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蔵王山の噴火履歴の解明を目的としたボーリング掘削調査

掲載日:2022.08.04

本件のポイント

  • 蔵王山中腹でボーリング掘削を行い、過去約3.5万年間の噴火堆積物の調査を行う。
  • 本事業は文科省の次世代火山研究プロジェクトの一環として行われる。
  • 蔵王山の過去約3.5万年間の噴火履歴が完成する見込みである。蔵王山の今後の噴火災害軽減に大きく寄与することになる。

概要

 蔵王山は、東北地方太平洋沖地震の後に噴火の前兆現象が認められ、それは現在も断続しており、今後の活動が注視されている。このような状況の下、蔵王山の過去の噴火履歴を詳しく解明しておくことは、今後の活動を推測し噴火災害の軽減に資する上で極めて重要である。
 蔵王山の最新期活動は約3.5万年前に始まる。その後多数回の噴火を起こしてきた。このように長い期間にわたって活動を継続している火山において噴火履歴を解明するためには、地層に残る過去の噴火堆積物を調査する必要がある。本研究では、ボーリング掘削を行うことによって地下に存在する地層の情報を読み解き、蔵王山の噴火履歴解明することを目的とするものである。

 詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。

背景

 2014年に御嶽山が噴火し、多くの人々が犠牲になった。これを契機に、文部科学省は火山噴火に対する減災防災対策に貢献する「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」を平成28 年に発足させている。
 そのプロジェクトの課題研究のひとつである「噴火履歴調査による火山噴火の中長期予測と噴火推移調査に基づく噴火事象系統樹の作成」では、全国の主要な活火山の噴火履歴と個々の噴火推移の再検討を行っている。蔵王山は、この課題研究において研究を実施する火山のひとつに選定されており、山形大学のマグマ学・火山学クラスターや蔵王樹氷火山総合研究所が中心になって研究が進められている。蔵王山には山頂に火口湖である御釜が存在し、その最新の噴火は1895年に発生している。東北地方太平洋沖地震の後に噴火の前兆現象が認められ、今後の噴火が危ぶまれる火山の一つである。

研究手法・研究成果

 過去の噴火によって形成された地層の観察、採取した試料の各種分析を行うことにより、どのような噴火が・どのくらいの頻度で起こってきたのか、また各噴火の推移はどのようであったかを推定することができる。山形大学は、蔵王山の過去約3.5万年間の噴火堆積物について、地表に露出している地層の調査を基に多くを明らかにしてきた。しかし、山体の中腹では地表に露出している箇所が極めて少なく、調査に困難を来していた。そこで、目的の地層が地下に存在していると予想される地点でボーリング掘削を基に調査・研究を行う。中腹での調査・研究が進めば、噴火堆積物種類や噴火頻度、また代表的な噴火の推移が精度良く解明されることになる。

今後の展望

 本研究の調査・研究によって解明される、蔵王山の過去約3.5万年間の噴火の種類や発生頻度の推移、また代表的な噴火についての噴火推移が解明されれば、その情報を基にした今後の噴火による災害予測及びその軽減方法の検討が促進されることが期待される。例えば、噴火の推移やそれに伴う影響範囲が精度良く推定できれば、噴火の進行に伴う避難計画もより具体的に進めることができる。このように本研究の成果は噴火災害の軽減に大きく寄与することが期待される。

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