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大崎教授の海外駐在記「ラトビア大学駐在記2(3)」

 9月21日、日曜日の夜、ラトビア国立オペラ劇場に行きました。オペラ劇場は、日本語クラスを開いているラトビア大学経済学部の横に、電車通りを挟んで隣接し、ラトビア大学本部とは、木立に囲まれた運河に掛かる橋を挟んで向かい合っています。経済学部と大学本部とオペラ劇場の位置関係は、直角二等辺三角形の頂点に、オペラ劇場が位置します。なお、三角形の斜辺には、これも演奏会場を持つ、ラトビア国立音楽アカデミーがあります。

 オペラ劇場は1863年竣工の観客収容数約1000人、4層の観客席がある建物です。1階入り口の左右には、各層に直接通じる階段があり、階段を上りきると、各層左右にクロークがあり、中央にはバー兼カフェがあります。地下には広いレストランもあります。

 オペラ劇場のこの日の演目は、バレエ「ジゼル」で、最上層の4層に行くと、日本語チューターである3人の山形大学の学生が来ていました。一人の学生は、翌日が帰国日で、これが生涯2度目のバレエ観賞だと言っていました。初めてのバレエ観賞は、2週間前のラトビア到着翌日だそうで、同じオペラ劇場で「白鳥の湖」を観たそうです。

 オペラ劇場では、週平均5日ぐらい催し物があって、毎回異なる演目のバレエやオペラが上演されます。すべての演目は、オペラ劇場専属のオーケストラの生演奏付です。勿論、オーケストラだけの演奏会もあります。開演時間は午後7時で、2~3時間続きます。料金は、4層目の観客席ともなると1000円もしないので、私はテレビ代わりによく観に行きます。オペラ劇場の周囲には、各方面行きの路面電車、バス、トロリーバスの停留所が集中してあるので、閉演5分から10分後には、それらの乗り物に乗ることができます。

 「ジゼル」が終わり、3人の山大生は感動の面持ちでした。その中の物静かな中国からの男子留学生は、初めてのバレエ観賞だったそうで、「バレエは言葉よりも優れた表現力がありますね」と話しかけてきました。確かに、恋人の裏切りを知った村娘ジゼルが狂乱状態に陥り、母親の腕の中で息絶える場面では、周囲ですすり泣く声がしていました。

 踊り手の中に、黒髪の東洋人らしき姿が混じっていました。日本語クラスにバイオリンを持ってくる女子高校生の話だと、ユカという有名な日本人ソリストがいる、と言うことでした。インターネットで調べてみると、三宅祐佳ソコロバさんと言い、2007年からオペラ劇場の専属バレリーナになり、「白鳥の湖」では主役のオデッセイも演ずるソリストとありました。2012年には、ラトビアで最も活躍した芸術家に送られるガーゼ賞のソリスト部門の受賞者で「リガと日本の両方の心を持つエキゾチックな花」と形容されていました。

 私はクラシック・バレエが好きで、日本ではラトビアの8~10倍の料金を払って、何度か観に行きましたが、現代バレエは器械体操のようで、関心がありませんでした。しかし、9月28日に観た「アンナ・カレーニナ」で、今までの印象が払拭されました。「アンナ・カレーニナ」は勿論、1873年にトルストイによって書かれた古典ですが、バレエとして登場したのは1972年で、今回上演されたのは2005年振り付けの超現代作品でした。最後の、アンナが鉄道自殺を遂げる場面の、迫りくる汽車を表現したオーケストラの音と渾然一体化した黒衣の男たちの集団舞踏には、思わず固唾を呑みました。

ラトビア国立オペラ劇場の画像
ラトビア国立オペラ劇場

オペラ劇場のオーケストラ・ボックスの画像
オペラ劇場のオーケストラ・ボックス