わかってください

教育学部 小田 隆治(生物学)

 「RNAのところがさっぱり分かりませんでした」。私の授業のレスポンスカードに書かれた学生の言葉です。200人以上の学生の前で,私はこのカードを読み上げました。学生は,くすくすっと笑いました。決していやな笑いではありません。ですが,「分からない」と書かれたカードは一枚や二枚ではありません。たくさんあるのです。私は研究室でこうしたレスポンスカードの山を前にして思い悩んでいるのです。

 より深い内容を話すために,その前提となる基礎知識に触れざるを得ません。そうした基礎知識なくして内容を理解することはできないからです。私はこうした基礎知識を短時間に猛烈な速度で話したのです。みんな消化不良になるのも無理からぬことと反省しました。でも,授業は15回しかありません。抜本的な解決としては,話す内容を精選しなければなりません。しかし,終わったことは取り返しがつきません。私はどうしても先に急ぎたいのです(なんとわがままなのでしょう)。そこで私は冒頭のカードを読んだ後で,「早く話しすぎて,たくさんの人が授業だけでは理解できなかったようです。分からなかった人はテキストを読んでください。テキストを読んだら分かるはずです。それでも分からない人はカードに書くなり,オフィスアワーに来てください」と述べました。そこには私のささやかな自学自習のすすめも込められています。次回から,「テキストを読んだらよく分かりました」という言葉がたくさんのカードに書かれていました。使用しているテキストは自分で書いたものです。テキストを読ませる,という目的は達成できたようです。こういうカードもありました。「今日の授業もよく理解できませんでしたが,興味を持ったので帰ってからテキストを読みます」。喜んでいいやら悲しんでいいやら。とほほ。とにかく,厳しいことを書かれながらも私はレスポンスカードを書かせているのです。あっ,いまから読まなければ。

 ではこのリレーのバトンは人文学部の元木 幸一さんに渡します。よろしく。

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