ホーム > 国際交流・留学 > 海外拠点情報(駐在記) > ジョグジャカルタ海外拠点(インドネシア) > 大崎教授の海外駐在記「ガジャマダ大学駐在記5(5)」

大崎教授の海外駐在記「ガジャマダ大学駐在記5(5)」

 山大から来たお客さんが、「椰子の実がなっている椰子の木を見たことがない」と話すので、私は、すぐ近くの椰子の木を指差して、「ほら、あの椰子の木に実がなっている」と言いました。側にいたインドネシア人たちが、何を話しているのだ、という顔で見ているので、「あれがパームツリーだ、と説明している」と告げると、イピ先生が「あれはパームツリーではないよ」と言いました。

 和英辞典で「椰子」と引けば「palm」とあり、英和辞典で「palm」と引けば「椰子」と出てきます。そして、木の上に実っているのはイメージ通りの大きな椰子の実です。「じゃあ、あの木は何なのだ」とイピ先生に尋ねると、「ココナッツツリーだ」と言い、日本人がイメージする椰子の実を指差して、「ココナッツの実がなっているだろう」と言いました。

 ココとはスペイン語で、頭とか頭蓋骨という意味だそうです。確かに、ココナッツツリーの実は、頭蓋骨のように見えます。パームツリーの実は、もっとずっと小さくて、その小さな実からパームオイルを取るそうです。私達が一般に「椰子の実(パームツリーの実)」と言っているのは、「ココナッツの実(ココナッツツリーの実)」のようでした。

 しかし、その場に居合わせた、ガジャマダ大学の植物病理学専攻の女子院生が、「ココナッツの実を椰子の実と呼ぶのは、間違いではないと思う」と言いました。パームツリーもココナッツツリーも、同じヤシ科の植物(英名palm tree)だからです。植物の分類単位では、科の下が属、属の下が種で、パームツリーとココナッツツリーは、同じヤシ科の別属の種の総称で、前者がアブラヤシ属の種、後者がココヤシ属の種です。日本に自生するシュロもヤシ科シュロ属の種です。その点で言えば、シュロも椰子になります。

 日本語クラスの学生達に、日本人のイメージする椰子の実は、椰子の実かココナッツの実かを改めて問うたところ、全員が、ココナッツの実だと言いました。私はそれまでココナッツに対する具体的なイメージはなく、ナッツの1種で、小さな実ではないか、と漠然と思っていました。ナッツとは硬い皮や殻に包まれた小さな食用の果実や種実の総称です。しかし、ココナッツの実は大きくて、ナッツのイメージとは違いました。インターネットで調べてみると、ココナッツはナッツと呼ばれているが、ナッツではない、とありました。

 ココナッツの実は、内部に大きな空洞があり、水が溜まっています。これは液状胚乳で、ココナッツジュースと呼ばれています。観光地では、ココナッツの実の上部を切って空洞にストローを差し込み、ココナッツジュースを飲ませてくれます。空洞の内壁に厚さ約1センチの白い層、固形胚乳がへばりついていて、この固形胚乳を削り取って乾燥させたものをコプラと言います。コプラをおろし金でおろして得た、白いおろしクズがココナッツです。

 ココナッツケーキは、ケーキの上にココナッツをまぶしたものです。ココナッツに水を足して弱火で煮て、粗い目のある袋状の物に入れて、こして搾り取った白い汁がココナッツミルクです。白い汁なのでミルクと呼んでいますが、実際のミルクとは関係ありません。ケニアのモンバサ近くで食べた、ココナッツミルクで煮たサバの味を思い出しました。このココナッツミルクをさらに精製して油成分だけを取り出したのがココナッツオイルです。

ココナッツツリー。大きなココナッツの実がなっています。の画像
ココナッツツリー。大きなココナッツの実がなっています。

パームツリー。西ジャワでは木は大きくなるが、実はほとんどならないそうです。 の画像
パームツリー。西ジャワでは木は大きくなるが、実はほとんどならないそうです。