2003年度FD合宿の成果
―「為せば成る21世紀の大問題」がスタート―

教育学部 那須 稔雄(金属加工学)

 私は、昨年8月5日から6日にかけて蔵王山寮で行なわれた教育方法等改善委員会主催のFD合宿に参加しました。同じ班で一緒に授業を構想した野堀先生とともに、そのFD合宿で得られた成果をそのまま、今年度の教養教育の授業で実践しています。そのいきさつを紹介します。

 FD合宿で、私が所属した班のメンバーは、佐藤清人(人文学部)、川前金幸(医学部)、横山道央(工学部)、井坂秀治(工学部)、野堀嘉裕(農学部)の各先生、と筆者、合計6名でした。班に与えられたテーマは「21世紀の諸課題に対応する授業」の設計(授業科目名からシラバスの完成まで)でした。8月5日夜の「プログラム1」で、授業科目名が「なせばなる21世紀の諸課題」と決まり、授業の目標として次の2項目が掲げられました。(1)学生が自らの力で複雑な「21世紀の諸課題を」認識・理解できるようになる。(2)それらの解決方法を共に考え、共に行動することができるようになる。学生の到達目標として、○Think global! ⇔Act locally! ○Act Global ⇔ Think locally!という2点を掲げました。つまり、地球規模の大きな問題の解決方法を考え、身近なところから地道に活動できるように、学生自らが育つような授業を構想しました。受講生の数としては、100名を想定しました。

 8月6日午前の「プログラム2」では、「なせばなる21世紀の諸課題」で学習を組織する戦略、方法を検討しました。戦略として次の14点が出されました。

  • 問題意識(モチベーション)を持たせるための講義:学生自らが、学ぶ意義を把握できるように仕組む。学生自らが授業のテーマを設定する。
  • 学生を班分けし、班ごとに討論・デイベートを行なうスタイルの授業とする。デイベートしやすいように仕組む。
  • 学生自らが、調査・研究・討論に参加するという新しい試みで、学生自身が変化し、発展する授業:学生自身の自己啓発・自己開発(FD)を目指すように仕組む。
  • 地球規模の問題の解決のために思考を馳せ、同時に身近な所から活動する。逆に身近なところから発想し、地球規模の活動を出来るようにする。
  • 学生自らが現在所属しているこの山形大学をベース(拠点)として何をやっていくのか、何ができるのかを考える授業とする。 具体的な授業の方法としては、次のように展開する。
  • 初回の授業で、21世紀に解決を迫られている大問題を学生自身の発想から6テーマ程度、挙げる。担当教員は参考程度にキーワードを提示する。
  • 受講生の希望を尊重して、テーマごとに6班に分ける。
  • 班ごとのテーマに即して、調査・研究し、その解決策を班内で討論する。授業の終了間際にワークシートに、得られた結果をまとめる。授業の度に司会、記録係などを決め、役割をもつ。このことにより、班への帰属意識、自分の役割を認識する。
  • 班ごとに代表を選び、班で得られた結論について全員の前で、中間的な発表を行なう。
  • テーマごとに大学内の専門家(教員)による講義を行なう。専門家の選出には、FD合宿の班のメンバーが、全学的な視点から協力する。
  • 専門家の講義を聞き、班ごとに、更にテーマを調査・分析し、討論によって深化させる。
  • 班の代表による最終発表を行ない、受講生全員によって各班の発表を評価する。
  • 各受講生の成績は、受講生全員の評価によって決定される。

 8月6日昼食前の最終「プログラム3」では、以上の結果を踏まえて、「なせばなる21世紀の諸課題」のシラバスを完成させました。このシラバスが、ほぼそのまま、今年度の教養教育のシラバス(p162)に掲載されています。(ただし、授業科目名を「為せば成る21世紀の大問題」、受講生の数を50名、掲げるテーマを5、したがって5班編制に変更しました)

 これまでのところ、授業は非常にうまく進行しています。各班では、まず自己紹介に始まり、それぞれが山形大学を選んだ理由を話し始め、躊躇しながら、しかし本音で「大問題解決」に向かって、自分の意見を吐露し、他のメンバーの意見について眼を輝かせながら聞きつつ、学生達が授業を進行させています。テーマは以下の5つです。(  )内は学生が決めた班の名前です。1.地球温暖化問題(Lovers)2.人口・食糧問題(チーム5年)3.エネルギー・環境・資源問題(プロジェクト・短パン)4.世界平和問題(テロリストA)5.未成年を取り巻く諸問題(THE)。授業時間ごとに学生自身が、また、学生相互の関係が変化していくのが、分かります。この様子を見て、「これまでに無かった授業スタイルを学生が待ち望んでいたのだ」、という実感が湧いてきました。現在、学生同士の熱心な調査・研究と活発な討論を経て、中間発表も終り、各テーマに関する専門家による講義が修了したところです。次の専門家にそれぞれ1回分の授業を担当して頂きました。1.地球温暖化問題(野堀嘉裕教授:農学部)2.人口・食糧問題(楠本雅弘教授:農学部)3.エネルギー・環境・資源問題(中島和夫教授:理学部)4.世界平和問題(松本邦彦教授:人文学部)5.未成年を取り巻く諸問題(上山真知子教授:教育学部)。仙道富士郎学長も、専門家による講義のまとめ役として、授業1回分を担当しました。

 授業は佳境に入っており、7月26日に行なわれる最終報告会(午後2時40分から教養教育1号館3階、131教室)は、ミニ公開授業として学内のメンバーに公開致します。奮ってご参加下さい。

 次は教育学部の江間 史明さんお願いします。

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