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わたしたちの取り組み2023

1 わたしたちの子ども観と目指していること
 わたしたちは、これまでの研究を通して、「子どもは、事象(人・もの・こと)との関係の中でよりよい自分になりたいという思いや願いをもっている」と捉え、子どもの学びを洞察し、働きかけてきた。子どもの学びを洞察するとは、子どもの具体的な姿をもとに、少しでも子どもの内面に近付き、子ども理解を深めることである。また、これまでのその子どもの学びをもとに、これからの学びの可能性について見通しをもつことである。
 子どもは、事象との関係の中で、思いや願いをもち、それを実現させるために出合う問題をさまざまな方法で解決しようとする。そして、事象に対する自分のとらえを更新していく。わたしたちは、このような子どもの歩みを「子どもの問題解決」と呼び、よりよい自分に向かうために必要なことであると捉え、大切にしてきた。
 わたしたちが望んでいるのは、子どもが自ら問題解決を進めていくことができるようになることである。事象と出合った時に、自身の思いや願いによってさまざまな見方・考え方を働かせて事象に関わり、問題解決を進める子どもを育てたい。そのような子どもが、持続可能な社会の創り手として、これからの時代を豊かに生きていくことになると考えている。そこで、わたしたちは、2022年度から次の研究主題を掲げている。
自ら問題解決を進める子ども
2 わたしたちの取り組み2022から見えてきたこと
(1)子どもの洞察を高めることにつながった資質・能力の明確化
 2022年度、わたしたちはそれまでに続けてきた子どもの洞察をもとに、学校教育目標「『太陽の子』本質を見極める」「『北国の子』強い意志をもつ」「『日本の子』高い価値を目指す」が示す子ども像を「山形大学附属小学校資質・能力系統表」(以下、資質・能力系統表)に整理した。これは、子どもの実態とわたしたちが育てたいと考えている「自ら問題解決を進める子ども像」を照らし合わせて議論し、育みたい資質・能力を発揮した子どもの具体の姿を、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性の3つの柱に即して、低・中・高学年の3段階で系統的に整理したものである。(ページ下部参考)
 資質・能力系統表を土台に、学級カリキュラムの作成と運用、教科・領域の単元構想、各種学校行事を行った。育みたい資質・能力を明確にして共有したことで、わたしたちの子どもの姿を洞察する視点が定まることになった。併せて、系統表を根拠として子どもに対するより具体的な働きかけを考えることにつながった。
 2022年度の取り組みから、子どもの姿を洞察したことから目指す子ども像(資質・能力系統表)を設定すること、それとは逆に「資質・能力系統表」で設定した目指す子ども像から実際の子どもの姿を洞察すること、これらを繰り返していくことが、子どもの育ちを支える上で欠かせないと考えた。なぜなら、わたしたちは、子どもがどのような資質・能力をどのようなレベルで発揮して問題解決を進めているのかを洞察し、本校で育成を目指す資質・能力の内容を更新し続けていく必要があるからである。このように資質・能力系統表を教職員で共有することが、本校で目指す子どもの姿を具現化するための系統性を意識した働きかけをすることにつながっていくと考えた。
 2022年度の取り組みを通して、さらに考えていきたいことが生まれた。それは、わたしたちが資質・能力系統表に示している「各教科で扱う概念」を意識した各教科・領域の学習をつくっていくことである。わたしたちは、子どもたちがこれからの人生で出合う問題を解決し、思いや願いを叶えていくためには何を身に付ける必要があるのかを議論し、整理していく必要があると考えている。
 そのためには、より一層教科内容研究を進め、「育てたい子どもに迫るために、○○科が担うものは何か」を考え、これまでの取り組みに厚みをつくっていくことが必要になると考えた。
(2)子どもが見方・考え方を働かせることの大切さ
 わたしたちは、子どもが見方・考え方を働かせて学ぶことは、各教科等を学ぶ本質的な意義に向かっていくことだと考えて実践に取り組んできた。これまでの実践から、授業者が教科内容研究をもとに単元を通して子どもが働かせていく見方・考え方をはっきりとさせることで、単元に柱ができ、子どもの学びを洞察することで柔軟な学習活動を展開することができるようになってきたと考えている。また、各教科等を学ぶ本質的な意義について考え、その意義に向かうためには子どもがどのような学びを進めればよいのかを教科の系統性や単元などの大きな視点で捉えることの重要性を確認することができた。
 本誌の「各教科・領域実践編」には、単元や領域で子どもが見方・考え方を働かせて学び、その歩みに合わせて単元を構成していったわたしたちの実践がある。その中で、今後取り組みたいことも生まれた。それは、見方・考え方を働かせることを目的化するのではなく、子どもが見方・考え方を働かせて学んだ結果、どのような質の高い概念を身に付けることができたのかを実践を通して示していくことである。単元の終末に、子どもが事象との関わりの中でどのようなことを考え、どのような言葉を使って表現するのか、具体的な姿を思い描くことができるようにしたい。
 この取り組みは、(1)で示した、「各教科で扱う概念」を意識した各教科・領域の学習をつくることにつながるものである。その教科・領域に特有な見方・考え方を働かせて形成させる概念が定まれば、子どもが学ぶたのしさを味わう質の高い学習をつくっていくことができると考えた。
