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山形大学
近年、災害が激甚化、頻発化するなか、自助・共助を担う一般市民の防災実践力の向上に対する社会的関心が高まっている。そこで、災害環境科学研究ユニットは、一般市民の地域防災力向上を目的として、公開講座を企画・開催した。
災害時避難所は、大地震や豪雨などの自然災害時に命を守るための地域防災の鍵となる社会的な仕組みだが、課題も多く、大きな災害のたびに避難所で体調を崩す人や災害関連死に至る人があとをたたない。災害時には役場・警察・消防・自衛隊などの公務員は被災者救助・被害状況把握・治安維持が優先され、避難所には手が及ばないため、避難所の運営は避難者自身が行うという‘自主防災意識’が地域住民の間に根付いているかどうかが、いざと言う時の成否の分かれ目になる。
このような社会的な背景のもと、自主防災の担い手を育成することを目的に全国規模で防災士養成事業が展開されている。この事業は日本防災士機構により2003年にスタートし、山形県は2015年から参加、県庁が主管して防災士養成研修講座が毎年実施されている。この講座の内容は座学による理論中心の講話であり、体験型のプログラムは組み込まれていない。
そこで、地域防災力向上セミナーでは、発展的な内容のオンライン講義に加え、体験型の避難所ワークショップによる実践的な学びの場を企画し、12月9日に小白川キャンパス第一体育館において「避難所設営ワークショップ」を開催した。参加者は避難者役となって家族にみたてた5人ずつのグループに分かれて段ボールベッドの組み立てや簡易防寒シート、災害用テント、災害用即席食品などについて体験し、実感した避難所運営の課題について検討を行った。実施後のアンケートでは、より高度な知識や実習内容を希望する意見も頂き、今後、それらをふまえて、地域との連携を深めつつ、実習内容を充実させていきたいと考えている。
山形大学学術研究院(理学部) 教授 本山 功