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アルミニウム比270分の1 超軽量電磁波遮蔽材料の共同研究を開始

掲載日:2022.08.25

JAXA宇宙探査イノベーションハブ「課題解決型」採択
アルミニウム比270分の11超軽量電磁波遮蔽材料の共同研究を開始
宇宙機からeVTOL[1]、5G・6G基地局の軽量化に貢献

2022年8月25日
 
パナソニック インダストリー株式会社
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学
国立大学法人山形大学
国立大学法人秋田大学


国立大学法人山形大学(以下、山形大学) 学術研究院の日髙 貴志夫教授は、パナソニック インダストリー株式会社(以下、パナソニック インダストリー)、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学(以下、名古屋大学)、国立大学法人秋田大学(以下、秋田大学)と共に、パナソニック インダストリーを代表機関とし、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と共同で、宇宙探査における「課題解決型」研究テーマである「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の共同研究を開始しました。

宇宙分野において人工衛星などの質量低減を図るべく、機体の数十パーセントの質量を占める機内通信・給電用ケーブルの無線化の研究が進められています。この実現に対しては電磁両立性(EMC)[2]確保のため、高度な電磁波遮蔽技術が求められています。また、地上空間におけるドローン・eVTOLといった環境負荷が低い電動航空機の普及に向けても同様に、軽量化と電磁波対策の両立が求められています。さらに、5G・6Gといった無線通信の高速化・高周波化に伴い、ミリ波帯からテラヘルツ波帯への対応と軽量化を両立する電磁波遮蔽材料の必要性が高まると予測されます。

パナソニック インダストリー、名古屋大学、山形大学、秋田大学は、2020年に開始したJAXA宇宙探査イノベーションハブ「アイデア型」※2研究テーマで培ったカーボンナノチューブの研究内容をさらに発展させるべく、2021年に行われたステップアップ審査により選考され、2022年6月より「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の共同研究を開始することになりました。

「超軽量電磁波遮蔽材料」技術は、今後、航空宇宙分野や次世代高速通信分野などに使用される様々な機器への採用が期待されます。パナソニック インダストリーが長年培ってきた熱硬化性樹脂の配合設計技術と、地上の様々なユースケースを想定した環境試験技術・ノウハウを組合せることで、2024年の実用化を目指します。

※1 アルミニウムの密度2.7グラム/㎤のところ、超軽量電磁波遮蔽材料のかさ密度[3]は0.01グラム/㎤レベル
※2 2020年1月~21年3月、JAXA、名古屋大学、山形大学、日本ゼオン、パナソニックがJAXA宇宙探査イノベーションハブ「アイデア型」共同研究を実施。同研究による目標を達成したため、「課題解決型」へステップアップし2022年6月より共同研究を開始します。

 

超軽量電磁波遮蔽材料の詳細説明

1.軽さ(かさ密度0.01g/㎤レベル)と、アルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能の両立により、人工衛星・探査機などの宇宙機や、ドローン・eVTOLなどの電動航空機の軽量化、航続距離伸長に貢献

 名古屋大学の研究によるカーボンナノチューブを用いた超軽量材料と、パナソニック インダストリーが保有する熱硬化性樹脂の配合設計の組合せにより、一般的な電磁波遮蔽材料の中でも軽量なアルミニウムの270分の1の軽さ(かさ密度0.01g/㎤レベル)を実現しながら同等の電磁波遮蔽性能を有しています。宇宙機や電動航空機の機器軽量化を促し、エネルギー効率を向上させることで、航続距離の伸長に貢献します。  

表1 アルミ二ウムと新材料のかさ密度比較の画像
表1 アルミ二ウムと新材料のかさ密度比較

グラフ1 新材料の電磁波遮蔽効果
 5GHzから110GHzと広範な周波数帯域において、電磁波遮蔽性能が30dB*を越える高い遮蔽性を有しています。また、高周波帯域でより高い遮蔽性能を発揮します。 
*30dB=入射した電磁波が電力比で1/1,000に遮蔽されるレベル(10×log10(1,000)=30dB)
本データは実測値であり保証値ではありません。
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グラフ1 新材料の電磁波遮蔽効果
 5GHzから110GHzと広範な周波数帯域において、電磁波遮蔽性能が30dB*を越える高い遮蔽性を有しています。また、高周波帯域でより高い遮蔽性能を発揮します。 
*30dB=入射した電磁波が電力比で1/1,000に遮蔽されるレベル(10×log10(1,000)=30dB)
本データは実測値であり保証値ではありません。

