写真

校長室だより

「133年の歴史を踏まえ、今、そしてこれから 私たちがすべきことを考えよう。」

5月20日 創立133周年記念式 校長の式辞

今日は、開校記念日、私たちの学校の誕生日です。学校ができたのは明治11年で、私たちの学校は今日で133歳になりました。この誕生日のために、榎森後援会長様、鈴木PTA会長様はじめ、たくさんのお客様がお祝いにおいでくださいました。ありがとうございます。

さて、私は、今年の開校記念日にあたり、この附属小学校で、私たちが、今、そしてこれからしなければならないことについて、改めて考える必要があると思いました。それは、3月の東日本大震災がとても大きな災害で、たくさんの人が命を失なったこと、さらに、原子力発電所の事故により放射能の問題が深刻なこと。そしてこれらのことは、これから生きていく私たちにとって、10年後、20年後、あるいはそれ以上つづくかもしれない大きなものであり、今、私たちは日本という国の、歴史上の大きな変化の時期を生きているのでないかと思うからです。

附属小の133年間をふり返ると、日本の歴史が大きく変わる時期が2つありました。1つめは、私たちの学校ができた明治という時代の初め頃です。すべての子どもが字が書けて本が読める、数が数えられるようにしたいということで、全国に小学校がつくられました。しかし、最初は、教科書も少ない、先生も整わないという学校もたくさんあり、大変な苦労がありました。

2つめは、昭和20年前後の頃です。日本は中国やアジアの国々、そしてアメリカと何年もの間、戦争をしていました。そしてその戦争に敗れ、子どもを含め300万人以上の人が亡くなりました。その後、新しい国づくりが始まり、2度と戦争はしないという考えのもと現在の憲法というきまりがつくられました。小学校は6年間、中学校は3年間となり、男子と女子が一緒に学ぶようにもなり、現在の附属小の形ができました。本日おいでの榎森同窓会長さんが、本校で学ばれていたのがその頃とお聞きしています。

明治の初めと昭和20年前後という2つの、日本の歴史が大きく変わるときに、この附属小の子どもたちは何を大事にしていたのでしょうか。どんなことを考えて生活していたのでしょうか。私は思うのです。きっと、それぞれの時代を、新しい日本をつくっていく大人になる、それぞれの社会の中で役立つ人間になるという目標をもってここで学び、生活を積み重ねたのだろうと。そして結果としてその後の明治という時代が、昭和という時代が築かれていったのであろうと。そしてその結果として、今の附属小学校が、今の日本が出来上がってきたのだと思うのです。

では、平成23年という今、新たな、しかもとても大きな課題が目の前に、そして未来に立ちはだかる今、この附属小にいる私たちのやるべきことは何だろうと、私はずっと考えていました。

そして私は、4月の本校入学式での、6年生の○○さんの新入生を迎える言葉の中に、その答えを見つけることができました。○○さんの「大震災の後に私たちがすべきことは、この学校でしっかり学ぶこと、豊かな心を育てること、健やかな体をつくること、そして社会の役に立つ大人になることです。」という言葉です。その言葉を聞いて、私は、まさにそのとおりだと思いました。そして、とてもうれしくもなりました。どんな課題が目の前にあろうとも、それを乗り越えてきた先輩たちと同じように、社会の役に立つ大人になるという目標を持って、この附属小で学びつづけ、生活を積み重ねていこうとしている姿を、地道だけれど、確かなまなざしと決意をもった姿を、この附属小の中に、今の6年生に見ることができたからです。

○○さんの言葉につなげて話をします。「学ぶ」というのは「考えつづける」ということです。常に自分のこととして考えつづけていくことです。さまざまな情報をどう判断するかを考えつづけるということです。「心をそだてる」というのは、「思いやり」の心をもちつづけるということです。家族に対して、友だちに対して、社会全体に対して、そして自分自身に対してです。どんなきびしい場面においても思いやりをもちつづけ、それを行動にうつすということです。「体をつくる」ということは、「自分のいのちを大事にする、守りつづける」ということです。丈夫なからだをつくっていくこと、どんな危険からも自分で自分の身を守れるようにするということです。

私は、この3つのことを、この学校でしっかりと積み上げていくことでこそ、今、この国に課せられている大きな課題を考えていくことができるようになるのだと思っています。その中でこそ、これからの社会の中での自分の役割を正しく見出すことができるようになり、この国をつくっていく人間となることができるのだと思っています。

ここにいる684人が、今年1年間、6年生のひのき学年を中心に、この附属小学校で、毎日、物事をしっかり考えつづけこと、思いやりの心をもちつづけること、自分のいのちを大切にしつづけることが、今、すべきことなのです。それをつづけることで、私たち一人一人が、これからの社会で役に立つ人間になるための、本当の「生きる力」を身につけていくことができるのです。そしてそれが、この学校の先輩たちと同じように、山形大学附属小学校を、これからの日本をつくることにつながることになると思っています。浮つくことなく、足を地につけて、これまでと同じように、地道に3つのことに取り組んでいきましょう。