○国立大学法人山形大学における障害を理由とする差別の解消の推進に関する規程
平成28年3月22日
(目的)
第1条 この規程は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定)に即して,国立大学法人山形大学(以下「本法人」という。)の職員が適切に対応するために必要な事項を定めることを目的とする。
(1) 障害者 本法人が行う教育研究その他の活動全般において,そこに参加する全ての者のうち,法第2条第1号に規定する身体障害,知的障害,精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等により起因する障害を含む。)(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
法人の役職員,大学の学生・研究員,附属学校の生徒・児童・幼児だけでなく,来客者,附属病院の患者,入学試験の受験生,主催イベント(オープンキャンパス・公開講座・シンポジウム等)の参加者等を含む。 |
(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。
(3) 職員 本法人において就労する全ての者(常勤,非常勤を問わない。)をいう。
(4) 学生 山形大学において修学する全ての者(留学生,科目等履修生,研究生及び特別聴講学生等を含む。)をいう。
(5) 部局 国立大学法人山形大学及び山形大学基本組織規則に定める法人部局及び法人本部(戦略本部,監査室,企画・戦略室,法務室,機構及び所管する教育研究推進組織を含む。)をいう。
(6) 部局長 前号に定める部局の長(法人本部にあっては総務部長)をいう。
(不当な差別的取扱いの禁止)
第3条 職員は,法第7条第1項の規定のとおり,その事務又は事業を行うに当たり,障害を理由として,障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり,職員は,別紙に定める留意事項に留意するものとする。
(合理的配慮の提供)
第4条 職員は,法第7条第2項の規定のとおり,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。特に,障害のある女性に対しては,障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。また,障害のある性的マイノリティについても同様に留意する。なお,多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から,他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことも有効である。
2 前項の意思の表明は,言語(手話を含む。)のほか,点字,筆談,身振りサイン等による合図など障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段により伝えられること及び障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には,障害者の家族,介助者等のコミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含むことに留意するとともに,意思の表明がない場合であっても,当該障害者がその除去を必要としていることが明白である場合には,当該障害者に対して適切と思われる合理的配慮を提案するよう努めなければならない。
3 教職員は,前二項の合理的配慮の提供を行うに当たり,別紙留意事項に留意するものとする。
(懲戒処分等)
第5条 職員が,障害者に対し不当な差別的取扱いをし,又は過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の不提供をした場合,その態様等によっては,職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合等に該当し,懲戒処分等に付されることがある。
(障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方)
第6条 この規程において,「不当な差別的取扱い」とは,障害者に対して,正当な理由なく,障害を理由として,教育研究その他本法人が行う活動全般について機会の提供を拒否すること,提供に当たって場所・時間帯などを制限すること,又は障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより,障害者の権利利益を侵害することをいう。また,車椅子,補助犬その他の支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも,障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。なお,障害者の事実上の平等を促進し,又は達成するために必要な特別な措置は,不当な差別的取扱いではない。
2 前項の「正当な理由」に相当するか否かについては,個別の事案ごとに,障害者,第三者の権利利益及び教育研究その他本法人が行う業務の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み,具体的な状況等に応じて総合的・客観的に判断する。なお,教職員は,正当な理由があると判断した場合には,障害者にその理由を丁寧に説明し,理解を得るよう努めなければならない。その際,教職員と障害者の双方が,お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。
3 この規程において,「合理的配慮」とは,障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過重な負担に当たらないものをいう。
(1) 教育研究その他本法人が行う活動への影響の程度(その目的・内容・機能を損うか否か)
(2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約,人的・体制上の制約)
(3) 費用・負担の程度
(4) 本法人の規模,財政・財務状況
(障害者差別解消の推進体制)
第7条 本法人における障害を理由とする差別の解消(以下「障害者差別解消」という。)の推進体制は,次のとおりとする。
