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ペロブスカイト量子ドット光変換部材実用化に弾み ~JST A-STEP 産学共同(本格型)に採択~

掲載日:2022.12.08

本件のポイント

  • マルチプルディスプレイ向けの「バリアフィルムフリー新規光変換部材」の開発に弾み!
  • 日本ゼオン株式会社と伊勢化学工業株式会社、山形大学の3者で実施する“ペロブスカイト量子ドットフィルム”の実用化に向けた大型研究は初。
  • 開発するフィルムの知見は、ディスプレイだけでなく機能性野菜の栽培等の農業分野での応用も期待できる。

概要

 産業のオンライン化による映像装置の多様化に伴い、屋内外を問わず高輝度・広色域なディスプレイが求められており、量子ドット(QD)成形体を導入したディスプレイが注目されている。しかし、現行のQD成形体は、外気の影響による性能劣化を抑制するためにバリアフィルムを使用しているが、その成形体がフィルム構造に限定されている。
 今回採択された研究では、エネルギーロスが少なく、色純度が高いペロブスカイトQDと高耐久性を有するポリマーを用いてバリアフィルムフリーの光変換フィルムを作製する。これにより、使用用途に限定がない新規光変換部材を開発する。今回の研究の実現により、開発するフィルムがデジタル社会形成の必需品として下支えになることは間違い無い。

 詳しくはこちらをご覧ください。

背景

 産業のオンライン化が加速する昨今、遠隔医療やVR、ウェアラブルデバイス等の映像装置は、その用途の増加に伴い、様々な設置場所の要件に対応する必要があり、使用場所は屋内に留まらない。屋外で使用頻度の多い産業用映像表示装置は、高輝度、広色域が必要不可欠であり、家電量販店で販売しているテレビを流用することができないため、高価格になってしまう。これら理由から、映像装置は、屋内・屋外問わず利用可能なマルチプルディスプレイが求められている。このニーズを満たす技術として、量子ドット(QD)の光制御技術を活用した量子ドット(QD)ディスプレイが注目されている。
 現行のQDは、樹脂等の透明成形体に分散して用いられるが、大気中の水分や酸素の影響により劣化してしまう。そのため、これら外気の影響を抑制するためには、バリアフィルムによる積層構造が必要不可欠であり、各種デバイス構造に対し、フレキシブルに対応ができないといった課題を有する。
 これら課題から、様々な映像装置に導入するためには、バリアフィルムフリーの光変換部材の実用化が急務となっている。

研究手法・研究成果

 日本ゼオンの有する「樹脂の高性能技術」に、山形大学 増原研究室の有する「ペロブスカイト量子ドット(PeQDs)の高性能化技術」、伊勢化学工業株式会社の「PeQDsの大量合成技術」を組み合わせることで、(図1)昨今、実用化が進み出したQDディスプレイ向けの光変換フィルムを開発する。

図1 本提案研究における産学協同の体制図の画像
図1 本提案研究における産学協同の体制図

今後の展望

 既にコンタクトのあるディスプレイメーカーと共に、我々が開発する光変換フィルムを導入したマルチプルディスプレイの垂直立ち上げを実施する。これにより、屋外・屋内双方におけるデジタル活用環境の推進に繋がり、Society 5.0の実現の一助とさせる。

用語解説

1.研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(本格型)制度概要:
  https://www.jst.go.jp/a-step/outline/honkaku.html

2.ペロブスカイト量子ドット(PeQDs):1粒子の大きさが直径1 nm-数10 nmであり、且つペロブスカイト構造(ABX3型:A, B = カチオン種、X = ハロゲン種)を有する半導体ナノ結晶のことを指す。溶液プロセスを介して簡便に合成でき、高い発光量子収率(PLQY)、高い色純度、構成元素のハロゲン置換による発光波長の可変性等の優れた光学特性を示す。

3.量子ドットディスプレイ:量子的光学特性を持つナノスケール材料を導入したディスプレイのことを指す。バックライトである青色発光ダイオードの光を量子ドットフィルムにより色変換するタイプが、現在主流である。

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