はばたくひと ♯29

西山隼平

第一志望の市役所に入庁し、
広報課で奮闘。
大学時代の幅広い学びや経験が糧に。

2024.01.30

第一志望の市役所に入庁し、広報課で奮闘。大学時代の幅広い学びや経験が糧に。

 地域教育文化学部地域教育文化学科を卒業した西山隼平さんは、晴れて第一志望の山形市役所に入庁。1年目から広報課に配属され、広報紙の制作、ウェブサイトの管理、SNSの配信などの業務を担い、山形市の情報を発信している。大学時代は美術や心理、食、スポーツといった多彩な分野を学び、学外の人と交流する機会にも恵まれた。広報課の仕事は多岐にわたる。「大学でのさまざまな経験は、今の仕事に通じる部分があります」と充実の表情を見せる。

情報格差を減らし、
誰もが住みやすい山形市に。

 本学在学中から公務員を目指し、第一志望の山形市役所に入庁した。先輩職員でもある兄から「若い世代が多く、職員同士で気軽に相談し合える職場。雰囲気がいいので、楽しく仕事ができる」と環境の良さを聞いていたのも志望理由の一つだ。実際、西山さんが採用された年は大卒行政職の同期が30人前後と多い。
 初めての配属先は、熱望していた広報課。情報過多の時代に、情報格差を痛感していたことが大きい。「全員ではありませんが、高齢の方は若い方に比べると、インターネットから情報を得にくい状況にあります。こうした情報格差をできるだけ解消したいと思いました」と明かす。

西山さん2

広報課のデスクで、広報紙の校正作業を行う。「発行するまでに、複数の人で確認しています」。庁舎でのデスクワークに加え、取材で外出することもある。

 自宅に届く広報紙を楽しみにしている祖母の存在も、広報課に興味を抱いたきっかけ。「広報紙の制作全てを外部に委託している自治体もありますが、山形市は職員自ら取材し、原稿を作成しています。祖母のように広報紙を楽しみに待ってくれている方がいると思うと、励みになります」とも話す。

月2回発行の
「広報やまがた」を制作。
撮影も原稿作成もこなす。

 広報課の業務は「広報やまがた」の制作、市公式ウェブサイトの管理、市公式LINEの配信、庁内放送、報道機関への情報提供など多岐にわたる。西山さんは主に、月2回発行している広報やまがたの制作を担当。
 各課から届く情報をまとめ、市民に分かりやすい文章を作成する。市内での出来事やイベントを取材し、撮影や原稿作成も行う。「学生時代から国語は得意科目とは言えませんでした。最初の頃に書いた原稿には、上司からたくさん修正が入りました」と苦笑する。広報課に配属され、間もなく2年。「何度も書いているうちに、慣れてきました」と指摘は減っている。
 学生時代からデジタルカメラで撮影をしていた西山さんにとって、撮影は比較的得意な仕事。「広報紙を作って、写真が読者に与える影響は大きいと改めて感じています」と話す。

西山さん3

2022年から運用されているシェアサイクル「山形市コミュティサイクル」の自転車を撮影。「サイクルポートが徐々に増え、より便利になっています」と紹介する。

西山さん4

季節感ある情報を発信するため、色付いた葉にカメラを向ける。大学時代は「生まれ育った山形市をもっと知ろうと、カメラを持って街歩きをしていました」と振り返る。

 広報課は他の課に比べ、残業や時間外勤務が多い。広報紙の校了日は遅くまで編集作業に追われる。「他の課が消灯しても、広報課だけ明かりがついている日もあります」。基本的に平日週5日出勤だが、取材のため休日に出勤することもある。
 それでも、刷り上がった広報紙を手にした瞬間は「積み重ねてきた仕事が形になり、達成感があります」と表情は明るい。
 市公式ウェブサイトの管理も大切な業務の一つ。各課で作るウェブページのサポートや注目情報の更新をしている。緊急情報があればトップページに表示する。
 市公式LINEはこの2年間で登録者が増えた。SNSの需要の高まりを受け「広報課で運用するインスタグラムはないのですが、写真を活用した情報発信は有効。広報紙の取材で撮った写真などを活用して、山形市の魅力を発信できれば」と語る。

西山さん5

取材で愛用している道具。腕章を付け、デジタルカメラ、筆記用具、レコーダーを持参して現場へ向かう。

コロナ禍で
大学3年時の陸上大会が中止に。
悔しさをバネに
公務員試験の勉強に集中。

 西山さんは本学で陸上部に所属し、入学当初は将来の職業に保健体育の教員を考えていた。次第に山形市と山形県の行政職への興味が高まり、2年生の時に山形市職員採用試験を受けると決めた。
 「自分が生まれ育った町に恩返しをしたいという気持ちが強くなり、市職員は市民に近い存在だと思いました」

西山さん7

大学時代は陸上部に所属。コロナ禍だった3年生の春は、大学の集大成を発揮しようと意気込んでいた大会が見送りになったため、気持ちを切り替えて公務員試験の勉強に励んだ。

 地域教育文化学科は児童教育コースと文化創生コースがあり、西山さんは文化創生コースを選択。美術、心理、食、スポーツと多彩な分野に触れた。土井敬真准教授のゼミに所属して彫刻を学び、卒業制作はクスノキを原料にテーブルクロスを仕上げた。

西山さん9

卒業制作はクスノキを彫り、テーブルクロスを完成させた。シンプルな見た目ながら、素材が木とは思えない、しなやかな質感を繊細に表現していている。

 授業の一環で、小学生や小さい子ども向けの工作教室を学生が主体となって開催。子どもたちに説明する役を引き受けた。グループワークを取り入れた授業が多く、発表会ではグループの代表として人前で話す機会もあった。

西山さん4

子ども向けの工作教室で説明をする西山さん。「大学時代は人前で話す機会が結構ありました。人と関わる機会が多い広報課の仕事を抵抗なくできるのは、大学での経験が生かされていると思います」と振り返る。

 公務員試験の勉強は3年生の秋ぐらいに始める学生が多い中、西山さんは少し早めの3年生の春から着手。コロナ禍のため、春に予定されていた陸上の大会が見送りになったからだ。
 「大会までは陸上に専念しようと思っていましたが、大会はなくなりました。その悔しさを、公務員試験を頑張る原動力にできました」。公務員試験に備え、本学の公務員講座を受講。コロナ禍のためオンライン中心で学んだ。
 「好きなことが、今の仕事につながっている」という西山さん。「幅広い学びができる文化創生コースは人間力を磨け、業務が多岐にわたる市役所の仕事にも生かされていると思います。私の時の採用試験はコロナの影響で集団討論はありませんでしたが、1つ下の学年から集団討論が復活したので、知識が豊富だと話題も増えます。学生時代にさまざまな経験をしている方が、就職の面接や小論文に取り組む際も強みになります」と後輩にエールを送る。

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にしやまじゅんぺい

にしやまじゅんぺい●山形県山形市出身。2022年3月に地域教育文化学部地域教育文化学科文化創生コース卒。同年4月に山形市役所に入庁。広報課に配属され、広報紙の制作などを担当している。

※内容や所属等は2023年11月当時のものです。

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