(1) 最高管理責任者 学長をもって充て,障害者差別解消の推進及びそのための環境整備等に関し,本法人全体を統括し,総括監督責任者及び監督責任者が適切に障害者差別解消を推進することができるようリーダーシップを発揮するとともに,最終責任を負うものとする。
(2) 総括監督責任者 人事・労務関係業務を担当する理事又は副学長をもって充て,最高管理責任者を補佐するとともに,職員に対する研修・啓発の実施等,本法人全体における障害者差別解消の推進に関し必要な措置を講じるものとする。
(3) 監督責任者 部局長をもって充て,当該部局における障害者差別解消の推進に関し責任を負うとともに,当該部局における監督者を指定し,当該部局における障害者差別解消の推進に必要な措置を講じるものとする。
(4) 監督副責任者 学部,事務部等の組織単位別に監督責任者の指定する者をもって充て,監督責任者を補佐するとともに,監督責任者の委任を受け,当該組織単位における障害者差別解消の推進に必要な措置を講じるものとする。ただし,監督副責任者の設置は,監督責任者が必要と認めた場合に限る。
(5) 監督者 学部の学科,事務部の課等の組織単位別に監督責任者又は監督副責任者の指定する者をもって充て,監督責任者及び監督副責任者を補佐するとともに,次条に規定する責務を果たすものとする。
2 最高管理責任者は,障害者差別解消の推進に関する重要事項を決定しようとするときは,障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じるとともに,役員会の議を経るものとする。
障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催,障害者等からのヒアリングなどが考えられる。 |
(1) 日常の業務を通じた指導等により,障害者差別解消に関し,監督する職員の注意を喚起し,障害者差別解消に関する認識を深めさせること。
(2) 障害者から不当な差別的取扱い,合理的配慮の不提供に対する相談,苦情の申出等があった場合は,迅速に状況を確認すること。
(3) 相談,苦情の申出等を行った者が学生である場合は,山形大学障がい学生支援センターに助言を求めるとともに,必要に応じて情報を共有し,連携を図ること。
(4) 合理的配慮の必要性が確認された場合,監督する職員に対して,合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。
2 監督者は,障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には,監督責任者又は監督副責任者に報告するとともに,その指示に従い,迅速かつ適切に対処しなければならない。
(相談体制の整備)
第9条 本法人に,障害者及びその家族その他の関係者(以下「相談者」という。)からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応じるため,相談窓口を置く。
2 前項の相談窓口は,法人本部にあっては総務部人事課とし,法人部局にあっては各部局長が定めるところによる。
3 相談等を受ける場合は,性別,年齢,状態等に配慮するとともに,対面のほか,電話,ファックス,電子メールに加え,障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要となる多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。
4 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は,相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り,以後の相談等において活用するものとする。
5 第1項の相談窓口は,必要に応じ,充実を図るよう努めるものとする。
(紛争解決体制の整備)
第10条 前条の相談窓口に寄せられた相談等のうち,迅速な対応が必要と相談窓口担当者が判断したときは,直ちに監督責任者に報告しなければならない。
2 監督責任者は,前項の報告を受けたときは,監督副責任者,監督者又は関係者以外の職員に命じて,事実確認を行うものとする。
3 監督責任者は,前項の事実確認の結果,障害を理由とする差別に関する事案が生じたと認めるときは,速やかに是正措置及び再発防止策等を検討の上,実施するものとする。
4 監督責任者は,前項に規定する是正措置及び再発防止策等を検討しようとするときは,必要に応じ委員会を設置し,諮問することができる。また,相談者が学生である場合は,山形大学障がい学生支援センターに助言を求めることができる。
5 監督責任者は,事案の内容等に応じて,総括監督責任者に速やかに報告するものとする。
(研修・啓発)
第11条 本法人は,障害者差別解消の推進を図るため,職員に対し,次の各号に掲げる研修・啓発を行うものとする。
(1) 新たに職員となった者に対して,障害を理由とする差別に関する基本的な事項について理解させるための研修
(2) 新たに監督者となった職員に対して,障害者差別解消等に関し求められる責務・役割について理解させるための研修
(3) 職員に対し,障害特性を理解させるとともに,障害者に適切に対応するために必要なマニュアル等による意識の啓発
(その他)
第12条 この規程に定めるもののほか,障害者差別解消の推進に関し必要な事項は,別に定める。
附則
この規程は,平成28年4月1日から施行する。
附則(令和3年3月18日)
この規程は,令和3年4月1日から施行する。
附則(令和4年3月16日)
この規程は,令和4年4月1日から施行する。
附則(令和6年4月18日)
この規程は,令和6年4月18日から施行し,令和6年4月1日から適用する。
附則(令和6年6月28日)
この規程は,令和6年6月28日から施行し,令和6年4月1日から適用する。
別紙(第3条関係)
国立大学法人山形大学における障害を理由とする差別の解消の推進に関する規程(以下「規程」という。)第3条及び第4条に定める留意事項は,以下のとおりとする。
第1 不当な差別的取扱いに関する例(第3条関係)
なお,ここに記載する内容はあくまでも例示であり,これらの例だけに限られるものではないこと,正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても,合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意すること。
