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医学部  宍戸 優希

「何もなくて豊かな島」カオハガン島での一週間

 今回カオハガン島へ行き、英語力、コミュニケーション力の向上は勿論だが、それ以上に人間として学ぶこと多かった様に感じる。
 私がカオハガン島に行くことに決めた理由として、英語力の向上は必須事項で
あった。しかしそれに加え、普段と全く異なる環境に行き、様々な出来事、人々に出会うことにより視野や考え方などを広げ、新たな価値観を構築する糧が欲しかったということがある。カオハガン島の生活は日本からは本当にかけ離れている。入浴も雨水をためたシャワーであったし、泊まる所にも電気は通っていなかった。島は、一時間もあれば全体を散策できるような小さな島である。WHOが定める世界最貧国の基準は一日の生活費が一日1$以下であるが、カオハガン島では皆その半分以下で生活する。しかし、そんなことは本当に考えられない程人々の心も生活も豊かで、幸せに溢れている島であった。
 島の周りには美しいサンゴ礁が広がっており、フィリピンでは保護活動が行われている。海の生態系とサンゴ礁の保護活動についての講義も、セブ島のサンカルロス大学で受けた。大学では、学生との交流もあった。講義や交流の中では、専門用語が多く理解が困難であったが、大体の内容でも理解できれば会話はできたし、楽しく過ごすことが出来た。
 実際に沖まで船で出てサンゴ礁の中を泳ぐこともできた。サンゴ礁の中には多種多様な魚が生活しており、その中を泳いでみると不思議な気持ちになった。
 ホームステイ中は、小舟で子供たちに量に連れて行ってもらったり、洗濯なども
行った。
 他にも、カオハガン島で活動を行っている日本人の芸術家の方と小学校に行き、子供たちと授業としてポストカードを作って交流したりもした。島の人がパーティーを開いてくれた。他に時間があれば島の人と会話を楽しんだり、子供たちと浜辺で走り回って遊んだりバスケットボールをして、ゆったりした時間を過ごした。夜も島の人がギターを弾いてくれて、浜辺で日本語の歌や英語の歌、ビサヤ語の歌など様々な歌を歌って過ごした。朝になると島の人たちは一斉に掃除を始める。私たちも一緒に掃除したり、干潮の海に出て貝を拾ったりしていた。何もない島ではあったが、退屈する時間は本当に全くなかった。
 島の人たちは日本人とは異なる点がたくさんあった。まず、島には事件がない。
島で財布を落としても必ず届けてくれる程である。又、島の人々は皆仲がいい。私たちに対してもあちらから積極的に関わってくれた。思いやりの心も素晴らしいものであった。ホームステイ時の食事も子供が取り分けてくれる。自分たちのおかずが少なくなっても本当に優しい笑顔でもてなしてくれた。蚊に刺されているのを見ると ずっと団扇で追い払ってくれていた。他にも何事においても心遣いがとても温かかった。印象的な話の中に高齢者や障碍者への介助実態があった。島には医者がいない。病気になった人は島民が隣のマクタン島へ連れて行ってくれる。高齢者や障害者は医者がいないからといって島を出るわけではない。確かにこの島は自給自足が基本の島で、自力で生活できない人は普通は生きていけない。しかし、自力で出来ないことは周りの人が助けてくれるのだ。島民はそれぞれを尊重し合っており、それを当たり前だと思っている。このことに私は大きな感銘を受けた。日本では身内の障害者や高齢者でさえ、世話を面倒がられる。カオハガンと日本の意識の差に本当に大きな衝撃を受け、感動した。
 一番印象的だったのは島の人の笑顔であった。皆常に笑顔なのである。それも日本で見る笑顔とは違う、心からの本当に輝く笑顔である。本当に皆幸せなのだな、と感じる笑顔であった。なぜ島の人はこんなに幸せなのだろう、と考えると、島の人たちは自分の周囲の事物すべてを愛しているからではないだろうか、 と私は感じた。
 日本にいると、島とは違う経済社会である。自分の周囲でもどうしても嫌なことが沢山ある。幸せをいつも求めてしまう。しかし、この島の人の様にありのままを受け止め愛していけたら、そのように努力出来れば、もっと幸せに生きることが出来るのではないだろうか、と感じた。そして、自分もそうしてゆけたら、と思った。
 今回、島民との日常会話やセブ島での講義、交流からの英語力の向上は勿論感じた。それに加え、英語を話せない年配の島民の方とも一週間共に過ごし、言語以外の点でのコミュニケーション能力も短い期間ながら高まったと感じた。また、普段の生活では知り得ない世界で生活することにより、島の人々に出会ったことにより、ものの見方は本当に大きく変わったように感じる。少人数ながら全国の大学生に出会い、語り合ったことによる世界の広がりもとても意味深いものであった。自分の考え方、将来について、学生生活について、島のことなど様々に語り合い、互いに影響を及ぼし合えたと感じた。これからの学生生活は勿論のこと、自分の人生へも大きな意味を持つ旅であった。