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山形大学と㈱Yume Cloud Japanの連携プロジェクト、市場導入へ ~ ストレスを可視化する開発製品「マインドスケール」、大手企業向けに本格サービス ~

掲載日:2022.07.07

本件のポイント

  • マインドスケールが本格サービス・普及段階へ シリコンバレー発ベンチャーの日本法人として本学YBSCに誘致した㈱Yume Cloud Japan。国際事業化研究センターの支援により開発してきた、ストレスを可視化する「マインドスケール」の開発が終了。本格サービスフェーズとなった。
  • のべ約2億円の資金調達を実現 社会課題である「心の問題」の解決につなげるメンタルヘルス分野での応用が期待されており、「マインドスケール」の事業費として、約2億円(2019年6月から)の資金調達を実現した。更にレベルアップの研究が加速、導入企業や団体の拡大が期待されている。
  • 本学が当初から参画・支援 ストレスを可視化する「マインドスケール」は、本学大学院理工学研究科が当初より参画、ストレス状態を数値化する独自のアルゴリズムを開発。

ストレスを可視化する製品「マインドスケール」の画像
ストレスを可視化する製品「マインドスケール」

概要

 山形大学がシリコンバレーから誘致したITベンチャー企業の製品が本格サービス・普及段階となった。
 本学は、2019年3月にシリコンバレー発のベンチャー企業「Yume Cloud Inc.社」(代表:吉田大輔)の、本学有機材料システム事業創出センター(通称:YBSC)への誘致を実現、IoT関連ビジネスで地域活性化を目指すための連携活動を開始した。日本法人、株式会社Yume Cloud Japan(代表取締役:吉田大輔)として、2019年度は、山形県ものづくりベンチャー創出支援事業(EDGE-NEXT実践編)に採択、本学国際事業化研究センターが事業化支援を実施。その間、経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」で3年間ストレス状態を数値化する独自のアルゴリズムの開発に着手。その後事業化に向けた指導を重ね2022年度からはアントレプレナーシップ開発センターとの間で学術指導契約を継続している。
 本技術は、山形大学(横山道央准教授、原田知親助教)、東北大学(川島隆太教授ら)を中心に東北芸術大学、福井医療大学と連携。問診形式により取得する自覚データに加え、独自に開発したIoT機器を通じた精度の高い脈波データと携帯電話の独自アプリを通じた音声データ、さらには専門家による定期的なカウンセリングの情報を組み合わせることに成功。これにより、ストレス状態を独自アルゴリズムにより数値化(マインドスケール値)し、今の心の状態を可視化することが可能となった。大手企業での全社員への導入が進んでおり、今年は1万ユーザーの利用をターゲットにしている。

 詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。

研究開発の中心的役割を果たした横山道央学術研究院(大学院理工学研究科担当)准教授の画像
研究開発の中心的役割を果たした横山道央学術研究院(大学院理工学研究科担当)准教授

研究開発の中心的役割を果たした原田知親学術研究院(大学院理工学研究科担当)助教の画像
研究開発の中心的役割を果たした原田知親学術研究院(大学院理工学研究科担当)助教

・横山道央准教授:半導体集積回路工学やセンサーネットワークシステム、生体信号処理、AIビッグデータ解析が専門
・原田知親助教:MEMS(微小電子機械システム)技術と集積回路技術を融合したセンサーの研究と極低電圧駆動集積回路の開発、人・物の行動の可視化にむけたIoT/ICTシステムが専門

背景

 本学の横山道央准教授と原田知親助教は、共同でIoT センサーネットワーク基盤システムについて研究開発、具体的には非拘束、非接触、非侵襲型の心拍・呼吸・体動センサーを開発して、その人の睡眠の良し悪しを数値化するようなシステムの研究開発などを行っている。
 一方、シリコンバレーが拠点であるIT 系スタートアップYume Cloud Inc.社(当時)は、2019 年に本学とパートナーシップを組み、本学内に日本法人となる㈱Yume Cloud Japan を設立。
 その後横山准教授と原田助教の研究が軸となり、各大学との連携により、IoT、クラウド、AI を活用した感情の分析ツール「感情表現エンジン」を共同開発した。この「感情表現エンジン」は、音声、脈波、行動などの複合データによってストレス状態の分析およびストレスチェック、改善プログラムの作成などを行うシステムであり、この技術を商用化して開発されたのが「マインドスケール」である。

