ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2022年08月 > 学長定例記者会見を開催しました(8/4) > 戦時下の蔵王・山形 〜観光パンフレット・慰問用の山形方言の絵葉書が見つかりました〜
掲載日:2022.08.04
戦時中、蔵王に観光客が来ていたといわれていましたが実態は不明でした。樹氷の変遷を調べるために収集している資料から、昭和19年2月3日に蔵王にスキー登山する写真、観光客を誘致するためのパンフレットが見つかりました。パンフレットの内容は戦前と同じですが、表紙・裏表紙に軍事標語が書かれています。また、吉野屋絵葉書店によって作られた、観光客用の絵葉書、慰問用の山形・上山・仙台方言の会話文絵葉書が見つかりました。
詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。
伊東五郎著の「蔵王五十年の歩みとスキーの発達(1962年)」によりますと、「戦争益々苛烈深刻の度を加え、重なる召集、出征、戦死、加うるに食糧事情愈困窮に達し、長途の旅行に依る汽車の混雑、スキーの持込等容易ならざる状況に立ち至り、スキー客誘致等は到底望めなかった。・・・十九年七月には東京疎開学童の受入等の多忙さ、各家庭に於ける働き手の三十歳前後の青年は殆んど動員、全く闇黒状態が続いた。然し都会の繁雑さを一時たりとものがれようとしたのか中央からのスキー客も年末年始休暇には少ないながらあった。」とされています。図1は、昭和19年1月30日から2月3日かけて平山栄伸氏と長澤壽三(利彦)氏よって撮影された蔵王の写真です。樹氷原を列を作って進んでいく人たちが写っています。また、観光客を誘致する目的で観光パンフレットが見つかりました(図2−図5)。記載内容は戦前とほぼ同じですが、表紙・裏表紙に体位向上や軍事標語が書かれている点が大きな違いです。
戦時中に吉野屋絵葉書店(山形市)が作成した蔵王や山形を題材とした絵葉書が10組以上見つかっています。戦時中の絵葉書は紙質が悪く、封筒は薄手です。また、葉書には特高課検閲済・軍事標語などが書かれていたり、切手添付欄が「一億一心」となっています。題材は蔵王の樹氷・護国神社・千歳山など山形の有名観光地や、サクランボなどの名産品などです。写真は戦前に撮影されたものの再利用ですが、写真の説明の他に山形方言による会話や小唄・童謡が書かれたものが多くあることが戦前との相違です。絵葉書の中から、慰問と書かれているものが2組見つかりました(図6−図7)。郵便や慰問袋で戦地に送ったと考えられます。方言による会話文や観光地・名産品によって、山形を思い出すことができたと思われます。なお、吉野屋絵葉書店が作成した戦時中の絵葉書から、上山ことば(図8)、仙台ことば(図9)の会話文絵葉書も見つかりました。
▲図1 昭和19年2月3日の蔵王(撮影:平山栄伸氏・長澤壽三(利彦)氏)
▲図1 昭和19年2月3日の蔵王(撮影:平山栄伸氏・長澤壽三(利彦)氏)
▲図2 「体位向上 銃後の備へ:国民総動員」(東京鉄道局)
▲図2 「体位向上 銃後の備へ:国民総動員」(東京鉄道局)
▲図3 「山形の温泉 並スキー場:国民精神総動員」(山形県観光協会)
▲図3 「山形の温泉 並スキー場:国民精神総動員」(山形県観光協会)
▲図4 「仙山線を行く:体位向上銃後の備へ」(仙台鉄道局)
▲図5 絵葉書「蔵王の銀界縦走 戦力増強は体位の向上から 青少年の錬成道場」
▲図6 慰問のお便りは 山縣方言集で(吉野屋絵葉書店 山形市)
▲図7 山形県の風俗をたづねろ(郷土人形)・・四銭貼つて戦線の御慰問に(吉野屋絵葉書店 山形市)
▲図8 上の山ことば(吉野屋絵葉書店 山形市)
▲図9 仙台ことば(吉野屋絵葉書店 山形市)