(正当な理由がなく,不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例)
(以下,例示)
○ 障害があることを理由に受験を拒否すること。
○ 障害があることを理由に入学を拒否すること。
○ 障害があることを理由に授業受講を拒否すること。
○ 障害があることを理由に研究指導を拒否すること。
○ 障害があることを理由に実習,研修,フィールドワーク等への参加を拒否すること。
○ 障害があることを理由に事務窓口等での対応順序を劣後させること。
○ 障害があることを理由に式典,行事,説明会,シンポジウムへの出席を拒否すること。
○ 障害があることを理由に学生寮への入居を拒否すること。
○ 障害があることを理由に施設等の利用やサービスの提供を拒否すること。
○ 手話通訳,ノートテイク,パソコンノートテイクなどの情報保障手段を用意できないからという理由で,障害のある学生の授業受講や研修,講習,実習等への参加を拒否すること。
○ 障害の種類や程度,サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく,一律にあるいは漠然とした安全上の問題を理由に学内の施設利用を拒否又は制限すること。
(正当な理由があるため,不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例)
○ 実習において,アレルゲンとなる材料を使用するなど,実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害者に対し,アレルゲンとならない材料に代替し,別の部屋で実習を設定すること。
第2 合理的配慮に関する例(第4条関係)
なお,これらの例は,あくまでも例示であり,ここに記載する例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意すること,また,個別の事案ごとに判断する必要があることに留意すること。
(合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の例)
(以下,例示)
○ 車椅子利用者のためにキャスター上げ等の補助をし,又は段差に携帯スロープを渡すこと。
○ 図書館やコンピュータ室,実験・実習室等の施設・設備を,他の学生等と同様に利用できるように改善すること。
○ 移動に困難のある学生のために,普段よく利用する教室に近い位置に駐車場を確保すること。
○ 配架棚の高い所に置かれた図書やパンフレット等を取って渡したり,図書やパンフレット等の位置を分かりやすく伝えたりすること。
○ 障害特性により,授業中,頻回に離席の必要がある学生について,座席位置を出入口の付近に確保すること。
○ 移動に困難のある学生が参加している授業で,使用する教室をアクセスしやすい場所に変更すること。
○ 易疲労状態の障害者からの別室での休憩の申出に対し,休憩室の確保に努めるとともに,休憩室の確保が困難な場合,学生等の要望に応じて,対応可能な代替案を講じること。
○ 視覚障害者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に,求めに応じてトイレの個室を案内すること,その際,同性の教職員がいる場合は,障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内すること。
(合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の例)
(以下,例示)
○ 授業や実習,研修,行事等のさまざまな機会において,学生等の要望に応じて手話通訳,ノートテイク,パソコンノートテイク,補聴システムなどの情報保障を行うこと。
○ ことばの聞き取りや理解・発声・発語等に困難を示す学生のために,必要なコミュニケーション上の配慮を行うこと。
○ シラバスや教科書・教材等の印刷物にアクセスできるよう,学生の要望に応じて電子ファイルや点字・拡大資料等を提供すること。
○ 聞き取りに困難のある学生が受講している授業で,ビデオ教材の視聴覚教材に字幕を付与して用いること。
○ 授業中教員が使用する資料を事前に提供し,事前に一読したり,読みやすい形式に変換したりする時間を与えること。
○ 事務手続の際に,教職員や支援学生が必要書類の代筆を行うこと。
○ 障害のある学生で,視覚情報が優位な者に対し,授業内での指示や事務的な手続き・申請の手順を文字やイラスト等で視覚的に明示し,わかりやすく伝えること。
○ 間接的・抽象的な表現が伝わりにくい場合,より直接的・論理的な表現を使って説明すること。
○ 授業中のディスカッションに参加しにくい場合,発言しやすいような配慮をしたり,テキストベースでの意見表明を認めたりすること。
○ 入学試験や定期試験において,点字や拡大文字等による情報保障を行うこと。
○ 入学試験や定期試験において,注意事項や指示を,口頭で伝えるだけでなく文書や黒板に書いて示すなど,視覚的情報として伝達すること。
(ルール・慣行の柔軟な変更の例)
(以下,例示)
○ 入学試験や定期試験において,個々の学生の障害特性に応じて,試験時間を延長したり,別室受験や支援機器の利用,点字や拡大文字の使用,休憩時間の調整等を認めたりすること。
○ 成績評価において,本来の教育目標と照らし合わせ,公平性を損なわない範囲で柔軟な評価方法を検討すること。
○ 外部の人々の立入りを禁止している施設等において,介助者等の立入りを認めること。
○ 大学行事や講演,講習,研修等において,適宜休憩を取ることを認めたり,休憩時間を延長したりすること。
○ 移動に困難のある学生に配慮し,車両乗降場所を教室の出入り口に近い場所へ変更すること。
○ 教育実習等の学外実習において,合理的配慮の提供が可能な機関での実習を認めること。
○ 教育実習,病棟実習等の実習授業において,事前に実習施設の見学を行うことや,通常よりも詳しいマニュアルを提供すること。
○ 外国語のリスニングが難しい学生について,リスニングが必須となる授業を他の形態の授業に代替すること。
○ 実験・実習等において,障害の特性により指示の伝達や作業の補助等が必要となる場合に,特別にチューターを配置すること。
○ ICレコーダー等を用いた授業の録音を認めること。
