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掲載日:2025.12.11
教授 中村 文子(国際関係論)
国際社会には、不本意に自らの身体を拘束され、金銭と引き換えに売り渡され、債務奴隷として売春や過酷な労働を強いられている人々が数十万人、あるいはそれ以上存在します。人間を物品として扱い、その尊厳を根底から奪う重大な人権侵害行為です。
国連を中心に、このような人身売買を禁止する国際的な条約(ルール)が締結され、多くの国で国境管理をはじめとする様々な対策が取られていますが、人身売買は依然として根絶されていません。その理由はどこにあるのか、また、どのようにすればこの問題を解決できるのかを研究しています。問題の背景には貧困や経済格差が深く関わっています。さらに、とくに性的搾取を目的とする人身売買の被害者には女性が多いこと、そして国境を越えて売買されるケースも多いため、外国人が被害に巻き込まれる事例も少なくありません。日本でも、人身売買の被害者が国内外から「調達」され続けています。母親に連れられて日本の「マッサージ店」で性的搾取されていた少女の事例をはじめ、入国管理の目をかいくぐる形で東南アジアなどから流入する被害者も後を絶ちません。また、国内における日本人被害者も増加傾向にあります。
この問題の要因を、権力関係の観点から分析し、それを手がかりに有効な対策を探っています。その際、国家や国際連合等の国際機構だけでなく、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)といった地域機構、NGOも重要な主体として対象に含めています。
近年の国際社会は、人権といった従来の大事な価値観そのものが揺らぎつつあります。そのため、人権条約をはじめとする人権規範をどのように維持し普及していくべきか、その仕組みを考えています。


▲「タイ(バンコク)にある日本査証申請センターでは、日本への渡航者に対し、人身売買被害の未然防止を目的とした注意喚起を行っている。」