授業改善の必要性痛感と私なりの試み

医学部 片野 由美(循環器系の病態生理、薬理学、老年学)

 私は,平成7年山形大学医学部薬理学講座から平成5に新設された看護学科に移籍し,人体機能学,薬理学,病態生理学を担当しています.

 私が痛感した授業改善の必要性と私なりの試みについて,山形大学医学部30周年記念誌原稿の一部を紹介し,私のリレーエッセイとさせていただきます.

「看護系大学における生命科学系の授業時間数は,医歯薬系大学に比べ非常に少ないのが現状です.医療ミスの半数以上が薬の誤用によるものであり,そのうち看護師によるミスが非常に多いことはニュース等でご存知のとおりです.医療ミスが起こるたびに,忙しすぎることを理由にあげますが,そればかりではなくてあまりにも薬の作用について知らなすぎることが第一の原因だと,ニュースを聞くたびに教える立場にある者として心を痛めています.ほとんどの看護系大学の薬理学授業時間は専門学校や短大と同じく45時間です.この時間内で膨大な薬の作用についてしっかり理解させることは不可能です.国家試験出題科目となっているため,とりあえず全範囲を網羅しなければなりません.そこでやむなく詰め込み教育になり,学生は試験にパスするためにただ薬品名を丸暗記しているのです.これでは医療ミスが起こらない方が不思議な位です.カリキュラム改変により,授業時間数はますます少なくなっています.ゆとり教育ということなのでしょうか?時間数を減らした分,今の学生がそのゆとりをじっくり勉学にあてると考えているのでしょうか?ここでぶつぶつ言っていてもはじまりません.少ない時間数を有効に活用し,目標を達成させるために,カリキュラム上分かれている人体機能学,看護薬理学,病態生理を特に区別することなく使い,まず人体の仕組みをしっかりと理解させた上で,その仕組みを修飾する関連薬物の作用機序を教えるようにしました.人体の仕組みと薬物の作用機序の理解がしっかりできていれば,その後は自分の頭でしっかり考えることができるものと信じて,その方式で授業を進めています.授業に加えて自分の体を使った実習,ビデオ教材を活用しています.すると大半の学生は人体の神秘,薬物の作用機序を理解することの重要さを認識し,熱心に取り組んでくれます.中には看護師になるのに何故そんな難しいことを学ばなければならないのかといいます.そんな学生に限って過去問題の答え(誰の答案?)を丸暗記して試験に臨んできます.少し問題の出し方を変えるともう答えられません.後者のような学生が将来医療ミスを起こすことになるのではないかと心配しつつ,このような学生の扱いに頭を悩ませているところです」(以上,山形大学医学部30周年記念誌から一部抜粋).

 カリキュラム改革,授業改善の取り組みが盛んに行われていることは大変結構なことだと思います.反面,怠け者の私がこれまで恩師達からは言われ続けてきたこと「大学とは自ら学ぶところで,教科書に載っていることは自分で読め.教科書に載っていないことを教えるのだ.また学びたい,優秀な学生に焦点をあわせた授業を行う,それが大学だ」.こんな言葉を聞くこともできない時代になってきたのでしょうか.

 次は工学部の佐藤 力哉さんお願いします。

左側にメニューページが表示されていない方はこちらをクリックしてください。