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大崎教授の海外駐在記「ラトビア大学駐在記2(8)」

 10月下旬に、山形大学国際交流室から、ラトビアに学生を派遣する際の予備知識として、エボラ出血熱に対する情報提供の依頼が来ました。11月に4人の学生が、日本語クラスのチューターとしてラトビアに来ることになっていたのです。考えたこともない話題でしたが、ともかくも、地元紙の英文電子版を調べてみると、小さな記事がありました。ラトビア周辺国を含めて感染疑惑者の入国情報は無く、万一患者が出現したとしても、ラトビアは万全の医療体制を整えてある、という政府の医療関係者の談話が載っていました。

 その情報を山形大学に発信した後、そのことをすっかり忘れていました。11月3日に、一人目のチューターがラトビアにやって来ました。そして、今日、5日が、私の帰国日です。起き抜けに読んだメイルの中に、二人のチューターからラトビア派遣キャンセルの申し出があった、というものがありました。エボラ出血熱の感染を恐れてのことだそうです。

 私は20数年来、犬を飼っています。私が初めて犬を連れて海外に出たのは、今から13年前のケニアでした。当時は厳格な係留観察検疫制度があり、海外から犬が持ち込まれた場合には、入国した国際空港近くの動物検疫所で、日本ならば2週間、欧米では、国により2週間、1か月間、2か月間、と犬を係留して、狂犬病感染の有無を調べていました。

 現在は、多くの国でこの係留観察制度が緩和され、必要な書類が整っているなら、即刻入国できます。日本の場合、入国40日以前に指定された書類を動物検疫所に提出し、入国時の動物検疫には出発国の動物検疫所が、入国前48時間以内(10日以内なら可)に発行した動物輸出許可書を示す必要があります。書類の不備があると、2か月間の係留が行われます。

 係留制度が緩和したのは、犬の個体識別が可能となり、提出書類が持ち込まれた犬のものだと客観視できるようになったからです。個体識別は、直径3㎜長さ13㎜のマイクロチップを犬の頸部背面の皮下5~10㎜に、専用の注射器で埋め込むことで可能になりました。マイクロチップの中には15桁の個体識別番号が記録されたICと、コンデンサー、アンテナの役割をする電磁コイルがあり、これらを生体適応ガラスかポリマーで被ってあります。個体識別番号の読み取りは、手の平サイズのリーダーで行います。リーダーから発信される微弱な電波によりマイクロチップが起動され、リーダーに個体識別番号が表示されます。

 したがって、帰国前48時間以内に、リーダーを持っている現地獣医師に健康診断書を英語で書いてもらい、それをもって現地の動物検疫所に行き、英文で書かれた動物輸出許可書を発行してもらう必要があります(実際は、日本が発行した日本への輸入申請書に必要事項を書いてもらいます)。なお、リーダーを持っている獣医師は、日本でも約30%です。

 獣医師と動物検疫所の所在地調査とその対応は、英語の通用するケニアでは私個人でもできますが、他の国では現地の人に頼らざるを得ません。書類が不備だと、日本で2か月間の係留が待っています。頼られた人は、例外なく、初めての経験で面くらいます。ラトビア大学の場合は、国際交流室が対応してくれて公用車を出してくれました。昨年も一緒に行ってくれたAgneseさんは、動物検疫所を出ると運転手に向かいガッツポーズをし、私に「これはラトビア大学に秋が来たことを告げる新たな風物詩だ。」と言いました。

スゥエーデン兵舎の前でエレクトーンを弾く辻音楽師。の画像
スゥエーデン兵舎の前でエレクトーンを弾く辻音楽師。

リーガ大聖堂の前でチェロを弾く辻音楽師。の画像
リーガ大聖堂の前でチェロを弾く辻音楽師。