はばたくひと ♯30

熊谷茉実&松本樹哉

故郷・山形県の1次産業を
金融面から支え、発展に貢献。

2024.02.28

故郷・山形県の1次産業を金融面から支え、発展に貢献。

さまざまな形でお金に関わり、社会経済や暮らしを支える金融業界は銀行や証券会社、保険会社など多彩な業種があり、就職先に人気が高い業界の一つ。本学出身の熊谷茉実さんと松本樹哉さんは、農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関「農林中央金庫」の職員。先輩後輩の間柄で、ともに「金融の仕事を通して、生まれ育った山形県の1次産業の発展に貢献したい」と奮闘している。仕事や学生時代の就職活動についてインタビューした。

転勤のない職種での採用。
「故郷で働き続ける」を選択。

 農林中央金庫は農林水産業の発展に貢献し、地域の食や暮らしを支えることに重点を置く全国金融機関。海外にも支店があり、本人の希望する働き方によって総合職、支店総合職、ビジネスエキスパート職の3つの職種に大別できる。
 熊谷さんは2014年に、松本さんは2018年に入庫。ともに山形県出身で「故郷の1次産業の発展に貢献したい」との思いから、熊谷さんはビジネスエキスパート職、松本さんは支店総合職として、2人とも転勤のない職種で山形支店に勤務している。
 熊谷さんは総務班、総括班を経て、現在はコーポレートサービス班に籍を置く。農協からの県税などの取りまとめ、手続きなどを担当している。「班によって仕事内容はさまざまですが、今は窓口といった最も銀行らしい業務を行っています。お金のやり取りでミスが許されないのは当たり前の世界。プレッシャーはありますが、無事1日を終えると達成感があります」とやりがいを語る。
 総括班時代は農協と関わる業務が多く、農協の職員が事務を円滑にできるようにサポート。度々感謝の言葉をもらい、喜びを感じた。

農林中央金庫2

山形市にある山形支店への勤務が基本。学生時代見ることのなかった桁数の多い数字は「慣れです」と、熊谷さんはにっこり。社会人になって覚えた電卓の扱いもお手の物だ。

 松本さんも、熊谷さんと同様に総務班からスタート。「1年だけの在籍でしたが、その期間は熊谷さんと一緒でした。同じ大学出身で頼りになる先輩。いろいろと教えていただきました」と新人時代を振り返る。営業班も経験し、現在は制度統括班で財務や運営体制の面から農協の支援を担当している。農協が安定的に経営を進められるよう、さまざまな角度からモニタリングや検査も実施している。
 これまでの仕事で特に印象に残っているのは、営業班時代の農業融資だ。「お客さまに融資し、その資金を活用して生産された多くの農作物が店頭に並びました。形として目に見えモチベーションになりました」と話す。特に山形県は新規就農者が多く、他県からの参入者もいる。「元々山形にいる方、山形で何か始めようとしている方、さまざまな方と関わり、山形の農業の振興に貢献できています」と充実の表情だ。

 

農林中央金庫3

山形支店に勤務する際は電話対応やデスクワークを行う松本さん。出張が多く、「外出先でパソコン作業をすることもあります。テレワークも導入されています」と説明する。

就職活動は
「迷ったら行動」。
さまざまな経験が
可能性を広げる。

 二人はどのような思いで金融業界、農林中央金庫を志望し、就職活動に取り組んだのだろうか。
 熊谷さんは本学3年の下半期に、業界を決めずに就職活動を始めた。合同企業説明会でさまざまな業界の説明を受け、「自分の感覚に合う」と感じたのが金融業界だった。「将来、自分がどのように働きたいか改めて考え、生まれ育った山形に貢献したいという思いが強いことに気付きました」と打ち明ける。
 山形県は米や果物などの農産物の生産が盛ん。「農業を金融の面から支えられる仕事」と農林中央金庫を第1志望にした。
 一方、松本さんは元々公務員志望で、3年から公務員講座を受けていたが、ゼミの先輩との会話から民間企業も選択肢の一つに考えるようになった。次第に「巨額の資金を動かして世の中と関わる金融業界は、刺激を受けながら広い視野で仕事を続けられる」と魅力を感じ始めた。その中で、「特色ある山形県の農林水産業の発展に貢献したい」と農林中央金庫を志望した。
 松本さんは「就職活動は志望業界を狭め過ぎずに、さまざまな業界の話を聞いてみることをお勧めします。そうすれば自分の仕事に対する価値観を再確認することができると思います」と後輩にエールを送る。
 熊谷さんも「説明会は行くか行かないか迷ったら、参加した方がいいと思います」とアドバイスする。

