学習の効果

医学部附属病院医療情報部 八巻 通安(医療情報学)

 医学部では毎年夏に、医学教育に特化したファカルティー・デベロップメント(FD)が蔵王で行われている。今年も8月21,22日の2日間にわたって蔵王温泉ホテル樹林で行われた。俗世を離れての教育三昧の2日間であった。講師としてお呼びした浜松医大名誉教授・植村研一先生、慈恵医大教授・福島統先生の理論と情熱に裏打ちされたご講演が大変すばらしく、一同等しく感銘を受けた。

 その中で学習効果についての話題があったので受け売りで恐縮だがご紹介する。誰でもそうだと思うが、一生懸命学習したことでも時間がたつと忘れてしまう。特に暗記物はそうだ。ところが習得した運動技能は忘れることがない。子供のころ自転車に乗るのはとても大変なことだ。でも一度乗り方を覚えたら、一生忘れることはない。このような確固たる記憶、すなわち長期記憶をどうやって作ってゆくかということである。将来、医師になる医学部の学生の場合、これは特に大事なことだ。学習したことがすぐに消滅してしまっては困る。

 長期記憶に調べた成績では物事をマスプロの講義として聞いた場合、長期記憶として残るのはわずか5%であるそうだ。これに比べて体験で学んだ場合、おなじ事項でも70%が残るとういことだ。体験と講義では学習効果には実に14倍の差があることになる。この効率の差はべらぼうなもので、速度でいうと歩きと自動車の差に匹敵する。到達目標が高ければ高いほど、学習効率を考慮にいれる必要があるだろう。だれも山形駅から蔵王まで歩いてはいかない。

 実際、医学部のカリキュラムもクリニカルクラークシップという形で体験型の学習形態を大幅に取り入れることになっている。来年から本格実施される全国共通の共用試験でもいわゆるペーパー患者での模擬実地試験(臨床推論形式の問題)や臨床技能試験が取り入れられる。これから大学は競争の世界に入るとのこと、私もささやかながらFDで学んだことを生かして効率のよい、体験型の講義を工夫したいと考えている。

 次は工学部の神谷 淳さんお願いします。

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