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今この現在から紡ぎ出される 過去から未来へと続くライフストーリー ~「歴史の終わりの幻想」の日米比較~

掲載日:2021.09.28

本件のポイント

  • 「歴史の終わりの幻想(End of History Illusion: EoHI)」(自分の人生において、過去に起こった変化が、未来に起こると予想される変化よりも大きいと報告する傾向)の大きさは文化的背景によって異なる。
  • 人生の満足度とパーソナリティ特性において、アメリカ人も日本人もEoHIを示すが、アメリカ人は日本人よりもEoHIが大きく、過去の自分を否定的に見なす傾向が強い。
  • 自尊心と自己概念の明確性はEoHIの大きさを規定する重要な要因であり、文化的背景によりその影響の程度は異なる。

概要

 山形大学学術研究院の大村一史教授(認知神経科学)は、米国ジョージア大学との国際共同研究により、「歴史の終わりの幻想(End of History Illusion: EoHI)」(自分の人生において、過去に起こった変化が、未来に起こると予想される変化よりも大きいと報告する傾向)の文化差を明らかにしました。公開されているデータセットの分析(研究1)と独自のオンライン調査(研究2)により、人生の満足度とパーソナリティ特性におけるEoHIの大きさをアメリカと日本の比較を通じて検討しました。
 研究1では、人生の満足度について、アメリカ人は日本人に比べて、未来の変化よりも過去の変化をより大きく報告する傾向が確認されました。また、アメリカ人は過去の自分を現在の自分よりも否定的に見なすのに対し、日本人はより肯定的に見なす傾向がありました。これは、アメリカ人は日本人よりも現在の自分を肯定的に見ようとする動機が高いことによるものであると考えられます。
 これらの知見を踏まえた上で、研究2では、自尊心(self-esteem)と自己概念の明確性(self-concept clarity)の関連から、パーソナリティ特性におけるEoHIを検討しました。研究1と同様に、アメリカ人は日本人に比べ、EoHIが大きく、過去の自分について否定的に見なす傾向がありました。また、自尊心と自己概念の明確性がEoHIの大きさを規定する重要な要因であり、文化的背景によりその影響の程度が異なることが明らかになりました。ライフストーリー※1は、人々が時間の流れの中で自分という人間が何者であるかを考える上で大切です。EoHIは、自分が過去に大きく変化し、現在は比較的安定した良い状態にあるというイメージを描き、心の平穏を保つために役立つのでしょう。このEoHIは文化の違いを超えて存在するようですが、アメリカ人は日本人に比べてEoHIを比較的鮮明に思い描くようです。
 本研究成果は、心理学分野の国際学術誌Personality and Social Psychology Bulletin誌に掲載されました。(2021年8月12日オンライン版掲載)

 プレスリリース資料はこちらをご覧ください。

論文情報

題名:Cultural Differences in Susceptibility to the End of History Illusion
著者:Brian W. Haas and Kazufumi Omura
掲載誌:Personality and Social Psychology Bulletin, August 12, 2021, 1461672211036873.
    2021年8月12日オンライン掲載
DOI:https://doi.org/10.1177/01461672211036873

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