我が振りみて、我が振り直せ!

工学部 中野 政身(機械システム工学)

 授業改善の方法の一つとして、教育の専門研究者を招いた公開授業の参観や他人による授業参観と相互批評などに基づく、いわゆる「人の振りみて、我が振り直せ」の考えに基づいた授業改善の実践が一般的によく行われている。今回は、授業改善の一環として自分が行った、「我が振りみて、我が振り直せ」の考えに基づく実践例を紹介しましょう。

 実に滑らかに滞りなく授業が進んでいる。身振り手振りのジェスチャーも入れながら、話し方も実に流暢である。講義の始めには学習目標を明示し、図や文の板書も見やすい大きさで内容も分かり易く、時々学習の要点を板書してまとめてもいる。講義終了15分程前からは小テストを実施して講義内容に関わる例題の提示とその理解度のチェックも行っている。これは、自分の講義風景を撮影したビデオを観ての第一印象である。JABEE(日本技術者教育認定機講)認定審査受審を前に学科として平成15年度に数名の教員を対象に初めて取り組んだFD活動の一つである。講義をビデオ撮影してもらったのは自分にとって今回が初めてであったので、自分の講義風景を観るのは照れ臭くもあったが、事前の用意周到なはず(?)の講義準備もあってか普段の講義よりかなりスムースに進行しているようにも観えた。これは教員側から観た印象である。自己満足か?

 この講義では、幾つかのテキストから自分なりに内容を構成して講義しているために一冊で参照できるテキストがなくテキストは用いていない。そのため、受講学生は講義と推奨してある参考テキストとから講義内容を理解するということになるため、学生は板書した内容を一生懸命ノートに取っている。ビデオでもその光景は窺がえる。そういえば、自分の講義に対する学生による授業評価アンケートの中に、講義の進み具合が速く板書をノートに取るのが精一杯で講義を集中して聴けないという意見があった。だからといって講義の際に毎回板書内容をプリントにして配布しそれに基づいて講義をしたら、話を聴きながらメモやノートを取るという重要な精神作業の訓練が疎かになってしまう。そこで、これらのことを念頭において改めて講義を受ける学生側の立場に立ってビデオを観てみる。やはり講義がスムースな反面、進行が速すぎてノートを取りながらじっくり講義を聴く時間があまりないようである。猛省! 不足している点を講義に反映させた。具体的には、一方的に講義をするのではなく、学生のノートを取るペースをみて時々間を入れたり、意識的に時々質問を投げかけ問題意識を発揚させるとともに学生の理解度を把握しそれに合わせて講義を進行したりするなど、双方向の授業を心がけるようにした。これに伴い講義の内容も当然絞らざるを得なくなり、講義の要点がより鮮明化されるという相乗効果が得られたように思う。これも自己満足か? いや、確かに手ごたえがある。ノートを取るために黒板に向けられた視線ではなく自分に向けられている視線を強く感じるし、講義時間内での学生とのコミュニケーションが増えている。

 今回の授業風景をビデオに撮り授業改善に結びつける活動から、「我が振りみて、我が振り直せ」という謙虚さと学生側の視点に立った講義のあり方が重要なことを今更ながら思い知らされた。一方、このような講義風景のビデオを学生の学外での学習支援のためにインターネットを介して配信する、いわゆるe-Learningの遠隔教育への活用も、今回のFD活動をしていて効果的であろうと気づかされた。このe-Learningを活用した遠隔教育については、平成15年10月末に参加したアメリカのABET(The Accreditation Board for Engineering and Technology)の年次大会での1テーマとして取り上げられており、遠隔教育用教材の提供、講義ライブビデオの配信、e-mailはもちろんのことチャットなどを利用した遠隔教育の活用によって、大学間コンソーシアムによるDegreeコースや生涯学習コースなどの教育がかなり勢力的に行われ、効果を発揮しているようであった。今回の講義風景のビデオ撮影も授業改善のFD活動に活用するだけでなく、e-Learningを活用した遠隔教育との連携をとることによって、一石二鳥の教育効果が図れるのではないだろうか。

 次は人文学部の石原 敏道さんお願いします。

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