教養教育と授業方法

医学部 若林 一郎(衛生学)

 先日30年来付合いの大学教養時代の恩師が私を山形に訪ねてくれた。私が一般教養と大学での教養教育の重要性を最近痛感していると話すと、恩師は教養の広がりを異次元で語っていたのが印象的であった。専門教育で必要とされる知識量が増えるなか、医学部では教養教育に費やす時間が制限されてきた。一方で、教養教育の充実が求められている。そこで専門教育の中に教養教育をうまく組み込むカリキュラムは興味深く、事実私の恩師は医学部の臨床教育カリキュラムの中で教養部分の内容を講義しているという。医学教育が生涯教育であることはいうまでもなく、近年盛んに認定医制度のための研修会が催されているが、教養教育はまさしく生涯教育であり、それを大学入学初年度のカリキュラムに押し込むこと自体が不自然なのかもしれない。

 さて、授業方法についての月並みな話題であるが、パワーポイントを用いたスライド講義の是非をよく同僚の教授方と議論する。最近このスライド形式の講義をする教官が多いと聞くが、私の場合、講演会や学会などではいつもパワーポイントを用いている一方、大学の授業ではこれまでスライドを用いることは稀で、クラシカルな板書中心の講義を行なってきた。これまでに受けた学生の授業評価では、字が読みづらいとか誤字があるという批判はあったものの、授業方法では支持されてきたと考えている。一方で、講義しなければならない内容が膨大であるため板書では話せない場合があり、そこはプリントで補っている。医学部では、近年「医学教育のコアカリキュラム」や「医師国家試験ガイドライン」などにより必修の授業内容が明示されており、これらの授業内容の漏れは許されない。そこで授業効率化のため私もスライド講義の導入を考えざるを得ず、最近テスト的に行なってみた。その是非はまだ検証されていないが、私が他の教官のスライド講義を聴講した限りでは、配付資料を提供した上でのパワーポイントを用いたスライド講義の授業効果は低いようで、何らかの工夫が必須と感じた。この点でスライド講義を多用されている先生方のお知恵を賜りたいと考えている。

 次は農学部の粕渕 辰昭さんお願いします。

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