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大崎教授の海外駐在記「ガジャマダ大学駐在記4(3)」

 

 犬を連れてきています。犬をインドネシアから日本に連れて帰る場合、帰国3週間前までに、インドネシア農務省動物検疫課に、動物輸出許可の申請をせねばなりません。申請書類の中に、滞在地のジョクジャカルタ特別州農務部の発行する、「犬の国内移動許可書」が必要となります。その国内移動許可書を申請するためには、獣医の発行する「犬の健康証明書」が必要でした。

  8月29日に、ガジャマダ大学獣医学部の動物病院に行きました。ガジャマダ大学のメイン・キャンパスは150ヘクタールありますが、18ある各学部は、それぞれ、道と垣根に囲われた独自の学部キャンパスを持っています。動物病院は、昨年までは、メイン・キャンパスの南西隅にある医学系学部キャンパスの集中している地区にありましたが、今回、新動物病院が建設され、旧地から最も離れた北東隅にある農学系学部キャンパスの集中している地区の獣医学部キャンパス内に移転していました。

  動物病院の建物は新しくなっていましたが、受付の女性2人は、この4年間代わっていませんでした。私と犬が玄関ロビーに入っていくと、彼女たちは犬の名前を覚えていて、ニコニコしながら犬の名前を呼んでくれました。実は、日本に到着前の10日以内に、もう一度、獣医による健康診断を受けなければなりません。これは、日本入国時に日本の動物検疫所に「犬の健康証明書」を提出する必要があるからです。帰国前に獣医に二度行かなければならないのは、私の知る限り、インドネシアだけです。

  今日の日本語クラスに、米沢市出身という立命館大生が来ました。昨年一年間ガジャマダダ大学に留学していて、日本語クラスによく参加したそうです。今回は、夏休みを利用しての完全なバカンスだそうで、日本語クラスに熱心に参加している、近くのアカコム工科大学の学生の借家に1か月間滞在するそうです。彼は、この間の学生達の日本語力の伸びに驚いていました。

  特に、驚いたのは、前回紹介した、7か国語を学ぶ社会学部のヘリ君の作文だそうです。ヘリ君はデカルトが好きで、デカルト風にすべての存在を疑ってかかります。私が彼に注目したのは、私の専門とする進化生態学の概念、例えば、生物の本質は、自己の遺伝子を利己的に増殖することだ、ということをよく理解していることです。それを踏まえて、実存を否定できない自分の生きる目的は、他の生物とは異なり、生きた痕跡を残すことだと言います。

  月曜日の朝に、ヘリ君に、週末は何をしたかを問うと、「いつもと一緒です」と言います。午前4時まで勉強し、モスクに出かけて祈り、午前5時に就寝し、9時に起きて、10時に日本語クラスに出席し、というものです。しかし、勉強一本鎗の単調な生活というわけではなく、自ら脚本を書き映画を製作したり、小説を書いたりと、多才ぶりも発揮しています。ただ、彼の作るもの書くものすべてが悲劇です。シェークスピアを引用し、悲劇こそが人生の本質なのだと、彼は説きます。小さな扇風機の回る暑い教室の中での話です。

  私のよろず相談「英語論文の書き方」が大学院農学研究科の講義になりました。木曜日の2時限目で、3回を予定しています。

獣医学部附属動物病院の画像
獣医学部附属動物病院

日本語クラス
(現在の登録者は112名。後列左から3人目がヘリ君)の画像
日本語クラス
(現在の登録者は112名。後列左から3人目がヘリ君)