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ジルコンの結晶化年代・温度を推定する新たな分析手法の構築 ~温度時間履歴が導く深成岩の冷却過程や隆起過程の調査・評価技術の高度化~

掲載日:2020.11.05

山  形  大  学
東京大学地震研究所
日本原子力研究開発機構
(株)蒜山地質年代学研究所
学 習 院 大 学

ポイント

  • 花崗岩などの深成岩(※1)中に産出するジルコンに対して、LA-ICP-MS(※2)を用いて微小領域(直径20-30μm)の同一地点からU-Pb年代測定(※3)とチタン濃度の定量を同時に行う手法を開発。
  • ジルコンに含まれるチタン濃度はジルコンが結晶化した際の温度に換算することが可能。得られる温度時間履歴(※4)は、深成岩の冷却過程や隆起過程の調査・評価技術の高度化を導く。

図1:大崩山花崗岩体のジルコン写真、化学組成像(左図)とカソードルミネッセンス像(※5)(右図)
図中の丸印が同時定量分析を実施した分析地点
の画像
図1:大崩山花崗岩体のジルコン写真、化学組成像(左図)とカソードルミネッセンス像(※5)(右図)
図中の丸印が同時定量分析を実施した分析地点

概要

 山形大学学術研究院の湯口貴史准教授(地球科学)と、山形大学大学院理工学研究科の石橋梢さん、伊藤大智さん、東京大学地震研究所の坂田周平助教、日本原子力研究開発機構の横山立憲博士、小北康弘氏、(株)蒜山地質年代学研究所の八木公史博士、学習院大学理学部化学科の大野剛准教授らの研究グループは、LA-ICP-MSを用いたジルコンのU-Pb年代測定とチタン濃度の定量を同時に行う分析手法を開発しました。
 ジルコンは花崗岩など深成岩中に含まれる鉱物です。このジルコンに対しては、チタン濃度による結晶化温度の推定や、U-Pb年代から結晶化した年代を論じた既存研究は数多く報告されています。しかし、これまでの分析手法では、それぞれのデータを取得するために異なる分析装置を利用していたため、ジルコン内部の同一地点においてチタン濃度とU-Pb年代を同時に導出することは困難でした。本研究では、LA-ICP-MSという分析手法を利用してジルコン中の微量のチタンを分析するために、干渉する元素や同位体のイオンを除去する新たな分析条件を検討することで、同一地点(直径20-30μm)で年代値とチタン濃度を同時に取得することを可能にしました。ジルコンから得られる温度時間履歴は、深成岩の冷却過程や隆起過程の高精度の解明を可能にします。つまり年代と温度の同時定量は、岩体の冷却過程や隆起過程の調査・評価技術の高度化をもたらします。 
 今回の調査・評価技術の高度化に係る研究成果は、地殻の発達・進化過程の解明や深部地質領域(地下深部に分布する岩石領域)を活用する事業(天然ガス・石油の地下貯蔵)や研究開発(高レベル放射性廃棄物の地層処分など)において重要な知見となります。本研究成果は、国際学術雑誌の「Lithos」に掲載されました。

詳しくは、こちらの資料をご覧ください。

※用語解説

  1. 深成岩:地下に貫入したマグマが地表まで到達せずに、地殻中にマグマ溜りとしてゆっくりと冷え固まった岩石。日本列島の地下には基盤岩として広い領域に分布。
  2. LA-ICP-MS:レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析手法 (Laser Ablation-Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)。
  3. U-Pb年代測定:ウラン・鉛年代測定法。ウランの原子核が壊変し、鉛の原子核となることを利用することで、試料がどのくらい昔に形成された鉱物であるかを明らかにする手法。
  4. 温度時間履歴:マグマ溜りから花崗岩へと冷却するプロセスで、時間とともに温度がどのように変遷したかを示す。深成岩中の現象を時間と温度の推移とともに議論することを可能にする。
  5. カソードルミネッセンス像:加速した電子を試料に照射した際に生じる発光量の違いを像としたもの。
  6. K-Ar年代測定法:カリウム・アルゴン年代測定法。カリウムの原子核が壊変し、アルゴンの原子核となることを利用する年代測定の手法。子孫核種であるアルゴンが貴ガスであるため、熱的擾乱を受けやすく、U-Pb系と比較して閉鎖温度が低い(黒雲母K-Ar閉鎖温度:350-400℃)。

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