農林中央金庫4

他の銀行で経験を積んだ中途採用者や、育休を経て復帰した職員もいる。熊谷さんは「年休の取得など、ワークライフバランスにも力を入れている和やかな職場です」と話す。

農林中央金庫5

松本さんは本学での多彩な学びと、業務が多岐にわたる現在の仕事は通じるものがあると実感。「数年ごとに班の異動があり、いろいろな仕事に携われます」と紹介する。

社会人になって実感。
大学時代の学びや経験の大切さ。

 農林中央金庫の山形支店には経済学部や農学部、工学部などさまざまな学部の出身者がそろう。他の金融機関を経験した中途採用の職員も多い。入庫後に研修を受け、日々の業務で知識を身に付け、現場で活躍している。二人は「本学での学びや経験が、今の仕事に生かされている部分もある」と口をそろえる。
 英語を中心に言語学を専攻していた熊谷さんは、英語と日本語での課題レポートなど文章を頻繁に書いていた。社会人になった今も、社内外向けに文章を作成する機会がある。
 「学生時代に英語を学んでいたためか、主語と述語が明確な分かりやすい文章と言われることがあります。自分では無意識ですが、仕事にプラスになっている部分です」

農林中央金庫7

熊谷さんが4年生の時、内定者として参加した農林中央金庫の創立記念祭で撮影。左から前列5人目が熊谷さん。「短大からの編入だったこともあり、忙しい大学3、4年生でした」。

 松本さんは本学で地域の活性化を研究。フィールドワークを通して自治体が抱える課題やにぎわいを生み出す流れを検証した。「自治体に何か提案する場合、その先に住民がいることを考えるように教授からアドバイスを受けました。先を見越したプランは仕事にも欠かせません」ときっぱり。
 学外の人との交流を通してコミュニケーション力が自然と養われ「今、仕事にも生かされています」と実感している。
 サークルはアメリカンフットボール部だった。「『準備が8割のスポーツ』と先輩に教わり、対戦相手の分析など試合前に準備することをたたき込まれました。その姿勢は仕事でも大切。経験も知識も年齢も、自分より上の方と仕事をすることが多いので、下調べを十分に行った上で対話することに努めています」と語る。

 

農林中央金庫9

松本さんは本学での4年間、アメリカンフットボール部に所属して心身を鍛えた。学生時代から一人暮らしをしていたため、飲食店でのアルバイトにも励んだ。

 入庫以来さまざまな経験を積んでいるが、まだまだ若手の二人。松本さんは「国内外に多くの拠点を持つ会社なので、今後一層、山形で働きながら日本全国および世界を意識することが求められています。そのため、私自身、年次を重ねるごとに視野を広げ業務に取り組んでいきたいです」と力を込める。
 熊谷さんは「世の中は日々変化しています。私たちも変化が必要で、現状に満足せず、より良くするためにという視点を持って業務に当たろうと心掛けています」と気を引き締める。

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くまがいまみ

くまがいまみ●山形県山形市出身。2014年3月に人文学部人間文化学科言語学(英語学)(現在:人文社会科学部人文社会科学科)卒。同年4月に農林中央金庫に入庫。現在はコーポレートサービス班に所属し、県税などを取りまとめている。

まつもとみきや

まつもとみきや●山形県上山市出身。2018年3月に人文学部法経政策学科公共政策コース(現在:人文社会科学部人文社会科学科)卒。同年4月に農林中央金庫に入庫。現在は制度統括班で財務や運営体制の面から農協の支援を担当している。

※内容や所属等は2023年11月当時のものです。

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