ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2024年04月 > 学長定例記者会見を開催しました(4/4) > 魚醤の食文化―飛島魚醤からはじめるー ~山形の魚醤を追う学術ルポ 「研究者、魚醤と出会う。-山形の離島・飛島塩辛を追って」刊行~

魚醤の食文化―飛島魚醤からはじめるー ~山形の魚醤を追う学術ルポ 「研究者、魚醤と出会う。-山形の離島・飛島塩辛を追って」刊行~

掲載日:2024.04.04

本件のポイント

  • 近年の地球温暖化による海水温の上昇や乱獲によってイカが不漁になり、さらには島民の高齢化も相まって途絶えようとしている飛島魚醤(塩辛)。
  • 白石哲也准教授・松本剛教授・奥野貴士教授により、物質文化・人と文化・生化学を3つの柱に飛島魚醤を捉え、保存していく取組みを始めました。
  • 写真家や編集者、料理人などもチームに加わり、今後、研究チームでは国内外の魚醤文化について研究を進めていく予定です。
  • このたび、本研究に関する学術ルポ「研究者、魚醤と出会う。-山形の離島・飛島塩辛を追って」が刊行されましたのでお知らせします。

概要

 飛島魚醤(塩辛)をご存じでしょうか?山形県の離島・飛島では、江戸時代から現代まで豊富なイカ漁に支えられ、大量のイカを用いた魚醤塩辛を作る食文化が存在します。しかし、近年の地球温暖化による海水温の上昇や乱獲によってイカが不漁になり、さらに島民の高齢化も相まって、魚醤づくりが途絶えようとしています。そこで、白石哲也准教授・松本剛教授・奥野貴士教授により、物質文化・人と文化・生化学を3つの柱に飛島魚醤を捉え、保存していく取組みを始めました。加えて、この取組みには、研究者だけでなく、写真家や編集者、料理人の方などにもチームに加わって頂いています。これは、一部の研究者だけでなく、魚醤を通じて広く社会一般の方々と繋がることを強く意識しているためです。この取組みを基礎として、今後、研究チームでは国内外の魚醤文化について研究を進めていく予定です。
  このたび、本研究に関する学術ルポ「研究者、魚醤と出会う。-山形の離島・飛島塩辛を追って」が刊行されましたのでお知らせします。

 詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。

研究成果

 本研究は、2022年公益財団法人ロッテ財団第9回奨励研究助成(B)「魚醬の起源を探る-日本人はいつから魚醬を食べるようになったのか-」(代表:白石哲也)、2023年度秋田県ジオパーク研究助成金「「飛島魚醤」の食文化史」(代表:白石哲也)と連続で採択されました。また、第2回山形大学異分野交流学会(2023年8月29日)において学長賞を受賞しました。

今後の展望

 現在YU-COE(S)公募研究として、飛島塩辛のルーツである「いしり」の現地調査を能登で行う予定です。そして、これまでの研究で明らかになった仕込み方法をもとに新しい魚醤造りを行い、それを事業化することで、飛島や能登で消滅の危機にある魚醤および発酵調味料文化を振興しようという計画です。これには山形大学及び水産研究所の共同研究として、飛島の方々にも参加いただき、「最高に美味しい魚醤」を造ります。魚醬は、ただ製作方法を保存したところで、それは何も意味をなさないし、次世代には繋がりません。そこには、人とモノ(道具)、そして地域環境と社会があります。それらが有機的に繋がることで、本当の記録、保存となります。また、それを伝達していくには、閉じた世界(研究者や製作者)を超えて、外の世界の人々と繋がることが必要不可欠です。本研究を通して、変容はあるかも知れない(あって良い)が、その本質は失われず、現代的価値と伝統的価値の両者を持った新たな価値を魚醤に持たせることが可能となり、魚醬が次世代に繋がっていくことが期待されます。

関連リンク

  • シェア
  • 送る

プレスリリース一覧へ