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陽子の中の反物質が持つ大きな非対称性の発見-反クォークの生成過程により物質の成り立ちを探る-

掲載日:2021.02.25

東京工業大学
高エネルギー加速器研究機構
山形大学
理化学研究所

本件のポイント

  • 陽子中の反物質である反クォークの存在量を、反クォークの運動量が大きい領域で実験により測定した結果、反クォークのフレーバー対称性が大きく破れていることを発見した。
  • 運動量が大きい領域で、反ダウンクォークは反アップクォークより50%も多く陽子中に存在することがわかった。
  • 陽子の基本的性質を決める仕組みを解明する手がかりとして期待される結果である。

概要

 東京工業大学 理学院 物理学系の中野健一助教、柴田利明名誉教授(日本大学特任教授)、山形大学 学術研究院の宮地義之教授、理化学研究所 仁科加速器科学研究センターの後藤雄二先任研究員、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所の澤田真也教授らは、陽子の内部において、反クォーク(用語1)の運動量が大きい領域でそのフレーバー対称性(用語2)が大きく破れていることを、陽子ビーム実験によって明らかにした。
 陽子はあらゆる物質を形作る基本粒子の一つであるが、その内部はクォーク・反クォーク・グルーオンという素粒子(=パートン、用語1)の複合体になっている。陽子の質量・半径・スピンなどの基本的な性質は測定によって知られているが、そうした性質がパートンからどのように生じているかは未解明である。本研究では、米国フェルミ国立加速器研究所(FNAL)での日本・アメリカ合衆国・台湾の研究チームによる国際共同実験(SeaQuest実験、用語3)によって陽子の中の反クォークのフレーバー対称性を検証した。その結果、反クォークの運動量(用語4)が大きい領域では、反ダウンクォークが反アップクォークより50%も多く存在し、フレーバー対称性が破れていることを突き止めた。この結果は、陽子の中に、フレーバー対称性を大きく破るこれまでに明らかになっていない何らかの仕組みがあることの証拠である。
 本成果は、英国時間2021年2月24日公開の学術誌「Nature」に掲載された。

詳しくは、こちら(プレスリリース)の資料をご覧ください。

図1:陽子のパートン構造。
2個のアップクォーク (u) と1個のダウンクォーク (d) からグルーオン (g) の放射やクォーク・反クォークの対生成が起こり、クォーク・反クォーク・グルーオンの複合体になっている。の画像
図1:陽子のパートン構造。
2個のアップクォーク (u) と1個のダウンクォーク (d) からグルーオン (g) の放射やクォーク・反クォークの対生成が起こり、クォーク・反クォーク・グルーオンの複合体になっている。

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