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地域教育文化学部 文化創造学科4年 佐々木 里菜

留学先:イギリス・マンチェスター大学
期間:2013年8月 〜 2014年6月

 私がマンチェスター大学を志望した理由は、実践的な異文化交流において語学力を向上させるためと、開発学関連の卒業論文のテーマについて考察を深めるためでした。これらを達成することは、日常生活はもちろんビジネスやアカデミックな場面で英語を使用することで将来の可能性を広げること、山形大学で学んだ教育と異文化交流について実践的な考察を加えること、また興味がある開発分野の仕事に将来関われるようになることにつなげられると考えていました。
 まず、語学力を向上させるため積極的に英語を日常の中で話すことを心がけました。日本で生活していると英語を読んだり聞いたり書いたりするよりも話すという機会が少なく、話すという力は現地で生活することで向上できるものであると考えたからです。重要であったのは友達づくりでした。英語圏で暮らせば自ずと英語に囲まれた生活ができると考えていましたが、実際は交換留学生の日本人と行動すれば会話は日本語でできますし、部屋に帰ってからもインターネットで日本語での会話が十分にできる環境でした。私は英語を話すためのせっかくの機会を無駄にしたくはなかったので、授業で韓国人の学生と知り合い、一緒に食事をしたり旅行したりしていました。おかげで、大学から離れても英語を話す機会は断然増え、理想としていた英語が中心の生活となりました。一番向上したと思うことは、話すスピードで、以前は話しながら文法や単語を確認していることが多かったのですが、対話の中で話す力を鍛えることによって、言いたいことが言葉にしてすぐに出るようになり、文法の間違いや単語を頭の中で探す作業が少なくなりました。同時に、授業でも長時間英語を聴いていることが苦でなくなったり、文献を速く読めるようになったり、学習面での効率も上がったと思います。
 もちろん友人と過ごすことで異文化交流もできましたが、実践的な異文化交流を学ぶ上で基礎となったのは大学の講義でした。特に受講していたSociology of Personal Lifeという社会学の講義が印象的で、仕事の面を除いた個人の生活に焦点を当てて、それぞれの時代における人の生き方の選択を性、結婚、家族、友人関係、公共の社会、政治などから受ける影響をもとに考察するというものです。強調されていたのは性に関するアイデンティティで、社会学において性は生物的ではなく文化や歴史の中でつくられたものであるという考え方には衝撃を受けました。日本で過ごしていると、異文化交流は国同士の交流という印象を受けがちですが、国や地域の文化だけでなく性や家族、友人を意識することで、異文化交流を個人と個人との交流であると学術的に考えることができました。
 また、地理学ではグローバリゼーションは世界で均衡に起こっているのかというテーマを考察しました。一説では、グローバリゼーションとは先進国の経済的な都合によってつくられた動きで、技術の導入などにより開拓されていく国や地域は限られ、地域間格差は縮まるどころか広がってさえいるとも言われています。例えば途上国に空港を建設するとなると経済的に見込みがある国だと国同士の地理的な距離は縮まる可能性がある一方で、経済的な成長に見込みがないとされた国はグローバリゼーションによってさらに他国への地理的距離を感じることもあります。また、社会学の講義では先進国優位のアウトソーシングによって広がる経済格差と労働や雇用形態について考察しました。私たちが安価で手に入れることができるものが増える一方、賃金搾取は長時間の肉体労働の強要が行なわれています。私は卒業論文で教育開発学についてのテーマを研究しており、これらの授業を受講することは途上国の教育開発を考える上でのヒントとなりました。
 マンチェスターでの約一年間は私を大きく成長させてくれました。マンチェスターという都市やマンチェスター大学のキャンパスには様々な国から人が集い、良い意味で、私は「外国人」や「留学生」として特別扱いされませんでした。大学では、語学力はさておき、一人の学生としての学術的な考えやエッセイを評価していただき、試験で高得点をとったことは自信になりました。多国籍な人々がいる空間での異文化交流は、国籍ではなく人々の考えや築かれた文化の中に当然のようにある「性」のような概念に注目し、それぞれの人の生き方を尊重するという考え方がありました。また、私たちは生活しているだけで、周囲の人々や海外の人々に影響を与えているということを学びました。特に途上国に頼って、先進国で暮らしている私たちの責任は大きいと思います。様々な異文化交流の形態について学ぶと同時に、異文化交流や教育を学んでいる者として将来何ができるのか改めて考えさせられました。

地域教育文化学部 佐々木 里菜
マンチェスター大学のSociology
50周年記念パーティにて
地域教育文化学部 佐々木 里菜
マンチェスターシティ
プレミアリーグ優勝パレードにて