○ 授業中,ノートを取ることが難しい学生に,板書を写真撮影することを認めること。
○ 不随意運動等により特定の作業が難しい障害者に対し,教職員や支援学生を配置して作業の補助を行うこと。
○ 感覚過敏がある学生に,サングラス,イヤーマフ,ノイズキャンセリングヘッドフォン等の着用を認めること。
○ 体調が悪くなるなどして,レポート等の提出期限に間に合わない可能性が高いときに,期限の延長を認めること。
○ 教室内で,講師や板書・スクリーン等に近い席を確保すること。
○ 履修登録の際,履修制限のかかる可能性のある選択科目において,機能障害による制約を受けにくい授業を確実に履修できるようにすること。
○ 入学時のガイダンス等が集中する時期に,必要書類やスケジュールの確認などを個別に行うこと。
○ 病気療養等で学習空白が生じる学生等に対して,ICTを活用した学習活動や補講を行う等,学習機会を確保できる方法を工夫すること。
○ 授業出席に介助者が必要な場合には,介助者が授業の受講生でなくとも入室を認めること。
○ 視覚障害や肢体不自由のある学生の求めに応じて,事務窓口での同行の介助者の代筆による手続きを認めること。
また,合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び該当しないと考えられる例としては,次のようなものがある。なお,記載されている内容はあくまでも例示であり,合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては,個別の事案ごとに判断することが必要であることに留意する。
(合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例)
(以下,例示)
○ 入学試験や定期試験等において,筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に,デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に,必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。
○ 自由席で開講している授業において,弱視の学生等からスクリーンや板書等がよく見える席での受講を希望する申出があった場合に,事前の座席確保などの対応を検討せず,一律に「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。
○ 学生等が,支援者と共に更衣室を利用することを希望した場合に,空いている教室など代替施設を検討することなく,設備がないという理由で対応を断ること。
(合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例)
(以下,例示)
○ オンライン授業の配信のみを行っている場合に,オンラインでの集団受講では内容の理解が難しいことを理由に対面での個別指導を求められた際,字幕や音声文字変換システムの利用など代替措置を検討したうえで,対面での個別指導を可能とする人的体制・設備を有していないことを理由に,当該対応を断ること(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点)
○ 図書館等において,混雑時に視覚障害者から職員等に対し,館内を付き添って利用の補助を求められた場合に,混雑時のため付添いはできないが,職員が聞き取った書籍等を準備することができる旨を提案すること(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)
○ 発達障害等の特性のある学生から,得意科目で習得した単位を不得意な科目の単位として認定してほしい(卒業要件を変更して単位認定をしてほしい)と要望された場合,不得意科目における環境調整や受講方法の調整などの支援策を提示しつつ,卒業要件を変更しての単位認定は,自大学におけるディプロマ・ポリシーに照らし,教育の目的・内容・機能の本質的な変更にあたることから,当該対応を断ること(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことの観点)
さらに,環境の整備は,不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものであるが,合理的配慮は,環境の整備を基礎として,その実施に伴う負担が過重でない場合に,特定の障害者に対して個別の状況に応じて講じられる措置である。したがって,各場面における環境の整備の状況により,合理的配慮の内容は異なることとなる。合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例は,次のとおりである。
(合理的配慮の提供と環境の整備の関係に係る例)
(以下,例示)
○ 障害者差別解消の推進を図るための教職員への学内研修を実施(環境の整備)するとともに,教職員が,学生一人一人の障害の状態等に応じた配慮を行うこと(合理的配慮)
○ エレベーターの設置といった学内施設のバリアフリー化を進める(環境の整備)とともに,肢体不自由のある学生等が,実験室等で実験実施の補助を必要とした際に,その補助を行うティーチングアシスタント等を提供すること(合理的配慮)
○ 障害者から申込書類への代筆を求められた場合に円滑に対応できるよう,あらかじめ申込手続における適切な代筆の仕方について研修を行う(環境の整備)とともに,障害者から代筆を求められた場合には,研修内容を踏まえ,本人の意向を確認しながら担当者が代筆すること(合理的配慮)
○ オンラインでの申込手続が必要な場合に,手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから,手続に際しての支援を求める申出があった場合に,求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う(合理的配慮)とともに,以後,障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう,ウェブサイトの改良を行うこと(環境の整備)
○ 講演会等で,情報保障の観点から,手話通訳者を配置したり,スクリーンへ文字情報を提示したりする(環境の整備)とともに,申し出があった際に,手話通訳者や文字情報が見えやすい位置に座席を設定すること(合理的配慮)