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美味しいジビエ醤油、完成! ~消費者ニーズに適した醤油をめざして~

掲載日:2024.03.07

本件のポイント

  • ヒグマ低利用部位「スネ肉」から「美味しいジビエ醤油」を初めて開発。
  • 特殊な機器類を使用することなく製造可能で、品質は現代消費者ニーズに最適。
  • ジビエの未利用個体・部位の有効利用を考える契機となる。

概要

政府は野生鳥獣による農林業被害対策の一環として、野生鳥獣肉ジビエの利用拡大を急いでいるが、農林水産省の掲げる利用目標量(2025年度約4000トン)には到底及ばず、取り組みを強化している。外食・小売・農泊・学校給食等への利用や新たな加工品開発による需要拡大等は、農作物被害の低減ならびに地域所得の向上にも繋がると期待されている。一方、捕獲数に対してジビエ利用率は低く、未利用個体ならびに部位を活用することがジビエ供給量の増加に繋がると考えられている。本研究では、農学部4年武田梓さん(食品創製科学研究室)が、ヒグマ低利用肉「スネ肉」を用いた肉醤開発を試みた。その特徴は、①獣臭を感じられず、うま味が強く美味である、②塩分濃度が6.6%と顕著に低い、③色が薄く(褐変が進行していない)、様々な料理に利用可能である、④不可欠アミノ酸含量が多く、栄養価が高い、⑤GABAやカルノシンなどの機能性成分を含む、⑥抗酸化性、ラジカル消去活性、血圧上昇抑制、抗炎症・抗アレルギー性などを有し、健康促進に寄与。現代の消費者ニーズに適した美味しい醤油である。

 詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。

背景

近年野生鳥獣による農林水産業被害が深刻な問題となっている。最近では都市部まで及び広域化しており、全国的な問題である(特に今年度はクマの出没ならびに被害が頻発した)。被害防止等を目的とする捕獲が中心に行われており、これらを地域資源として利用し、農山村の所得とすることが重要であると考えられている。捕獲鳥獣の一部はジビエとして利用されているが一部地域に留まり、多くは埋設・焼却処分等により処理されている。SDGs(国際目標11、12)の観点からも重要である。

研究手法・研究成果

本地域に根ざす「発酵文化」を取り入れて、米麹(山形県産もち米:ひめのもち)と食品用酵素を活用してもろみを仕込み、33℃-2ヶ月間短期発酵・熟成させた。火入れ、おり引き後、肉醤とした。選抜した肉醤は、①獣臭を感じず美味、②低塩(塩分6.6%)、③色が薄く、様々な料理に利用可能、④高い栄養価、⑤幅広い生体調節機能を有し、食味と健康を意識する現代消費者のニーズに最適である。

今後の展望

人間と野生動物との共生を考えるきっかけにしたい。

※用語解説

1.ジビエ:狩猟により食材として捕獲された狩猟対象野生鳥獣ならびにその肉。
2.GABA(γ-アミノ酪酸):アミノ酸の一種であり、抑制系神経伝達物質。血圧上昇抑制、疲労感軽減、
  ストレス緩和、睡眠の質の改善など、様々な機能性を示す。
3. カルノシン:β-アラニンとヒスチジンからなるジペプチド。生体内ではラジカルのスカベンジャー(捕捉剤)
  として働き、酸化的ストレスから保護する。

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