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『薬用植物標本集』のデジタル基盤の構築 ~高畠町立図書館とティスコ運輸、山形大学の連携協力~

掲載日:2022.01.13

本件のポイント

  • 高畠町立図書館所蔵『薬用植物標本集』2冊のデジタル化。
  • 本格的な機材を使用した植物標本のデジタル化は県内初。
  • 植物標本は劣化や扱い時の破損の可能性が高く、一般公開が難しい現状であったが、デジタル撮影し、公開基盤を整備することによって、活用可能な資料になる。

概要

 今回、高畠町立図書館所蔵(館長:大浦真由美)『薬用植物標本』の一般公開に関する相談を昨年9月に受け、研究がスタートした。植物標本は、経年劣化や保存環境、使用頻度によって長期保存可能かどうかが左右される資料である。当資料は、冊子形態になっているため、より閲覧時に標本に負荷がかかるものであった。そのため、図書館に所蔵されているが気軽に閲覧できる環境になかった。そこで、山形大学の阿部宇洋講師(学士課程基盤教育機構担当)と株式会社ティスコ運輸(本社:山形市、社長:菅原 茂秋)と協力し、『薬用植物標本』2冊のデジタル化を実施した。
 ティスコ運輸はデジタルアーカイブ部門があり、一般文書のデジタル化機材の他に、学術的な資料のデジタル化が可能なスキャナを所有し非接触非破壊の撮影が可能な環境が整っている。
 12月にデジタル化を実施し、総枚数314点の撮影を実施した。その際、資料のクリーニング、搬出入を高畠町立図書館が担当、撮影をティスコ運輸が担当、監修、撮影指導を山形大学が担当した。
 12月末に全行程が完了し、完成したデータは、12月24日に高畠町立図書館へ寄贈された。今後、デジタル化された植物標本は、高畠町立図書館で製本し一般公開される予定である。植物標本の作成時代ははっきりわからなかったものの、地域資料が安易に閲覧できる環境が期待される。

詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。

背景

 地域資料は、保存はされているが公開されていない資料などが多くあり、その活用が地域の課題となっている場合がある。また保存の過程で紛失する場合もある。今回の資料は植物標本2冊のデジタル化だが、巻2、巻3のみであり、巻1は所蔵されていなかった。また、この植物標本は通常1シートで保存されるべき所を冊子にしているという形態であり、安易にデジタル化出来るものではなかった。そのため、特殊な機材や技術を必要とした。

研究手法・研究成果

 山形県内の植物標本のデジタル化は、山形県立博物館ですでに実施されており、デジタルアーカイブズとして公開されている。また、植物標本は、全国各地のさまざまな学術機関でデータベース化されており、比較しやすい環境が整っている。今回の高畠町の薬用植物標本は、地域の薬用植物という枠で収集されているものであり、比較研究するにあたって有用である。
(科研費番号:基盤研究費(A)19H00550  アーカイブズによる「地域力」再生と持続的社会の基盤創成研究)

今後の展望

 山形県内には植物標本のほか、デジタル化すべき様々な資料が存在するが、技術や機材の問題で県外への委託が多い状況であった。その際に課題となるのが資料の搬送である。資料への負荷や負荷を減らすための費用がコストとして上乗せされるが、より近場で、県内で完結するようであれば資料への負荷も少なく搬送コスト、リスクを抑えたデジタル化が可能になる。今回の研究は県内での専門機材を使用したデジタル化の第一歩であり、地域的にはコスト、リスクを軽減しつつ、企業的には大学と連携することにより資料化の技術向上をはかることが可能になる。これらが上手に循環すれば持続したデジタル化が可能になり様々な形態的な理由での非公開資料が手に取るように見ることが出来るようになるでろう。

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