教室整備、次のステップは?

人文学部 中村 三春(日本近代文学・比較文学・表象文化論)

 毎週授業時に実施している小リポートに、「先生、毎回授業のたびに、映像の切り替え、照明の調整、暗幕の開閉、それにエアコンの調節ごくろうさまです。この授業だけじゃないけど、もうちょっとどうにかならないものでしょうか」。私の教養教育の授業「映画史」(文化論)は、あらかじめ沢山のテキスト資料を配付し、それを読みつつ、ビデオを用いて映像を投影し、さらに、事前準備したパワーポイントのスライド、補充のためのワープロ画面の投影によって進行していくので、こういうことになるのだ。教室を右に左に、教壇を上ったり下りたり、相当の運動量をこなすのである。

 教育方法等改善委員会のボス・小田隆治委員が、FDの最初の成果として挙げるのは、学生による授業評価アンケートの結果をふまえて、多くの教室にエアコンを導入したことだ。また多数の教室はAVおよびPC対応のプロジェクターを備え、豊かな視聴覚手法を取り入れた授業の実践が進められている。しかし、1学期間、この方式の授業をやると、ヘトヘトになって、次の学期は、休みたくもなるのだ。後から付け足しした教室なので、スイッチや端末があちこちに点在しているからである。機械化が進んでも、ちっとも労働者は楽にならない。『資本論』に書いてある通りだ。授業で取り上げたチャップリンの『モダン・タイムス』と同じことだ。すなわち、進取の気性に富んだハイテク授業の推進を、ためらわせるような状況が、この教室にはあるのだ。

 あなた(先生)は、新学期の初めに、自分が授業をする教室の下見に行っていますか? 私はいつも行く。行かざるを得ない。美麗に仕上げたパワーポイント搭載のパソコンを抱えて、初回の授業で、いざ接続、するとスクリーンは真っ暗くらの暗、という目にあったことのあるのは私だけではないはずだ。2年前にはなんと、公開授業でそうなったものだ。基本はPCの再起動なのだが、どうにもならないことも多い。教務の武田仁志さんの話によると、他の学部、たとえば医学部でも起こっていることで、更新された機器間の相性の問題ではないかと言う。確かにそうだ。教養棟だけでなく、人文学部でも同じことがあったし、昨年度出講した工学部の教室も、設備に関してはけっこうなものだった。

 それでテクテク歩いて研究室に戻り、せっかく買った携帯用の1kgのPCから、オールインワンとは聞こえはいいが3kgもあるPCに換える。あとは1学期の間、重い方のPCに、AV媒体(VHS、LD、DVD…)とペーパー資料と文献をどっさり、計10kg入りの黒ショルダーバッグ2つを両肩に下げて教室まで行軍する。向かいの教室で生物を教えている小田さんは、テキスト1冊だけしか持っていないというのに。小田さんいわく「熟練してるからね」。だがテキスト1冊で「映画史」をやるわけにもいかないだろう。

 ハイテクだけではない。マイク設備一つとっても、山形大学の教養教育はまだ決してほめられたものではない。3回に1回は、電池が切れている。われわれはFD事業を通じてソフト面での改善を進めると同時に、新しい授業の方法に応じたハード面での整備も、休むことなく進めていくべきなのだ。現代では、テクノロジーはなまものである。手当をしていかなければすぐに腐ってしまう。誰の責任でもない。われわれ自身の責任である。研究もさることながら、教育の方面でも、もっと設備更新を考えよう。エアコンが導入されて、教育環境は格段によくなった。それを否定する人はいないだろう。やはり設備整備は、授業改善の初めの一手と思う。教育は、学生に向けてのサービス業だということを、忘れてはならない。

 次は理学部の佐々木 実さんお願いします。

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