2.周波数に合わせて遮蔽性能を調整でき、EMC設計も容易で、通信品質の向上に貢献

新材料は、材料の組成を変更することで、機器の仕様に合わせて、遮蔽する電磁波の周波数帯域の設定が可能です。多様化する電磁環境において効率の良い電磁波遮蔽を実現し、ノイズによる機器の誤動作を抑制するとともに、機器のEMC設計も容易にします。
さらに新材料は、既存材料であるアルミニウムと異なり、特に電磁波吸収性能を有しており、CPUなどのデバイス自ら発するノイズの多重反射を防ぎ、ノイズ重畳によるデバイスの特性劣化を防止します。これらの性能を併せ持ちながら、広い周波数帯域にも対応しており、次世代無線通信技術の普及を促進します。

表2 アルミニウムと新材料の対応周波数帯域差の画像
表2 アルミニウムと新材料の対応周波数帯域差

3.加工性に優れ、立体構造が作成可能で、デザイン性向上に貢献

パナソニック インダストリーが保有する熱硬化樹脂の配合設計技術とフリーズドライ製法[4]により様々な立体構造を作成することができ、採用機器の形状に応じた加工が可能です。

 

用途

宇宙機(人工衛星・探査機 等)、電動航空機(ドローン・eVTOL等)、5G・6G用途関連機器(モバイル基地局 等)、産業機器(ロボット・AGV 等)、車載機器(ミリ波レーダ・各種センサ等)、VR・AR機器 等

 

JAXA宇宙探査イノベーションハブについて

JAXA宇宙探査イノベーションハブは、将来の宇宙探査への応用と、地上における事業化による産業振興や新産業の創出の両立を目的に、2015年に設置された組織です。企業・大学・研究機関等の研究開発者から提供された宇宙探査に関する技術情報を基に、JAXAからの課題を設定し研究を募る「研究提案募集」により、オープンイノベーションの研究開発を進めています。

 

JAXA宇宙探査イノベーションハブにおける共同研究内容

・研究テーマ:超軽量電磁波遮蔽・吸収材料の開発
・期間:2022年6月~2024年6月(24ヵ月)
・内容:超軽量電磁波遮蔽・吸収材料の実用化に向けた検討を実施

 

<研究項目と共同研究メンバーの役割>

※◎主たる研究実施機関、○従たる研究実施機関の画像
※◎主たる研究実施機関、○従たる研究実施機関

用語説明

[1]eVTOL(イーブイトール)
Electric Vertical Take-Off and Landingの略。垂直に離着陸し、ヘリコプターやドローン、小型飛行機の特徴を併せ持つ電動の機体で、「空飛ぶクルマ」の一つ。

[2]電磁両立性(EMC)
EMCはelectromagnetic compatibilityの略。電気・電子機器が発する電磁波(電磁ノイズ)が周辺の機器に影響を与えず、自らも周辺からの電磁波(ノイズ)の影響を受けずに動作する耐性のこと。

[3]かさ密度
試料の構成要素間の空隙も含めた体積で、試料の重量を割った値。

[4]フリーズドライ製法
水分を含んだ試料を真空凍結乾燥機に入れ、マイナス30 ℃程度で急速に凍結後、さらに減圧し真空状態で水分を昇華させ乾燥させる製法。凍結乾燥。 

 

展示会出展情報

2022年 9月18日~22日 IAC 2022@フランス
2022年11月 1日~ 4日 第66回 宇宙科学技術連合講演会@熊本市

詳細情報

https://industrial.panasonic.com/jp/products/pt/emc_shield

詳細はこちら(プレスリリース資料)をご覧ください。

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