まなぶひと #43

後藤暖&古川達己

若者の消費者トラブルをストップ!
学生主体でトークイベントを開催。

2024.01.15

若者の消費者トラブルをストップ!学生主体でトークイベントを開催。

 2022年4月に成年年齢が引き下げられ、18歳から携帯電話の契約やクレジットカードの作成、ローンを組むことが可能になり、自分の意思で様々な契約ができるようになる一方で、若者が消費者トラブルに巻き込まれる危険が高まっている。山形県と連携し、本学学生が中心になって実行委員会を立ち上げ、消費者トラブルの防止を啓発する「STOP! 消費者被害啓発トークイベント」を初開催。委員長と副委員長にイベントの意義や学生に伝えたいこと、委員会の活動を通して得たことなどを聞いた。

山形県と連携して企画・運営。
委員長、副委員長に就任。

 「STOP! 消費者被害啓発トークイベント」は山形市の霞城セントラルで2023年9月に初めて開催された。実行委員は本学学生が務め、山形県消費生活・地域安全課と連携して企画・運営した。
 イベント当日は「クレカのトラブルって何!?」「キャッシュレス決済を考える」の2つのテーマを設け、パネルディスカッションを実施。モデレーターは山形県を拠点に活動するタレントのミッチーチェンさんが務めた。パネリストとして東京都立大学法学部・法学政治学研究科の小笠原奈菜教授、山形県弁護士会所属の細江大樹弁護士、日本クレジット協会消費者相談室の松村秀明室長らに加え、学生も参加した。

JR山形駅西口にある山形市のランドマーク、霞城セントラル1階のアトリウムで2023年9月に開かれた。大学生をはじめ若者をターゲットにしていたが、幅広い世代が興味を示していた。

 学生にとって身近なテーマということもあり、本学小白川キャンパスに通う大学3、4年生を中心に、高校生や短大生、社会人らが出席。オンラインでも同時配信し、遠方の受講者もいた。
 本学地域教育文化学部地域教育文化学科文化創生コース4年の古川達己さんは副委員長として企画・運営に携わり、パネリストの一人としても登壇。支払い時の便利さやポイントを貯められるといったメリットを感じ、普段からクレジットカードを活用している。
 イベントのために準備から関わり、「何かあったら怖い」と現金派の学生が想像以上に多いことに気付いた。「知らないことが不安につながっているので、今回のイベントの意義は大きい」と痛感したという。

パネリストの一人として発言する副委員長の古川さん。来場した親戚の高校生から「キャッシュレス決済の怖さを学べて勉強になった」と感想を聞き、「若者を対象に開いて良かったです」と笑顔を見せる。

 人文社会科学部人文社会科学科地域公共政策コース3年で、委員長を務めた後藤暖さんは、クレジットカードのショッピング枠を利用して現金を得る「クレジットカードの現金化」について、「犯罪に巻き込まれる怖さがある」ということ、また、クレジットカードを使用することで「ポイントが付くなどお得な面も知ることができました」と話す。デメリット、メリットを把握した上で、人生初のクレジットカードを申し込もうと考えている。

手軽な電子決済も要注意。
さまざまな
トラブル事例を知って。

 実行委員として、イベントを成功させた二人。メンバーになろうと思った動機は何だったのだろうか。
 後藤さんは2022年に消費者トラブルに遭った経験がきっかけの一つになっている。知らぬ間にエステ関係の高額な契約をしてしまった。「最初はパニックになり、家族にも相談できなくて。インターネットで調べて山形市消費生活センターに問い合わせ、クーリング・オフ制度を利用することができました」と胸をなで下ろす。
 事なきを得たが「自分が消費者トラブルに遭ってしまい、誰もが巻き込まれる可能性があると思いました。他の学生には、自分と同じ経験をしてほしくない」とメンバーに名乗りを上げた。
 古川さんは公務員講座を受講したことから、消費者トラブルにも興味を持った。大学入学時からコロナ禍で行動の制限を強いられたこともあり、「視野を広げたい」とメンバーになった。

