自学自習の心得を

工学部 長谷川 政裕 (化学工学)

 大学を卒業してもう30年になる。今と同じように,大学へ入学して最初に受講したのが教養教育科目である。結構な数の講義を受講したはずなのだが,今現在,当時何という講義で何を教わったかなど,覚えているものはほとんどない。唯一記憶にあるのは,自分で毎日辞書を引きながら受けたドイツ語の授業とユニークな話術に富んだ英語の先生の授業は今でもよく覚えている。その他,歴史・経済・文学などをはじめ,数学・化学・物理ですら,教養では何を教わったのか,全く・・ ・・・まるで忘却の彼方である。これはもちろん,当時の先生方の講義内容やその方法に問題があったわけでは決してない(?)と思う。つまりドイツ語や英語以外の講義に対する自分自身の取り組み方,意識の低さに当時は問題があったのである。今になって,専門外の歴史書などを暇をみつけて読んでいる自分を見てそう思う。

 先日,工学部でFD講演会が開催された。その講演の中で,「高等教育の専門家はいない」という話があった。確かに,大学の先生は教育の専門家ではない。教育の専門家でもなく,その専門家もいないとなれば,いったい何を目標に,何を目指して大学の教員は授業改善をすればいいのか,少々悩ましくなってくる。

 「大学は自ら学ぶところ」と高校時代の進路指導の先生をはじめ,大学へ入学してからも先生方からそういう言葉を聞いた。立場が変わって,学生へ講義をすることになった今でも,このことは変わっていないはずである。人から教わることは本来の勉強ではなく,自分で学ぶことが勉強である。このように考えると,教員は学生達に何をすべきかが少しは見えてくるような気がする。すなわち,教員は個性溢れる講義をして,その内容の面白さを学生達にアピールすることに尽きるのではと,自分の学生時代を振り返って思うこの頃である。ただ,その思いと実際はなかなかバランスがとれないところに,もう一つの問題がある。そして,この問題を解決するのは,やはり・・・・・・自学自習でしかないのである。

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