フィールド活動のための基本技術を身につける
野外授業

農学部 林田 光祐(森林生態学)

 自然豊かな地域の特色を活かした教育は、山形大学のいろいろな教育の場で試みられていることと思います。自然のなかでの活動には街なかや教室とは異なる危険が多く、これらを回避するためには技術が必要です。これらの基本技術を身につけてもらうための授業「フィールド科学のテクニック」を、8月上旬に一般教育科目として農学部生物環境学科の教員4名で実施しました。安全で快適な野外活動を行うために必要な知識や技術を学んでもらおうと農学部附属演習林というフィールドで実際に体験しながら学ぶ、実習形式の野外講義です。

 なぜこのような授業を思い立ったのか。きっかけは、数年前に他の大学で相次いだ生態学関係の学生・教員の死亡事故でした。他人事ではないこの事故にショックを受け、自分はもちろん、学生達の安全に対する意識を高める必要があると感じたのです。そこで、まず自分の研究室の学生を対象に、野外での調査を行う時に必要な安全の心得と安全確保のシステム作りを指導し、実行しました。さらに、フィールド科学を大きな柱にしている生物環境学科のすべての学生にこれらの知識や技術を知っていてほしいと考え、学科の先生方の協力を得て、今年から生物環境学科の必修科目である生物環境学実験実習を2単位に増やし、フィールドでの安全教育、実験室での安全教育、救急救命講習をこれまでの実験実習に加えて、実施しています。

 しかし、これらは安全という必須の条件に重点をおいたので、残念ながら楽しみながら快適に過ごすという楽しみの部分を時間の関係上削らざるをえませんでした。そこで、この部分を加えた専門科目とは異なる一般教養としてのフィールド科学を、一般教育科目として立ち上げることにしたのです。

何もかも初めての試みなので、今年は4名の教員でそれぞれの持ち味を活かした授業の構成を考えました。フィールド活動のために必要な基本的な知識については、あらかじめまとめてある資料を配付して自習してきてもらい、野外授業では実践的に技術を修得してもらうことに集中しました。たとえば、地図とコンパスの使い方、樹木の種の判別法、ザイルを使ったロープワークを学び、それを応用した独自のオリエンテーリングを実施しました。受講した学生は、急斜面や暑さ、アブに四苦八苦しながらも、樹皮に残されたクマの爪痕に感激し、渓流の流れに身をまかせる楽しさも味わったようです。野外授業だけでなく、夜には講義と議論の時間を設け、自炊をしながらでしたので、早朝から夜遅くまで大変忙しい3日間でしたが、全学部の学生が参加して、文字通り共同生活で学んだことは数多くあったのではないかと思います。授業後の学生のレポートを読み終えて、このような授業もこれからは大事な教養教育だと確信しました。

 次は教育学部の豊田 東雄さんお願いします。

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