 

県職員や本学学生が参加した第7回企画運営会議。イベントのチラシのデザインや、参加者を効果的に募る方法などを話し合った。オンラインで出席したメンバーもいた。

 二人とも2022年9月からオンライン会議を含む全7回の企画運営会議に出席。全国や山形県の若年者の消費者トラブルに関する相談件数など基礎知識を学び、イベント本番のトークテーマや進行方法などを詰めていった。
 企画運営会議の参加メンバーはその都度異なり、最大20人程度で意見交換。二人は無欠席で、後藤さんは委員長、古川さんは副委員長の打診を受け、引き受けた。
 古川さんは「どのようなテーマが若者に響くのか、必要としてもらえるのかを考えるのが少し大変でした」と振り返る。
 イベントを終え、二人は「学びが多かった」と充実の表情。古川さんは「知らないことが多かったです。電子決済時のバーコードの盗用は衝撃でした。例えば、会計待ちでレジに並び、自分のスマホでバーコードを表示していると後ろの人に撮られてしまい、そのバーコードが使い回される犯罪があるそうです」とイベントで知った被害の事例を紹介する。
 QRコードを店頭に置いたままにしている店があるが、知らぬ間に偽物のシールが貼られるという被害もある。客は支払いをしたつもりでも、その店舗ではないところにお金が流れてしまうのだ。古川さんは「店が知らないうちに、犯罪に加担していることになります」と訴える。
 古川さんも後藤さんも、今の学生は電子決済派が多いと感じている。後藤さんは「便利なので気軽に電子決済を使っていますが、気付かないうちに被害に遭う可能性があるということを知ってほしい」と呼び掛ける。

準備も本番も、多くの人と交流。
視野を広げるきっかけに。

 2024年3月に卒業を控えた古川さんは山形市役所への入庁が内定している。コロナ禍で制限があった大学生活で、今回のイベントの企画・運営に携わり、人脈を広げられた。
 「普段は違うことを学んでいる学生と、消費者トラブルという一つのテーマで話し合い、異なる価値観を知ることができました。視野を広げられたのが、すごくうれしかったです」と笑顔。さらに「コロナ禍で大学生活は制限がありましたが、自分から動いて良かったです。一歩踏み出す勇気が、大学生活の充実につながると思います」と後輩にエールを送る。

古川さんは企画運営会議で司会進行を務めることが多かった。「コロナ禍の大学生活は人が集まる機会が少なかったので、名前と顔を覚えるのが大変でしたが、とてもいい経験になりました」と振り返る。

 後藤さんも公務員志望。山形県職員の仕事を間近で見て「将来は県職員として、自分が生まれ育った山形県のために働きたい」という思いが強まった。
「元々、自分の意見を発言するのが苦手な性格だったので、委員長に任命していただいたときは少し不安がありました。でも、いろいろな方とコミュニケーションを取りながら手探りでイベントの企画・運営をし、充実した時間になりました。自分がトラブルに遭った時はどうして私がと思いましたが、知識があれば防げることもあります。イベントが消費者トラブルを考えるきっかけになってくれたら」と願う。

イベント当日、委員長としてあいさつをする後藤さん。将来は公務員志望で「今回のイベントを通して山形県職員の仕事に携わることができ、とても貴重な経験になりました」と話す。

ごとうあづみ

ごとうあづみ●山形県寒河江市出身。人文社会科学部人文社会科学科地域公共政策コース3年。STOP消費者被害啓発イベント実行委員会委員長。財政学のゼミに所属し、自治体財政について分析している。

ふるかわたつき

ふるかわたつき●山形県山形市出身。地域教育文化学部地域教育文化学科文化創生コース4年。STOP消費者被害啓発イベント実行委員会副委員長。卒業研究はファン心理を題材に、推しがいることでの幸福度や精神的健康などを調査。

※内容や所属等は2023年11月当時のものです。

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