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農学部  道祖土  博一

留学報告

留学先:タイ王国・コンケン大学
期間:2011年6月〜2012年3月

 留学生活をするに当たりタイでの生活を意味あるものにするため、目標を掲げました。それは、「一般のタイの人々がしていることを経験する事」。タイに暮らす人と同じ目線でタイを見たいと思ったためです。日本で暮らしてきた外国人の私にとってはとても難しいことであるのは分かっていましたが、それでも同じ目線、同じ立場に立ってみることで、旅行者としての視点ではなく、現地の人により近い視点で物事を見る事ができ新しいタイの素顔が見えてくるのではと考えました。そのためにタイの人と同じように振舞う事をとても意識しました。お寺に行くときは一緒に行き一緒に拝んで、食事のときはタイの人が食べているものは全部食べてみて、会話もなるべくタイ語で話す努力をし、現地の人たちとなるべく多く会話するように努力しました。
 コンケン大学に到着してまず驚いたのが、規模がとても大きな事です。入り口の門がとても大きくて、門を抜けても日本の国道のような道が続いていて、大学というよりも街というような様子でした。学生用の寮のようなアパートのような場所に住む事になったのですが、そこから農場や講義室まで距離があって自転車でも大変でした。また、タイは日中とても暑くなるので、午後の移動はとても辛かったです。
 農学部の講義はほぼタイ語でした。資料などは英語でしたが、理解するのにとても苦労しました。タイでの友人や先生方にとても苦労をかけたと思いますが、色々と助けて頂いてとても感謝しています。タイの人々の温もりをとても感じました。農場での作業は暑さと虫との闘いでした。虫は特に蚊と蟻が厄介でした。蟻の巣の上に何も知らずに立つと足を噛まれてとても痛いです。しかも結構な数で襲ってくるので恐怖でした。
 コンケン大の農場もとても広かったです。トマト、トウモロコシ、キュウリ、トウガラシを初めとした野菜類、マンゴーなどの果樹類、花などの観賞用植物、それぞれのセクションに分かれて農場がありました。また、水牛や乳牛、豚、鶏、ダチョウなどもいて、牛を放牧できるくらい広い草地があり、熱帯魚などの水産の学科もあったので、多様で様々な植物や動物を見る事ができるのでとても面白かったです。
 初めての海外生活は、とても貴重な体験の日々でした。母の実家があるので、何度か訪れたことのあるタイ王国でしたが、長期間滞在するにつれて短期間の滞在では見えてこなかったものが見えてきたり、よりタイの人々に寄り添った視点で物事を見る事ができ、自分の知らなかったタイ王国の持つ顔が見えたように思います。
 タイに行く前に参考書等でタイ語の勉強をしていたのですが、実際に現地に行ってみるとかなり違う世界が広がっていました。違う世界というのは、自分の中にあるタイのイメージとは異なるという意味です。まず言葉についてですが、コンケンの人たちの話す言葉が標準のタイ語とは異なっていました。彼らが話していたのはイサーン語と呼ばれるイサーン地方の方言でした。標準タイ語で“マイペンライ”日本語で「どういたしまして、大丈夫です、問題無いです」に相当する言葉ですが、イサーン語では“ボーペンニャン”と言っていました。カタカナ表記だと正確な発音は表せませんが、大分違うということは表せたと思います。イサーンはラオスとの関係が深いのか、ラオス語も話せる人が多くいました。また、イサーン地方にあるブリラン県(南にカンボジアとの国境がある)に行ったときには、地元の人たちはカンボジア語も話せていました。これもまた、カンボジアとの関係の深さを示しているのだと思います。そして、北部タイのチェンマイの人たちが話す言葉は北部の方言でした。行ったことはないですが、南部にも方言がありました。コンケンの友人に南部出身者がいて話してくれました。標準タイ語とはリズムが大分異なっていました。知らないで聞いたら、何語を話しているか分からないと思います。北部、中部、東北部、南部で言葉が異なることに驚きましたが同時に、日本にも同じように方言があって、どこの国でもそれぞれの地域で独自の言葉あるのだなと、当たり前のことを気づかされました。これまでは、タイにはタイの文化が、日本には日本のと、一つの文化を取り上げてそれがその国を表すような文化なのだなと勝手に思い込んでいました。日本で例えるならば、京都の舞妓さんを取り上げて、これが日本の文化であると言ってしまう。舞妓の文化は京都に残る伝統文化であるということを伝える必要があると思いますし、舞妓さんが日本中にいると誤解されかねないと思います。これはあくまでも例え話です。
 また、言葉以外にも仏教文化にとても驚かされました。旅行で数日の滞在では分からないでしょう。スコータイから続く仏教国であるが故、生活に仏教文化が根差しているのだなととても感じることが出来ました。例えば、よくタイの人は「マイペンライ」と言います。個人的な意見ですが、これも仏教の精神が表れていると思います。意味はもうすでに述べましたが、私がこの言葉から想像するのは、自分の外での出来事を自分の中に一回入れるけど、受け流すようなイメージです。ある事についてタイの人が「マイペンライ」と言ったら、その事について再び話したり聞いたりしたことは無かったです。
 具体的な仏教文化だと、月に一回お坊さんの日というものがあります。その日は皆で徳を積みに行きましょう、という日で、何をするのかというと托鉢でした。お坊さんの鉢の中に食べ物やお金を入れ、有難いお言葉を聞きます。その時、外であっても履物を脱ぐことがとても新鮮でした。また、お坊さんの言葉を聞いている間に拝みながら、片手でコップの水をもう一方の空のコップに移します。正確ではないかもしれませんが、これは何か悪いものを削ぎ落とすような意味があるようです。コップが無い時は、その行為をしている友達に触れていれば同じ効果を得られるようでした。そして、終わった後その水は近くにある樹木にあげるというのが一連の流れでした。早朝、友達がお寺にご飯を持っていくというのでついていくと、同じような事をしました。早朝でも人が結構来ていて、地元の人の情報交換の場のような特徴もあるのかなと感じました。お坊さんの日でなくとも、お寺には行きましたし、朝歩いているお坊さんに托鉢もしました。朝街中を歩いているお坊さんが裸足なのには驚きました。だから尊敬の意を込めて私たちも靴を脱ぐのかと、一人納得しました。
 このグローバル社会において外国の方と接する時、その方の出身国の文化や慣習を知っていればコミュニケーションはとても上手くいくと思いますが、相手の出身地が東西南北どの地域なのか、どんな文化圏なのかを知っておけば更に良い関係を築けると思います。国として一括で見るのではなくて、相手の育ってきた地域にも興味を向ける。文化・慣習というものは国ごとで分けるよりも更に多くのものが、世界には数百の国や地域があるけどもそれよりも多い文化・慣習がある。タイでの生活を通してそう考えられるようになりました。将来、外国の方とお話しする機会があれば、その人の生まれ育ってきた土地のお話を聞きたいと思います。
 イサーン地方、北部タイ、南部タイ、そして首都バンコクを含む中部タイの人々はそれぞれアイデンティティーを持っていて、地元を大事にしている事が伝わってきました。私も地元川島町や、ここ鶴岡を大切していきたいと思いました。



朝街を歩く僧侶
6月先生の日
尊敬を表す学生とそれに応える先生

農学部  道祖土  博一 農学部  道祖土  博一

お祈り
コンケン大学農場 トマトの栽培