生物学科開講科目「臨海実習 I 」紹介

理学部 半澤 直人(生物学)

 生物学科では、1年次の夏休み中(9月中旬)に必修科目「臨海実習 I 」を開講しています。ここ数年は、東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター複合水域生産システム部(宮城県女川町)の臨海施設を利用し、教員4名が学生とともに4泊5日泊まり込みで実習を指導しています。実習のねらいは、38億年前に生命が誕生した場所とされる海洋で、生きている海洋生物を観察し、直接触れることによって、生命のいとなみの基本的な仕組みを知り、また今後生物学を学んでいくための動機付けとすることです。近年は、生物学科に入学した学生といえども、机上で学んだ生物学の知識はあっても、実際には身近に生物に接した経験がほとんどなく、生命現象の理解が知識とうまく結びついていない学生が見られます。このような学生達の「心の目」を開かせるには、フィールドで実際に生きている海洋生物に触れながら行う実習は大変有効です。

 実習の主な内容は、「キタムラサキウニの発生の観察」、「沿岸岩礁域に生息する底生動物や海藻類の採集、観察、分類・同定」、「海洋プランクトンの採集、観察、分類・同定」などです。実際に東北大の海洋調査船に乗船して海上へ出て、船長の指示に従いながら作業を進めます。危険をともなう作業もあり、ただでさえ危機意識が薄い昨今の学生達を指導する教員にとっては、神経を使い、体力を消耗して大変です。また、体力に自信がなかったり、船に弱い学生にとっても、それなりの覚悟が必要です。実習室内では、生きているキタムラサキウニは待ってくれないので、深夜や早朝まで各ステージの幼生を粘り強く顕微鏡で観察し、形態を詳細にスケッチします。また、図鑑と首っ引きで、どのような生物種が、どこにどれくらい棲んでいたのかを詳細に調べます。いくら生物に多少の興味はあっても、これらの作業は辛抱することに慣れていない学生達にとっては大変ですが、このような苦労は間違いなく良い経験となります。

 実習最終日の前の晩には、外でバーベキユーをして、打ち上げを行います。事前に係を決め、魚市場で新鮮な海の幸を仕入れておき、教員は「にわか板前」となって包丁をふるい、ホタテガイやサンマ、スルメイカの焼き方を担当します。学生達は、始めはほとんど食べるだけで実習の疲れを癒し、教員や他の学生達と交流を深めていますが、何も言わなくても自主的に焼き方を手伝ったり、最後の片付けをするようになります。また、1年生にとっては、それまで同じクラスでまとまって何かをする機会がないため、はじめてクラス全員で合宿して実習を受けることは、お互いを知る良い機会となるそうです。このような気力、体力の限界に挑戦する実習を通して、学生達は生物学への興味を増し、日焼けして、少しだけ精神的にたくましくなって帰っていきます。

 次は教育学部の那須 稔雄さんお願いします。

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