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受けた力の可視化と高強度化を同時に実現する多機能高分子材料を開発

掲載日:2021.01.22

東京工業大学
相模中央化学研究所
山形大学

本件のポイント

  • 受けた力を色と蛍光で可視化し、同時にその箇所で新たな結合を形成して高強度化する多機能高分子材料を開発。
  • 力によって誘起される化学反応を力学物性や電子状態の測定、計算化学などで多角的に評価
  • 力の負荷に対応することで予期しない破壊を防ぐ高分子材料の設計が可能

概要

 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の大塚英幸教授と瀬下滉太大学院生(修士課程2年)らの研究グループは、相模中央化学研究所の巳上幸一郎博士らや山形大学の伊藤浩志教授らと共同で、力を受けると、色彩変化と蛍光発光によってその力を可視化すると同時に、材料自身が高強度化する高分子材料を開発することに成功した。
 現在普及している多くの高分子材料では、過剰な力の負荷は構成する高分子鎖を切断して予期しない破壊をもたらす。こうした力を可視化すると同時に、材料自身が高強度化するような化学反応を誘起できれば、安心・安全な高分子材料設計に向けた従来と異なるアプローチが可能になる。
 本研究で開発した高分子材料では、引張や圧縮などの力を加えることでラジカル(用語1)が生じる。このラジカル由来の桃色着色と黄色蛍光によって力が可視化されると同時に、ラジカル発生をきっかけに高分子鎖どうしが連結される反応が進んで高強度化することが確認された。こうした一連のラジカル反応の多角的評価には、電子スピン共鳴(ESR)測定(用語2)や計算化学を用いた。
 なお、本研究成果は2021年1月8日にドイツ化学会誌 (Wiley-VCH)「Angewandte Chemie International Edition(アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション)」にオンライン掲載された。

 詳しくは、こちら(プレスリリース)の資料をご覧ください。

図1 本研究のコンセプトの画像
図1 本研究のコンセプト

※用語解説

  1. ラジカル:不対電子(電子対にならない電子)を持つ原子や分子。
  2. 電子スピン共鳴(Electron spin resonance, ESR)測定:不対電子を検出するための分光法の一種。有機化合物中のラジカル種の定量評価に利用される。
  3. ビニルモノマー:炭素-炭素二重結合を有し、ラジカルなどを開始点として連鎖的に反応が進行して、高分子を与える低分子化合物。
  4. 重合開始能:モノマーを連結してポリマーに変換する重合反応を開始できる能力。炭素中心ラジカルには、ビニルモノマーの重合開始能をもつものがある。
  5. 架橋反応:分子鎖の間に橋を架けるように結合を形成する反応。架橋反応が起こると一般に高分子は「紐状」から「網目状」になり、溶媒に不溶となる。
  6. ポリウレタン:繰り返し単位中にウレタン結合(-NH-CO-O-)を有し、エラストマーや繊維に使われる汎用的な高分子材料。
  7. エラストマー:ゴムに代表される弾性を有する高分子材料の総称。
  8. DFT計算:化学で用いられる計算手法の一種。密度汎関数理論に基づく。

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