがあります。「知らない。考えたこともない」と言われました。学生に聞くと「普段意識しない問題だ」と言うことでした。

 民族舞踊を見ていると、1人の学生が興奮気味にラトビアの歴史を話し出し、ジャーナリスト志望のイーネセさんが宥めるように「過去ではなく未来を話そうよ」と言いました。ヤーニス君が「今までのラトビアには良いことは何もなかった。これからあるのだろうか」と言うと、皆が黙り込みました。妻が「きっと良いことが一杯あると思うよ」と言うと、ヤーニス君が「そうだと良いけどな」と小さく呟きました。英語での会話です

ラトビア大学コンピューター学部院生セミナー室での「日本語クラス」の調理風景の画像
ラトビア大学コンピューター学部院生セミナー室での「日本語クラス」の調理風景

同院生談話室での日本語クラスの「手巻き寿司パーティー」背後の壁に旧外壁の装飾があるの画像
同院生談話室での日本語クラスの「手巻き寿司パーティー」背後の壁に旧外壁の装飾がある