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庄内町『加藤元助植物標本』デジタル基盤の構築 ~庄内町立図書館とティスコ運輸、山形大学の連携協力~

掲載日:2022.06.02

本件のポイント

  • 庄内町立図書館所蔵『加藤元助植物標本』の1,129点のデジタル化。
  • 本格的な機材を使用した植物標本のデジタル化を実施。
  • 植物標本は劣化や扱い時の破損の可能性が高く、一般公開が難しい 現状であったが、デジタル撮影し、公開基盤を整備することによって、 活用可能な資料として期待される。

概要

 今回、庄内町立図書館所蔵(館長:佐藤晃子)『加藤元助植物標本』のデジタル化に関する相談を昨年11月に実施。研究がスタートした。植物標本は、経年劣化や保存環境、使用頻度によって長期保存可能かどうかが左右される資料である。当資料は、1点ずつ植物が台紙に貼られている状況で、展示の度に額装していた。

 そのため、展示時に標本の際にどうしても負荷がかかる状況であった。また点数も1,000点を超えるため、その全体像を安易に共有、確認できる状況ではなかった。そこで、山形大学の阿部宇洋講師(学士課程基盤教育機構担当)と株式会社ティスコ運輸(本社:山形市、社長:菅原 茂秋)と協力し、『加藤元助植物標本』1,129点のデジタル化を実施した。

 ティスコ運輸はデジタルアーカイブ部門があり、一般文書のデジタル化機材の他に、学術的な資料のデジタル化が可能なスキャナを所有し非接触非破壊の撮影が可能な環境が整っている。

 1月から3月にかけデジタル化を実施し、総枚数1,129点の撮影を実施した。その際、搬出入を庄内町立図書館が担当、撮影をティスコ運輸が担当、監修、撮影指導を山形大学が担当した。

 4月初めに撮影行程が完了し、その後、データの整備を実施。完成したデータは、5月8日に庄内町立図書館へ寄贈された。今後、デジタル化された植物標本は、庄内町立図書館で資料管理のデータとして利用するほか、公開活用を検討している。植物標本の作成時代は明治40年(1907)から昭和33年(1958)年と51年であり、山形県内の植物が主で、なかには現在絶滅危惧種に認定されている植物標本もある。

 詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。

背景

 地域資料は、保存はされているが公開されていない資料や、公開したいが公開に耐えられない状況のものもある。今回の資料は植物標本1,129点であるが、昭和30年代に図書館の依頼により作成されたものとされる。中には採集から100年前の植物標本であるため種子や葉の剥落などもあり、出来るだけ動かさない形での資料把握が出来る様に早急の対策が必要であった。
 また、この植物標本は高精細での撮影が必要であり、資料デジタル化の技術を持つティスコ運輸の特殊な機材や技術を提供いただいた。

研究手法・研究成果

 山形県内の植物標本のデジタル化は、山形県立博物館ですでに実施されており、デジタルアーカイブズとして公開されている。また、植物標本は、全国各地のさまざまな学術機関でデータベース化されており、比較しやすい環境が整っている。

 加藤元助の植物標本はその多くを山形県立博物館が所蔵しており、もとは、山形大学農学部にあった。2002年に山形大学から山形県立博物館に移管されている。今回、加藤元助植物標本がデジタル化されたことにより、Web上での植物標本の結合や比較などの基礎が出来たことになる。

(科研費番号:基盤研究費(A)19H00550  アーカイブズによる「地域力」再生と持続的社会の基盤創成研究)

今後の展望

 山形県内にはデジタル化すべき資料が存在するが、技術や機材の問題で県外への委託や研究者が独自に実施することが多い状況であった。その際に課題となるのが資料の搬送や撮影の精度になる。加藤元助植物標本は庄内町出身の郷土の資料で、庄内町では重要な資料の一つである。いままで図書館でしっかりと管理されていたこともあり、比較的安定した資料であったが、経年劣化の影響は避けることが難しかった。その点、記録化をしたことにより、展示以外での資料調査や展示品の選定時など負荷がかかる状況においてリスクを最小限に抑えることが可能になった。さらに、撮影場所も県内と、運搬時リスクも少なく、また撮影精度が高いためそのままデータベース等でも活用出来る状況である。

 今回の研究は県内での専門機材を使用したデジタル化の拡大と実践活動であり、博学地(博物館、大学、地域)連携も期待出来る。

用語解説

1.加藤元助(かとうもとすけ)(1885~1976)…庄内町廻館出身の植物学者。
2.写真はNo.507 ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon) 絶滅危惧種レッドデータブックIBにランク

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