ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2021年05月 > 細胞内抗体プローブを用いて 遺伝子の転写が活性化している細胞を生体内で特定することに成功
掲載日:2021.05.18
東京大学
山形大学
東京理科大学
東京工業大学
科学技術振興機構
本件のポイント
概要
真核生物のタンパク質をコードする遺伝子はRNAポリメラーゼII(RNAPII、注2)によって転写されてRNAを作り出します。RNAPIIはリン酸化されることで活性化しますが、その活性化の研究は、器官・組織・細胞を固定して解析する生化学的手法が主流でした。そのため、RNAPIIが活性化している細胞の生体内での空間的位置や転写の開始や停止のタイミングなどの情報は不明なままでした。
山形大学学術研究院の澁田未央助教、東京理科大学理工学部応用生物科学科の坂本卓也講師、東京工業大学科学技術創成研究院の木村宏教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の松永幸大教授らは、RNAPIIの活性化状態を生きた植物で解析する手法を開発しました。この解析手法の開発により、生体内で遺伝子発現が活性化している細胞を特定できるようになりました。また、RNAPIIの活性化メカニズムは動植物で共通していることを示しました。この研究成果は、器官や組織を傷つけずに活性化細胞を操作・制御する手法の開発に道を開くとともに、有用な植物由来物質を動物細胞内で生産させるために、植物ゲノムを動物細胞に移植した際に転写を活性化させる技術開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2021年5月14日付けで国際科学雑誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST)CREST「異種ゲノム制御による光合成作動細胞の創製」(JPMJCR20S6)、文部科学省科学研究費・新学術領域「不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構」(20H05911)、「細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生」(20H05425)、基盤研究B(19H03259)、基盤研究C(19K06748)、若手研究(20K15836)、三菱財団自然研究科学研究助成、ノバルティス科学振興財団研究奨励金などのもとで実施されました。
詳細はこちら(プレスリリース資料)をご覧ください。
論文情報
雑誌名: Communications Biology(オンライン版:5月14日)
論文タイトル:A live imaging system to analyze spatiotemporal dynamics of RNA polymerase II modification in Arabidopsis thaliana
著者:Mio K. Shibuta, Takuya Sakamoto, Tamako Yamaoka, Mayu Yoshikawa, Shusuke Kasamatsu, Noriyoshi Yagi, Satoru Fujimoto, Takamasa Suzuki, Satoshi Uchino, Yuko Sato, Hiroshi Kimura and Sachihiro Matsunaga*
DOI番号:10.1038/s42003-021-02106-0
URL:https://www.nature.com/articles/s42003-021-02106-0
※用語解説