 一方で、2022年度の校内での授業研究会では、新しい問題(事象)に出合った子どもたちが、授業者が想定したものではない見方・考え方を働かせて問題解決を進める姿があった。その子ども(A児)は、A児らしい見方・考え方を働かせてこだわりをもって真剣に学び始めていた。しかし、A児はその後、授業者がその単元で働かせることを期待した見方・考え方を働かせて問題解決を進めるようになった。そこには、2つの背景があった。1つ目は、授業者がその教科ならではの見方・考え方を他の単元でも繰り返し使って鍛えることに取り組んでいたことである。2つ目は、A児と異なる見方・考え方を働かせていた友達(B児)との関わりである。A児は、学習の途中にB児と関わり、自分が働かせているものとは違う見方・考え方にふれた。その時に、自分で働かせる見方・考え方を切り替えていた。
 このA児の学ぶ姿から、考えさせられることがあった。わたしたちは、その子どもが問題に出合った時に直感的に働かせる見方・考え方を認めているかということである。子どもが、学びたいと選んだところから学ぶ自由度を、わたしたちが認めていくことが必要だと考えた。また、子どもが働かせる見方・考え方を、友達との学び合いや教師からの働きかけを通して、自ら選択し、使い分けることができるように寄り添うことが必要だと考えた。
3 わたしたちの取り組み2023で大切にしたいこと
 子どもが問題解決を進める中で資質・能力を育んでいくために、わたしたちは子どもを洞察したことにもとづいた働きかけをすることがより一層重要になってくると考えている。今年度は、資質・能力系統表で目指す子どもの姿の実現に向けて、以下の3点を意識して取り組みを進めていきたい。
(1)子どもの姿を洞察したことから得られたことと目指す子ども像を繰り返し照らし合わせる
 わたしたちは、子どもの問題解決を支えるために、子どもの姿を洞察することを大切にしてきた。
 資質・能力系統表2023年度版は、わたしたちの取り組み2022の実践で見られた子どもの学びの姿の洞察をもとに更新したものである。この資質・能力系統表を土台に、今年度の学級カリキュラムの作成と運用、教科・領域の単元構想、各種学校行事等を進めていく。そうすることで、わたしたちが同じ方向を目指し、子どものよりよい育ちを組織的に支えていくことにつながっていくと考える。
 そして、年間を通して子どもを洞察して見えてきたことから目指す子ども像「資質・能力系統表」を見直すこと、それとは逆に「資質・能力系統表」に設定した目指す子ども像の視点から実際の子どもの姿を洞察することを通して、目の前にいる子どもたちに育みたい資質・能力の内容をわたしたちで共有することができるようにする。これは、わたしたちの子どもの姿を洞察する力と子どもに対する働きかけの質を高めることにつながり、資質・能力の育成を力強く支えるものになると考えている。
(2)各教科等の見方・考え方を働かせて(鍛えて)問題解決を進めた先にあるものを考える
 2022年度の取り組みでは、授業者が教科内容研究をもとに単元を通して、子どもが働かせていく見方・考え方をはっきりとさせることで、単元に柱ができ、子どもの姿を洞察したことをもとに柔軟な学習活動を展開することができるようになったという成果があった。
 そこで、2023年度は、引き続き、子どもが事象と関わる中で、見方・考え方を働かせながらどのように問題解決を進めていくのかを捉えていくことを大切にする。そのためには、教師が「その単元や領域で出合う事象に対して、子どもが見方・考え方をどのように働かせるのか」を予測し、子どもの歩みに合わせて単元を構成していく必要がある。見方・考え方を考えるときには、各教科等を学ぶ意義や、学習内容における系統から迫ることに取り組みたい。その上で、授業実践を行い、子どもが見方・考え方を働かせながら問題解決を進める姿から、各教科等の学習において働かせていくとよい見方・考え方の実像についても議論していきたいと考えている。
 また、2022年度の取り組みの中で話し合われた、見方・考え方を働かせて学んだその先にあるものにも目を向けていく。これは、子どもが事象に対するとらえ(概念)をどのように更新することを目指すのかということを、これまで以上に明確にしていくことであると考えている。そこで、2023年度は、子どもが、見方・考え方を働かせて学んだ結果、どのような質の高い概念を習得することができるのかを実践で示していきたいと考えている。単元の終末まで問題解決を進めた子どもが、事象との関わりをどのように考え、どのような言葉を使って表現することを目指すのかを考えたい。これは、子ども一人だけでは到達することができない、仲間や教師がいて到達することができるような質の高い授業を目指すことでもある。
 このようにして、子どもが見方・考え方を働かせ鍛えていくことができる単元をつくり、実践をする取り組みが、ゆくゆくは、子どもが学習や生活の場面において出合う事象に対して見方・考え方を自在に働かせて自ら問題解決を進める姿となって表われていくことになると考えている。
(3)子どもも教師も夢中になることができる学びをつくる
 (1)〜(3)の土台は、子どもも教師も真剣にたのしむことができる学びがそこにあることである。
 教師は、深い教科内容研究にもとづいて子どもが多様に示す学びの方向性をたのしみながら受け止めることができるようにしたい。また、見方・考え方を働かせてその子らしく学びを進めることができるよう、わたしたちも子どもも自由度と遊び心をもって学びを進めていくことを大切にしていきたい。
 教師と子どもが一緒に問題解決をたのしみ、夢中になることができる学びをつくっていきたいと考える。
資質・能力系統表
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