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地域教育文化学部  鈴木  菜央

留学報告

留学先:エストニア・タリン大学
期間:2011年9月〜2012年6月

 エストニアへ留学したことは、23年間生きてきた中で、非常に濃密な時間だったように思います。これまで常識だと思っていたことが覆されてばかりで何度もカルチャーショックを受けました。しかし改めて自分の育ってきた環境を見つめること、また自分の成長を感じ取ることの出来た時でもありました。
 まず、私にとって転機とも言える出来事は、ゼロからロシア語を勉強し始めたということです。タリン大学へ留学すると決めたときは、英語と現地の言葉と文化を学びたいと思い準備をしていました。しかし留学生活が始まりロシア人の親しい友人が出来ました。これがきっかけでロシア人の知り合いも増え、ロシア語への興味がどんどん湧いてきたのです。エストニアの公用語はエストニア語ですが、国民の半数近くはロシア系の人々です。それほど昔でもない約20年前に、エストニアはソ連から独立しました。彼らと交流するようになってから、このような歴史や今の状態をよく理解できるようになりました。実のところ、私のロシア語では未だ日常会話もあまりできません。しかしそれでも、理解できることは最初の頃よりもとても増えたことを実感しています。今まで様々な外国語を勉強しようとしましたが、結局どの言葉もほとんど習得できませんでした。その理由は、モチベーションを保つことが出来なかったからです。ロシア語に関しては、言葉だけをただ学びたいというよりも文化や人も含めて、知りたいという強い意欲があったから、目に見えるほど、実感できるほど学ぶことが出来たのだと思っています。まだ彼らに伝えたいことは山ほどあります。そのため、現在も勉強を継続しているところです。
 数か月も経つと、留学生活に慣れていく一方、それまで見えてこなかった現実が徐々に目の前に現れてきました。例えば、エストニア国内ではロシア人に対する問題が今でも多く残っています。私にはエストニア人とロシア人の友人がいますが、それぞれの話を聞くうちにとても深い溝のようなものが見えるようになりました。簡単に言えば、お互いのことを嫌っているのです。ロシア人との交流がなかった頃は、大学の行事として、いかにもロシア人が敵であるかのように表現されている、エストニアの独立の歴史に関する映画を観たり、エストニア人の友人とばかり会っていたりと、この国の片面しか見えていませんでした。しかしそれから、エストニアに住むロシア人の話を様々な面から沢山聞く機会が出てきました。どちらが善でどちらが悪かどうかは判断できませんし、私はどちらの側でも中立の立場でもありません。ただ、大雑把に言ってしまうと、その国にもその国なりの解決しがたい問題があるということをありありと実感させられました。それはもちろん私たちの国、日本も含めてです。エストニアと言えば旧市街が世界遺産に登録されているほどにきれいな街並み、というイメージはその国の単なる表面でしかなく、観光者の視点だと思います。観光ではなく、留学した事によって、国ひとつとっても、そこに人がいて社会があるということをようやく理解できたように思います。
 この留学生活を通して、日本に居るだけでは確実に知ることの出来なかったことを沢山経験してきました。勉強面では今まで触れたことのなかった領域に興味を持つようになり、また生活面では、良くも悪くも日本とのギャップをあらゆる場面で感じることが出来ました。そして私が知り得た最も確実なことは、上でも述べたように、例え自分がどう感じようともそこにはその場所なりの社会がある、ということでした。
 今後私は日本で卒業論文や就職活動を本格的に再開しますが、その間も、この貴重な時間で得た経験と知識を必ずどこかで活かしていきたいと思います。

地域教育文化学部 鈴木  菜央 地域教育文化学部  鈴木  菜央

地域教育文化学部 鈴木  菜央