研究手法・研究成果

 「マインドスケール」は、専用の脈波計とスマホを使用するが、実際の測定・問診は、脈波計により「交感神経」と「副交感神経」を分析し、朗読により「脳の疲労度」を分析する。また問診による「自覚」を分析することで、現在の心の状態と自覚との乖離の可視化を可能とする。また、カウンセラーの問診を希望するユーザーには、カウンセラーによるコーチングによる改善アプローチが加わるが、その際には、スマホを使用した表情分析も加わり、より精度の高い心理状態の分析が可能となっている。現在までに様々な実証実験を試みながらサービスを構築してきており、上山温泉などで行った実証実験において、地方におけるワーケーション等を通じて、メンタル状態の改善について論点を検証するなどの検証を行なってきた。今後も産学連携や、臨床心理士等との連携によって、科学的な根拠をより肉付けしながらサービスを恒常的に改良していく。

ストレス度合いのチェック方法

心拍変動の時系列データから、呼吸変動に対応する高周波変動成分(HF 成分)と血圧変動であるメイヤー波(Mayer wave)に対応する低周波成分(LF 成分)を抽出し、両者の大きさを比較。呼吸変動を反映するHF 成分は、副交感神経が亢進(活性化)している場合にのみ心拍変動に現れる一方、LF 成分は交感神経が亢進しているときも、副交感神経が亢進しているときも心拍変動に現れる。一般的には、このLF 成分の領域(0.04〜0.15Hz)およびHF 成分の領域(0.15〜0.40Hz)の強度を合計した値を活用。

今後の展望

 マインドスケール事業はテレワーク時代の労務管理、在宅勤務のマネジメントに適しているため事業の拡大が見込まれており、主に大企業向け社員のストレス管理アプリとして販売することで、収益を伸ばす予定である。

① ビジネスマン個人のウェルビーイング(well-being)(注*1)の視点での社会への影響
  国から義務付けられているストレスチェックにも対応させ利便性を高める。個人の「ストレスへの自覚」と「実際の生体反応」とのギャップを明らかにするサービスを提供するとともに、「向上プログラム」も行っている。こうした企業活動により、組織に属したビジネスマン個人のウェルビーイングの確立を目指す。今後はストレス状態がわかりやすいユーザーインターフェースやコンテンツの提供に努めていく。

② 会社等組織(経営・人事サイド)の視点での社会への影響
    会社組織に対しては、この「マインドスケール」サービスにおいて、個人のストレス統計値が会社組織の「エンゲージメント(engagement) (注*2)」にどのような影響を与えているかを可視化することが可能となる。これについては、レポート機能を通じて、組織におけるハラスメントの有無、職場の人間関係、特定個人への仕事の偏りなどの課題を抽出し、企業経営・人事サイドが的確な人材戦略を立案できるように、組織改善の支援を行っていく。こうしたことで、深刻化の回避(従業員のストレス状態悪化に起因する様々なコストの軽減)や組織の活性化(エンゲージメントの強化)の契機となることを目指していく。

(注*1) ウェルビーイング(well-being):身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、日本語では「幸福」と翻訳されます。ハピネス(happiness)が主に瞬間的な幸せを表すのに対して、ウェルビーイング(well-being)は持続的な状態を意味している。

(注*2) エンゲージメント(engagement):従業員の会社に対する愛着心や思い入れといった意味。「職場(企業・団体)と従業員の関係性」や「自社と顧客との関係性」を表す際に用いられている。

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