それなりにインターアクティヴ

人文学部 大河内 昌(英文学)

 はやいもので当時の教養部に英語担当教員として赴任して16年が過ぎ去ろうとしている。その間に教える授業も変化したが、教師としての自分の意識も、授業方法も変化した。現在は教養教育の英語はもちろん、学部の講義、演習、卒業論文指導も担当しているし、今年は一般教育科目の講義まで担当している。こうして多様な形態の授業を担当していると、それぞれに特有な問題にぶつかる。とくに多人数を相手にする講義は学生とのかかわり方がむずかしい。

 こういうことがあった。ある年の1年生向けの学部の講義の学生アンケートの中に、「この授業は先生が一方的に話しているだけなので、つまらない」という意見があった。私はそれまで、そもそも講義というものは教員が一方的に話をするものであり、90分間話をし続けるのが教員の技量であると思い込んでいたので、これには少しショックを受けた。学生は授業中に教員とのインターアクションを求めているのであろうか?つぎの年、講義を何とかインターアクティヴなものにするために、授業中に学生に質問や意見を聞くということをやってみた。これはうまくいかなかった。自主的に質問する学生はほぼ皆無であるし、こちらから指名して無理やり意見を言わせていたら、最後の学生アンケートに「講義なのに学生を指名するのはやめてほしい」と複数の学生から書かれた。もちろん、こうした意見はべつべつの学生が個人的な意見を書いているので、いちいち気にする必要もないのかもしれないが、自分から目立った行動を取るのが苦手な日本の学生たちを相手にインターアクティヴな講義を作り上げるということがひとつの課題であることは間違いないだろう。

 今年の講義で試行した方法は「出席カード」を使うというごくありふれたものである。あまりにありふれているので、書くのも気が引けるが、私にはちょっとした発見だった。最初は「学生が真剣にコメントを書いてくれるのか」と訝ったが、結果的には大いに役立つことがわかった。学生の大半は真剣に書いてくれる。質問の中には、曖昧にやり過ごした部分を鋭く突っ込む質問もあるし、授業でわかりづらかった部分を指摘し「次回にその部分をもう少しわかりやすく復習してほしい」という具体的な要望もある。次の授業で前回の質問のいくつかに答えるようにしているが、学生の反応は良好である(と思う…たぶん)。もちろん、講義中に自ら質問をする学生が何人かいれば活気ある授業になるだろうが、ないものねだりをしても仕方ない。何とか工夫して、「それなりにインターアクティヴ」な講義を実現してゆくしかないのだろう。

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