校長室だより
平成28年度 全校朝会C
全校道徳授業A “ことば”と“こころ”
平成28年11月2日 校長 日伸哉
全校道徳授業は、6月30日の第1回に引き続き、2回目となりました。
授業の前には、全員で「ぼくらの秋まつり」を元気に歌いました。体育館の真ん中には「和太鼓」。音楽担当の教員二人が、威勢のよいリズムを響かせてくれ、活気のあるひとときとなりました。感動。(「ぼくらの秋まつり」は、作詞も作曲も本校教官OBで、昭和63年に完譜された名曲です。)
現在、道徳教育推進教師や担任による日常の「道徳」授業を要として、「よりよく生きること」を考え、「くらしにおける問題解決」に取り組み、全校道徳授業を一つの節目として、教育活動全体で道徳教育を進めています。
全校道徳授業のメリットは、全校児童が「時と場」を同じにして、「同じ場面」を見て「同じ言葉」を聞きながら、心を動かし思考する点にあります。
以下、「道徳教育推進教師」による全校道徳授業Aの記録です。(校長談)
おはようございます。今日は全校道徳の2回目です。今日の道徳は、みなさんと一緒にことばとこころについて考えてみたいと思います。
その前に、道徳の時間ではどんな学習をするか確認をしたいと思います。
道徳の授業は様々な授業のやり方がありますが、数多く行われるのが、道徳の本に書かれてある資料を読んでそれを通して、人として大事なことについて考える時間になります。
今日は、全部で7つの資料を通して、大事な心について考えてほしいと思います。
それでは、最初の学習をしましょう。
最初は4つの資料で考えてみます。
〔場面1〕
クラスの友達が集まって、何か話をしています。ある子が、「春男くんって、なにかににてない?」と話しかけています。
この子の言い方は強いので、他の子は言うことを聞くことが多いようです。
〔場面2〕
そして、「春男くんって、サルに似てるよな!」と言いました。
〔場面3〕
すると、聞いていた周りの子はいっせいに、「似てる!似てる!」と大声で言い、みんなで大笑いしました。
〔場面4〕
それに合わせるように、他の子は、「春男くんは、サルだ!モンキーベイビーだ!」と大声で言いました。それを聞いて、また周りの人は、大声で笑いました。
〔場面5〕
それを聞いていた春男くんは、一瞬くらい顔をしましたが
〔場面6〕
自分から、「キッキー!キッキー!」と大声で叫び、
サルの真似をしてみんなを笑わせてから、自分の席に着きました。
〔場面7〕
次の日の朝休み、このクラスではこんなことが起きていました。誰かが、「おい!サル!サル!」
他の子が、「おい!春男!お前が呼ばれているぞ!返事をしろよ!」周りの子は、その言葉と様子を見て、おかしくて仕方ありませんでした。
みんなが楽しく笑っています。
〔場面8〕
みんなの様子を見た春男くんは、一瞬くらい顔をしましたが、昨日と同じように「キッキー!キッキー!」と大声で叫びました。
春男くんの様子を見て、周りの子はまた楽しくなって、「サル!サル!」と大声で言ったり、大笑いしたりしました。その笑い声はだんだん大きくなっていきました。
みなさんは、この出来事をどう思いますか。 3つの点から考えてみたいと思います。
まず初めに、そこに登場する人は、どんなことを思っているか考えてみましょう。
春男くんはどんなことを思っていると思いますか。まわりの人はどうでしょうか。みんなが笑っていますが、本当に楽しい思いをしているでしょうか。
または、全員が楽しい思いをしているでしょうか。多くの人は楽しんでいるけど、一部の人、もしくは一人の人は、本当はいやな思いはしていないでしょうか。
というように、想像する力をはたらかせて、気持ちを考えてみて下さい。
次に、そこにはどんな問題があるか考えてみましょう。
最初はばかにする気はなく、みんな楽しいと思っていたのに、とか、気づかないうちに、とんでもないことになっていた、など、いろんなことが考えられるのではないでしょうか。
そのときに大事にしてほしいのは、だれかを責めるのではなく、自分も同じ思いをするかもしれない、もしくは、自分もそうするかもしれない、あるいはすでにそうしたかもしれないと考えてほしいということです。
最後に、どうすればよりよく解決することができるか、考えてみましょう。
自分が、このクラスの一員だとして、誰もが気持ちよく過ごすためにはどうするか、考えてみましょう。みんなが気持ちよく過ごせるクラスになるために、みんなで考えることが大事だと思います。
決して人任せにしないで、自分で自分のクラスをよくするために考えて下さい。
今のお話の中にある問題も、その解決も、校長先生から紹介していただいた、金子みすずの詩の中にあるのではないかと先生は考えています。
ばかっていうと、ばかっていう。もう遊ばないっていうと、遊ばないっていう。それは、誰でも、ということです。
一方、遊ぼうっていうと、遊ぼうっていう。ごめんねっていうと、ごめんねっていう。これも、誰でも、ということです。
みなさん、次のようなときどうしたらいいと思いますか。
〔ケース1〕
中間休み、みんなでサッカーの試合をするやくそくをしています。夏夫くんがこう言っています。「秋男くんがいると負けてしまうから、秋男くんをさそうのはやめようよ。ないしょでやろう!」あなたは、何と言いますか。
〔ケース2〕
あなたは、夏子さんと秋子さんと、3人の仲よしグループです。夏子さんが、あなたに「最近秋子さんって生意気だから、今日は二人だけで遊ぼうよ」と言ってきました。あなたは、どのように言いますか。
次の学習です。
次は、最初に一つの詩を読みます。その詩を通して、考えてみます。少し長い詩なので、4つに区切って読みます。
「命はとても大切だ」
「私は命が疲れたと言うまで せいいっぱい生きよう」
宮越さんは、どんなきもちでこのことばを書いたと思いますか?
命は大事だな、という思い、理科で学習した電池と命をつなげて考えたよ、という思い、命をそまつにしてはいけないよ、という思いなどが想像できるでしょうか。
ただ、もう少し宮越さんがどのような生き方をしたのか、詳しくみてみましょう。
この詩を書いた4ヶ月後に、宮越さんはわずか11才でなくなりました。5年生のときです。それまで5年半もの長い間、ずっと病気と闘っていました。病気は、がんの一種だったそうです。
「命はとても大切だ」
「私は命が疲れたと言うまで せいいっぱい生きよう」
という言葉には、いっしょうけんめいに病気とたたかっても力つきてなくなっていく…、という思いや生きたくても生きられない…という思いも込められているではないかと思います。だからこそ、命はとても大切だ、命が疲れたと言うまで精一杯生きようと、心から思っているのではないでしょうか。
これも校長先生から教えていただいた詩で考えてみましょう。ひとつのことばはそれぞれに、ひとつの心を持っています。だから、ひとつのことばを大切にひとつのことばを美しくしてほしいと思います。
最後に、昔のコマーシャルで、こんな言葉があったので、みなさんに紹介します。
いのちは大切だ。
いのちを大切に。
そんなこと、
何千何万回いわれるより、
“あなたが大切だ”
だれかにそういってもらえるだけで、
生きてゆける
クラスで、よりよいことばとは何か、
よりよいこころとは何か、話し合ってみて下さい。感想がある人は、中川先生まで教えて下さい。
以上で、今日の全校道徳Aを終わります。
(道徳教育推進教師 中川裕幸)